【2024年度】窓リフォームに使える補助金完全ガイド
国や自治体による窓リフォームへの補助が年々手厚くなっているのをご存じでしょうか。「2050年カーボンニュートラルの実現」という目標を達成するためには住宅の省エネ化が欠かせず、特に熱が逃げやすい窓の断熱に力を入れる必要があります。賢く使えば、コストを節約しながら物件の差別化にもなる窓リフォーム関連の補助金。2024年現在の最新情報をまとめました。
窓リフォームをするメリット
入居者ニーズに応えて空室対策に
寒さや騒音、防犯など、住まいの様々なお悩みは、窓が原因となっているものが多くあります。つまり、窓の性能が向上すれば、住み心地もぐんと良くなるのです。
入居者のニーズに応える窓リフォームは、物件の差別化や空室対策に有効です。窓リフォームによって得られる効果を具体的に見てみましょう。
冒頭にも触れた通り、住まいのなかで熱の出入りが最も大きいのが窓やドアなどの開口部。(一社)日本建材・住宅設備産業協会によると、冬は暖房の熱の58%が開口部から流出し、夏の冷房時には73%の熱が入ってくるとされています。
そのため、熱や空気などが出入りしにくい窓にリフォームすることで家の気密・断熱性が上がり、少しのエアコンでも冬は暖かく、夏は涼しい室内環境がかなうのです。
窓リフォームをすることにより、快適なだけでなく、気温差が原因で起きる結露やヒートショックなどの防止にもなります。もちろん光熱費も抑えることができ、家計にも地球にも優しい住まいとなります。
壁や屋根に比べると窓は薄く、スムーズに開閉できるようサッシに隙間が設けられているため、外からの騒音が入りやすい部分です。
カーテンや遮音テープなどによって音漏れを防ぐ方法もありますが、窓ガラス自体を交換したり、内窓を設置したりすることで、遮音性を高めることができます。窓リフォームは、賃貸住宅のトラブルの多くを占める音の問題から入居者を守ることにもつながるのです。
泥棒の侵入経路として多いのが窓で、一戸建てでは55.2%、3階以下の共同住宅では38.9%を占めています。無締まりの他、窓ガラスを壊し、そこから手を入れて開錠する手口も多く、ほんの数秒で侵入されてしまいます。
破壊しようとしてもヒビが入るだけで割れにくい窓ガラスに変えたり、二重窓にして狙われにくい窓にしたりすることで、防犯性がぐんと高まります。
また、割れにくいガラスは災害時に飛び散りにくく、二重窓は子どもの落下防止などにも有効です。
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窓リフォームに使える補助金まとめ
子育てエコホーム支援事業
国土交通省・経済産業省・環境省が合同で行っている「住宅省エネ2024キャンペーン」のひとつで、主に光熱費などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯に向けた支援です。
高い省エネ性能を備えた新築住宅の取得や、住宅の省エネリフォームに対して支援することで、子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えを行い、2050年のカーボンニュートラルの実現を図ることが目的です。
注文住宅の新築と新築分譲住宅の購入、リフォームが対象となります。子育て世帯とは2024年4月1日時点で 18 歳未満の子どものいる世帯、若者夫婦世帯とは2024年4月1日時点でどちらからが39歳以下の夫婦を指します。その他の世帯についても上限額は下がるものの、補助金は支給されます。
対象者には住宅の所有者・居住者の他、「住宅を所有し、賃貸に供する個人または法人」「賃借人」も含まれるため、賃貸オーナーも申請できる補助金となります。
補助額上限については、リフォームは工事内容に応じて子育て世帯・若者夫婦世帯が上限30万円/戸で、その他の世帯は上限20万円/戸となっています。
ただし子育て世帯・若者夫婦世帯が既存住宅購入を伴う場合は、上限60万円/戸、長期優良リフォームを行う場合は、子育て世帯・若者夫婦世帯は上限45万円/戸、その他の世帯は上限30万円/戸に引き上げられます。
補助対象となる工事は、「開口部の断熱改修」、「外壁、屋根・天井又は床の断熱改修」、「エコ住宅設備の設置」のいずれかが必須となります。3つのいずれかを行ったうえで、子育て対応改修、防災性向上改修、バリアフリー改修、空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置、リフォーム瑕疵保険等への加入を行った場合は、そちらも補助対象になります。
このうち「開口部の断熱改修」が窓リフォームにあたるのですが、あらかじめ事務局に登録された型番の製品を使用したガラス交換や内窓設置、外窓交換が対象となっています。
