【高齢者の住宅事情】高齢者の一人暮らしの割合が最多の豊島区から最新動向を学ぶ!

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公開日:2023年12月20日
更新日:2024年2月2日
【高齢者の住宅事情】高齢者の一人暮らしの割合が最多の豊島区から最新動向を学ぶ!1

社会問題となっている「高齢者の住宅確保」。孤独死などの懸念からできれば避けたいものの、そういってもいられないと感じている賃貸オーナーも多いのではないでしょうか。65歳以上人口に占める単身世帯の割合が全国で最も高い豊島区が開催した居住支援セミナーから、高齢者の住まいに関する最新の取り組み動向をお伝えします。

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高齢者を取り巻く住まい問題の解決に向けて

65歳以上の約35.6%※が一人暮らしである豊島区。この割合は全国平均の19.0%と比べて16.6%も多く、全国の自治体で一位でもあります。

この現状に立ち向かうため、豊島区の不動産関係者、福祉関連団体、民生委員などが集まった今回のセミナー。第一部では、区内の賃貸管理会社に勤務し、高齢者の住まい問題に取り組んできた伊部 尚子さんから「高齢者に安心して住宅を貸し続けるために知っておきたい最新情報」として講演がありました。賃貸オーナーが今知っておくべき情報が満載の講演の内容を一部ご紹介していきます。

※豊島区「未来戦略推進プラン2022 第2章6高齢者にやさしいまちづくり

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伊部 尚子さん 豊島区本社の賃貸管理会社に23年勤務し、約800世帯の管理業務を担当した経験を持つ。(公財)日本賃貸住宅管理協会 あんしん居住研究会など、高齢者の居住支援関連の研究会委員を歴任。

高齢者を受け入れるオーナー・対応する不動産会社が抱える不安を解消するために

豊島区では、単身世帯の約4割が、また、要介護認定(1~5)に認定されている方(単身世帯に限らず)の10%が民間の賃貸住宅に住んでいます。

また、現在入居中の方が長く住み続けるうちにいつの間にか高齢者になっている、というケースも多く、高齢入居者の対応は賃貸オーナーにとって避けては通れない問題です。実際に伊部さんのところにも「高齢者から申し込みを受けたのだが、安全に、安心して受け入れるにはどうするべきか」という賃貸オーナーからの相談が増えているといいます。貸す側の意識が高まりつつありますが、高齢者の住まい探しはまだまだ困難な状況です。

高齢者の住まい探しで大きな障害となっているのが、受け入れ側であるオーナーと対応する不動産会社の不安。これらの不安を具体的にして、それぞれ解決のヒントを探っていきます。

大家さんの不安①「家賃滞納が発生するかも?」

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年金以外の収入がないか、十分ではないことが多い高齢者。まずは入居中の「家賃の滞納」の不安ですが、これらは家賃保証会社でカバーできます。

高齢者に身寄りがない場合、そもそも審査が通りにくいのが課題となっていましたが、「緊急連絡先が知人・友人でも審査してくれる保証会社が増えて、以前よりも通りやすくなっています」とのこと。

保証会社の審査は年齢ではなく「家賃が払えるかどうか」が基本であることや、疎遠な身内は万が一の場合のみの緊急連絡先にしてもらったり、友人知人でも複数の連絡先があると審査にプラスになる場合がある、などのアドバイスがありました。

高齢入居者向け 家賃保証サービスの一例

▼(一社)全国不動産協会 家賃保証サービス「全日ラビー保証」
詳細はこちら

▼(株) 宅建ブレインズ「宅建ハトさん保証」
詳細はこちら

大家さんの不安②「入居者が死亡したら、契約解除は?荷物は?」

入居者死亡後の問題については、2021年に策定された「残置物の処理等に関するモデル契約条項」について紹介がありました。

この条項では、入居者があらかじめ委託した「受任者」に、死亡後の賃貸借契約の解除や残置物を処理することを委任できるとしています。もし家に金銭があった場合は、受任者は相続人を探して返すか、明らかでない場合は供託※する必要があります。しかし、供託は供託所に出向いての手続きなど手間がかかることから、受任者のなり手がなかなか見つからず、利用が進んでいないという状況になっているそう。

※供託:金銭、有価証券などを国家機関である供託所に提出して、その管理を委ね、最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって、一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度(法務省)

また、残置物の廃棄についても「死亡から3カ月経過後」となっており、その間の保管に費用がかかるのも利用が進まない一因と考えられます。

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賃貸借契約の解約と荷物処分の意思を確認できないと、相続人が見つからないもしくは全員相続放棄した場合は裁判所に申し立てて明け渡し訴訟をすることになります。行方不明の場合は、弁護士に依頼して公示送達手続きを行って明け渡し訴訟。いずれも賃貸オーナー個人が担うには、手間とお金と時間がかかりすぎてしまいます。

「保証会社が入っていれば訴訟費用が出る場合も多いですが、今後費用請求が増えてくれば、審査が厳しくなる可能性があります。そうすると、さらに高齢者の住まい探しが難しくなる。保証会社を守ることも、問題解決のために大切なのです」と伊部さん。

「生活保護だから安心」ではなく、解約手続きに備える必要あり!