申請自体はあらかじめ登録された「エコホーム支援事業者」が手続きを行い、交付を受けた補助金を工事発注者に還元する形になります。
そのため、まずは「エコホーム支援事業者」を検索して探し、工事を依頼することからスタートします。交付申請期間は2024年4月2日~予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)で、予算執行状況はポータルサイトで確認できます。
先進的窓リノベ事業
同じく「住宅省エネ2024キャンペーン」のひとつで、断熱窓へのリフォームに特化した補助事業です。窓リフォームを促進し、既存住宅の省エネ化を促すことで、エネルギー費用負担の軽減や健康で快適なくらしの実現、家庭からのCO2排出削減を目指しています。
補助対象は住宅の窓の断熱性能リフォーム。住宅以外の用途(店舗や施設など)に使われる建物は対象に含まれません。
補助上限は住宅の建て方や設置する窓の性能と大きさ、設置方法に応じて一戸あたり5万円から最大200万円までとなっています。
「子育てエコホーム支援事業」とは補助対象が重複しなければ併用することができ、設置する窓(ガラス)の性能によってはこちらの「先進的窓リノベ2024事業」の方が高い補助を受けられる場合があります。
ガラス交換、内窓設置、外窓設置、ドア交換が補助対象となる工事です。内窓については、開口面と平行に設置しないもの・開口面から50㎝超離れたもの、外窓については外皮部分(外壁ライン上にある熱的境界)に設置しないものは対象外です。
Uwで表される窓の断熱性能によってB~SSまでのランクが設けられ、ランクが高く窓のサイズが大きいほど補助金額が高くなります。
子育てエコホーム支援事業と同じく、あらかじめ「窓リノベ事業者」に登録した施工業者が申請手続きを行い、工事完了後に補助金を還元します。受付期間は遅くとも2024年12月31日までで、予算上限に達した時点で終了します。こちらもポータルサイトに現時点での申請額の割合がアップされています。
また、「住宅省エネ2024キャンペーン」では、まとめてワンストップでの交付手続きが可能です。事業者が対象工事を入力すると、より高い補助を受けられる補助事業へ振り分け、交付申請を行うことができます。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
国土交通省による補助事業で、インスペクションや性能向上リフォームによって既存住宅ストックの質と子育てしやすい環境や防災性を高めることを目的としています。
以下を満たす戸建住宅又は共同住宅のリフォーム工事が対象となります。
・延べ面積の過半が住宅(リフォーム前後とも)であること
・少なくとも1階の床面積(階段部分を除く)が40m²以上、かつ、延べ面積が55m²以上であること
補助率は1/3で、補助上限は「評価基準型」が一戸あたり80万円で「認定長期優良住宅型」が160万円/戸です。「評価基準型」とは長期優良住宅の認定基準には満たないものの⼀定の性能確保が見込まれる水準ですが、2024年7月現在、「評価基準型」の予算は上限に達し、交付申請受付を締め切っています。
また、三世代同居改修工事をあわせて行う場合、若者・子育て世帯が工事を実施する場合、既存住宅を購入し工事を実施する場合はさらに50万円/戸が加算されます。
「住宅の性能向上工事」「三世代同居対応改修工事」「子育て世帯向け改修工事」「防災性、レジリエンス性の向上改修工事」が補助対象となるリフォーム工事です。
このうち窓リフォームを含むのは「住宅の性能向上工事」で、ガラス交換や内窓設置などによる省エネルギー性が確保されることが条件となります。
申請手続きは登録事業者が行います。通年申請タイプは申請期間が2024年5月13日から12月23日で、補助金の還元方法はあらかじめ合意のもと、支払いに充当する方法と、現金で支払う方法があります。
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
環境庁が行っている支援事業で、省エネ効果が見込まれる高性能建材(断熱材、ガラス、窓、玄関ドア)を用いた住宅の断熱リフォームを支援するものです。(公財)北海道環境財団が執行団体として全国を対象に公募を実施しています。
住居であれば、戸建ても集合住宅も補助対象となります。戸建てには最大120万円、集合住宅には1戸あたり最大15万円の補助金が出ます。
断熱材、窓、ガラスを用い、住まい全体での断熱リフォームを行う「トータル断熱」と、窓を用いて居間をメインに断熱リフォームを行う「居間だけ断熱」のどちらかで申請します。補助対象となる製品が決まっており、登録済みの補助対象製品についてはWebサイトから検索、ダウンロードができます。
公募は3か月程度を単位に何度かに分けて行われ、現在の【令和6年6月公募】のスケジュールは2024年6月26日(水)~8月9日(金)17時にメール必着となっています。
この期間切内にWebサイトから申請様式をダウンロードし必要事項を入力、関係書類を取りまとめてメール等で申請します。交付決定通知書を受け取り次第、期限までに完了実績報告書をはじめとした必要書類を提出します。
期限は事業完了日から起算して30日、または【令和6年6月公募】の場合は2025年2月14日(金)のいずれか早い日の17:00必着です。
住宅エコリフォーム推進事業
ZEHレベルの高い省エネ性能へのリフォームに対して、国が直接支援を行う事業です。既存の戸建て住宅、共同住宅ともにLED照明や窓ガラスの交換、内窓の設置や断熱材挿入などに対し1戸あたり最大35万円が補助されるという取り組みでしたが、2024年度の新規募集は行われていません。
地方自治体の補助金
上記のような国の補助金以外にも、各地方自治体が窓リフォームに対して補助金を設けていることがあります。
例えば千代田区では、二重窓や内窓の設置に20%、125万円を上限に費用が助成されます。
自治体の補助金は多くの場合、財源が別であれば国の補助金と併用が可能ですので、お住まいの市区町村で当てはまるものがないか探し、申請漏れのないようにしましょう。
地方自治体による住宅リフォームの支援制度は、(一財)住宅リフォーム推進協議会が運営しているサイトで検索ができます。しかし最新の情報については、必ず自治体のホームページなどで直接確認するようにしてください。
窓リフォーム成功の重要ポイント
適用条件の確認
国の補助金と自治体の補助金は併用可能と前述しましたが、注意したいのは適用条件もそれぞれに設定されている点です。
指定の製品であれば一律という場合や、窓の大きさや性能によって助成額が変わるものもあるため、併用不可であればどちらの助成金が多いか試算が必要な場合もあります。特に賃貸住宅では、空室がある場合の扱いなども補助金によって違うため注意しましょう。
信頼できる会社を選ぶ
補助金の多くは、あらかじめ登録した事業者が申請手続きを行います。国と自治体で補助金の併用をしたい場合、依頼する会社もそれぞれに登録している必要があります。つまり、リフォーム会社にとって補助金申請は、登録や手続きの負担がかかる業務なのです。
しかし申請は任意であり、顧客が補助金のことを知らなければそのまま何も知らせず工事完了、というケースもあり得ます。後から補助金があったと知ったとしても、「なにも言ってくれなかった」と法的請求などはできません。
依頼する側が情報収集をするのはもちろん、顧客の利益を優先し、使える補助金についてはできる限り提案してくれる会社に依頼するようにしましょう。
補助金を申請する場合の注意点
対象期間内でも予算に達すると終了してしまう
補助制度には申請期限が設けられていますが、あらかじめ決められた予算に達してしまうと、申請が締め切られます。2023年度の「こどもエコすまい支援事業」は申請期限より2カ月以上早い2023年9月28日に予算が100%に達し、受付が終了しました。
受付申請開始後は工事も混み合います。窓メーカーの納期やリフォーム会社のスケジュールが遅れるリスクもあるため、検討中の方は早めに動くことをおすすめします。
着工前に申請する必要がある場合も
補助金によっては、工事着工前に申請が必要なものがあります。例えば「長期優良住宅化リフォーム推進事業」がそのひとつで、もし交付決定前に着工してしまったら補助金が交付されないため、注意が必要です。
「先進的窓リノベ事業」は工事完了後の申請ですが、着工から交付申請(完工)までの期間にあらかじめ予算を確保する「受付申請予約」という制度が任意で利用できます。窓の納期や工期が遅れて、交付申請までに予算が上限に達してしまいそうなときの手段として検討しましょう。ただし予約から3カ月以内に交付申請をしないと無効になってしまいます。
補助金を使っておトクに窓リフォームをしよう
国や自治体で併用できる補助金が多くあることが分かりました。窓の断熱性については、DIYで取り付けられる製品もホームセンターなどで取り扱われています。しかし住宅性能に関わる部分でもあるため、補助金を利用しつつ、プロにまかせた方が無難かもしれません。
各種補助金の要件を詳しく確認し、賢く窓リフォームを実行して物件の資産価値を長く保っていきましょう。
※この記事は2024年7月24日時点の情報をもとに作成しています
記事・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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