よく言われるのが「入居者が生活保護を受けている場合は家賃扶助(住宅扶助)があるから、滞納などの心配はない」ということ。しかしこれは間違いで、もし入居者が長期入院や施設入所となった場合、住宅扶助が医療扶助や介護扶助に切り替わり、賃料支払いが滞ってしまいます。

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住宅扶助もない、解約手続きもできないとなると、賃貸オーナーにとってはとても困る状況になるため「長期入院や施設入所、死亡など住宅扶助が止まる際には、解約と荷物処分ができるように、行政の方々にはご本人やお身内との意思確認の仲立ちをしてもらえるようになるとより良い」と伊部さん。

「最後に大変な思いをする大家さんや保証会社の負担を減らすことが、巡りめぐって高齢者の住まい探しをスムーズにすることにつながるはず」と結びました。

大家さんの不安③「孤独死があったら、原状回復費や次の募集は?」

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2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で、自然死や転倒事故など日常生活の中での不慮の死については、特殊清掃が発生しなければ原則として告知しなくてよいと提示されました。

また、万が一早期発見できず特殊清掃ができなかった場合や、自然死や事故死以外の死が発生したとしても、告知期間は事案発生から3年間と期限が設けられました。最近では若い世代を中心に入居する側も以前より抵抗感がなくなり、家賃の下がり幅も縮小傾向にあるようです。

早期発見できれば、賃料低下や特殊清掃、精神的負担のリスクが大きく減ることになります。様々な見守りサービスも登場していますが、「異常があった時に通知を受ける人」「現地に実際に確認に行く人」が必要で、そこに高いハードルがある場合も多い、と指摘。

そこで、専用のSIM内蔵電球を取り付けることで、24時間点灯がなければアラートが鳴るヤマト運輸の「クロネコ見守りサービス」を紹介。代理訪問で様子も見てきてくれるため、その間に不動産会社では鍵の預かりの有無や契約書類の確認、緊急連絡先への連絡を行うことができます。

「月額1,078円なので、大家さんが払ってもいいのではないでしょうか。それくらい早期発見のメリットは大きいです」と伊部さん。

長年入居していて、いつの間にか高齢者になった場合は?

長年入居した人が高齢者になったり、入居時に指定した連帯保証人がすでに亡くなっているケースもあります。それについては、更新の際に保証会社を付けたり、孤独死保証付きの少額短期保険に切り替えるなどで対応すると良いとのこと。

身寄りのない単身高齢者の契約途中からも審査が通りやすい保証会社として、福祉系の業務提携先をもつ保証会社や、孤独死保険などの紹介がありました。

孤独死に備える保証・保険の一例

▼ナップ賃貸保証(株)
詳細はこちら

▼全日ラビー少額短期保険(株)
詳細はこちら

▼(株)宅建ファミリー共済
詳細はこちら

オーナーの不安④「もし入居中に認知症になってしまったら?」

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「認知症に限らず、加齢にともなう心身の問題は、不動産会社とオーナーだけでは対応が難しいです。これには行政の相談先が必要になってきます」と伊部さん。

ごみの分別や掃除ができなくなる、テレビが大音量になる、鍵を頻繁に失くす、コミュニケーションがとりにくいなどの異変を感じたら、各自治体の地域包括支援センターへ相談を。

豊島区では、区内8カ所に「高齢者総合相談センター」を設け、高齢者に関する相談を受け付けています。

200名以上で地域を見守り! 豊島区内での取り組み例

さらに、「実は豊島区には、200名以上の民生委員がいて、地域の見守りを行っています!そして、不動産会社や賃貸オーナーは誰が民生委員か知らないことが多いのです」と伊部さん。

ぜひここで知ってほしい、と、豊島区の高齢者福祉課の職員から以下のような取り組みが紹介されました。

豊島区の取り組み

【見守り訪問】
介護保険、生活保護を利用していない65歳以上の独居の方に、月2回訪問員が訪問、声かけを行う。

【熱中症予防啓発のための戸別訪問】
一人暮らしの高齢者を対象に行っている取り組みで、5~8月の期間、民生委員や高齢者総合相談センターの職員が啓発リーフレットをもって訪問。昨年は区で8人の熱中症による死亡があり、全ての方がエアコンが設置されているにも関わらず作動させていなかったそう。

【高齢者実態調査】
75歳以上の独居の方の生活状況や健康状態などを3年ごとに調査・把握。

【高齢者の見守りと支え合いネットワーク事業】
水道・電気・ガス事業者、金融機関、宅配などの事業者が高齢者総合相談センターに異変を通報する仕組み。日常業務の中での気付きを共有する。

【コミュニティソーシャルワーク事業】
18歳以上の区民がなれる地域のボランティアがアンテナとなって、気付きがあればコミュニティソーシャルワーカー(CSW)に連絡する仕組み。CSW は1地区2名(×8地区)配置されている社会福祉協議会の職員で、高齢者の家探しの相談にのったり、手続きに付き添ったりする。

身寄りがない、生活資金もない高齢者は、対応が得意な不動産会社へ

身寄りもなく、資金力もない高齢者など特に対応が困難な場合については、「対応が難しい場合は、高齢者の部屋探しが得意な不動産会社さんに紹介してあげてください」と伊部さん。住宅セーフティネット法に基づき、住宅確保要配慮者の居住支援を行う「住宅確保要配慮者居住支援法人」の指定を受けている不動産会社をはじめ、高齢者の部屋探しに特化した不動産会社があります。

▼国土交通省「住宅確保要配慮者居住支援法人について

高齢者に貸せる物件がある場合は、生活保護の要件をチェック

さらに不動産会社に向けて「高齢者を受け入れてもいい物件がある場合は、行政の生活保護の家賃扶助(住宅扶助)の要件に合うかどうかを確認しておきましょう」と伊部さん。現在は生活保護を受給せず貯えで暮らしているとしても、貯金が尽きれば、ゆくゆくは生活保護を申請する可能性があるからです。

物件が家賃扶助の範囲内に当てはまるかどうかを確認しておけば、高齢者の申し込みが来た場合にすぐに判断ができます。ちなみに、豊島区では以下のような条件となっています。

豊島区の生活保護の家賃扶助条件抜粋 ※単身者の場合
家賃額 :53,700円が上限
管理費 :5,000円前後
広さ  :15.01㎡以上
階数  :1階
契約金 :敷金・礼金・仲介料・火災保険(地震保険除く)・保証会社の保証料等が279,000円以下
鍵交換代:別途2万円まで

※その他要件あり。詳細は区の担当部署へ要確認。

※生活保護の住宅扶助額や要件は自治体や世帯人数により異なります。

参考:厚生労働省「生活保護制度

それぞれの立場での取り組みを連携させることが今後の課題

第二部は豊島区の高齢者福祉課、社会福祉協議会、高齢者総合相談センター、豊島区居住支援協議会、不動産会社社員、豊島区民生委員によるパネルディスカッションがおこなわれました。

【高齢者の住宅事情】高齢者の一人暮らしの割合が最多の豊島区から最新動向を学ぶ!2

テーマは、それぞれの役割共有と今後の連携体制について。壁となるのが個人情報の問題で、行政としては区民の個人情報を守る義務があります。入居者が入院してしまい、お金は口座にあるのに家賃を払うことができないケースや、夜中に入居者が亡くなってしまったケースなどを例にとり、それぞれの経験をもとに対応を話し合いました。

緊急事態は警察と救急に頼らざるをえないものの、いかに緊急事態を減らすかに焦点を当て、行政側は取り組みのさらなる周知、不動産会社と賃貸オーナーは地域の一部として支援団体と密に関わっていく必要性を確認。今後もこのような場を設定し、お互いの取り組みや課題について共有し合おう、と意見がまとまりました。

高齢者の住まい問題に各所で日々対応している関係者が一堂に会し、それぞれの取り組みや現状を話し合うことができた貴重な場となりました。

まとめ

高齢者の住まい探しの問題には、高齢者本人へのサポートはもちろん、賃貸オーナーや行政、地域すべてを巻き込んでの対応が不可欠です。

その第一歩として、それぞれがバラバラに動くのではなく、協力者だと認識し合えたことはとても有意義だったのではないでしょうか。豊島区だけでなく、全国にこのような機会が広がればと思います。

伊部さんの「賃貸オーナーや保証会社を守ることも、結果的に高齢者を守ることにつながる」という言葉どおり、それぞれにとってよい結果となるよう、今後の行政の取り組みや法整備が期待されます。

※この記事は2023年11月13日に開催された豊島区居住支援協議会による居住支援セミナーの内容をもとに制作しています。記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年11月13日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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