空室対策のヒントはここにあった。住みここちランキング2026<首都圏>をオーナー目線で読み解く
大東建託株式会社は「いい部屋ネット 街の住みここち&住みたい街ランキング2026<首都圏版>」を公表。住みここち1位は馬車道、住みたい街1位は8年連続で吉祥寺。一見すると人気ランキングの話題に見えますが、その背景には、これからの賃貸経営に欠かせない“選ばれる街の共通点”が隠されています。空室対策や物件の差別化につながるヒントを、オーナー視点で読み解いていきます。
馬車道が偏差値80台。“知名度より日常の快適さ”が評価される

街の住みここち(駅)ランキング<首都圏版> 大東建託株式会社
「住みここち」は実際に住んでいる人の満足度、「住みたい街」は憧れやイメージを含めた人気度です。両者の違いを比較すると、入居者が本当に求める価値が見えてきます。
住みここち(駅)ランキングでは、1位が馬車道、2位がみなとみらい、3位が代官山という結果でした。いずれもブランド力の高い街ですが、共通しているのは「生活利便性」と「居住環境」のバランスです。特に馬車道は唯一の偏差値80台という高い評価を獲得しました。
また、北千束が70位から9位へ、荏原中延が24位から10位へと順位を上げている点も注目です。北千束や荏原中延は、都心へのアクセスを確保しながらも比較的落ち着いた住宅地として知られています。再開発による急激な変化ではなく、「住みやすさ」がじわじわ評価された結果ともいえるでしょう。必ずしも知名度だけではなく、落ち着いた住環境や交通利便性が評価されていることが分かります。
賃貸経営では、つい「駅力」や再開発の話題に目が向きがちですが、実際の居住者は日常生活の快適さを重視しています。スーパーや医療施設、公園、治安などの積み重ねこそが、長期入居や高い満足度につながる重要な要素といえるでしょう。
8年連続1位の中央区が示す「長く選ばれる地域」の条件とオーナーが意識すること

街の住みここち(自治体)ランキング<首都圏版> 大東建託株式会社
住みここち(自治体)ランキングでは、東京都中央区が8年連続1位、文京区が8年連続2位、武蔵野市が2年連続3位となりました。
顔ぶれが大きく変わらないことからも分かるように、住民満足度は一時的な開発だけでは築けません。教育環境、行政サービス、防災対策、交通アクセス、生活インフラなど、長年かけて積み上げられた地域の総合力が評価されています。
賃貸オーナーにとって重要なのは、「今人気だから買う」ではなく、「長く評価され続ける地域か」という視点です。人口動態や自治体の子育て支援、高齢者施策などを確認することで、将来的な需要の持続性も見えてきます。
短期的なブームに左右されない安定したエリア選びは、空室リスクの軽減や資産価値の維持にもつながるため、中長期視点の投資判断がますます重要になっていくでしょう。
住みたい街ランキング8年連続1位の吉祥寺から学ぶ賃貸経営のカギ

住みたい街(駅)ランキング<首都圏> 大東建託株式会社
住みたい街(駅)ランキングでは、吉祥寺が8年連続で1位となりました。2位は横浜、3位はみなとみらいで、上位の顔ぶれは安定しています。
吉祥寺が長く支持される理由は、都心へのアクセスと自然環境、商業施設の充実度が高いレベルで共存しているためです。横浜やみなとみらいも同様に、「休日の楽しさ」と「日常の暮らしやすさ」を兼ね備えています。
賃貸募集では、設備や築年数だけで差別化することが難しくなっています。そのため、街そのものが持つ魅力をどのように伝えるかも重要です。最寄り駅の利便性や地域イベント、公園、カフェなど、暮らしのイメージを具体的に発信することで、共感を呼ぶ募集活動につながります。
物件だけでなく「この街で暮らす価値」を提案する視点が、選ばれる賃貸経営のカギとなるでしょう。
港区が1位浮上、札幌・福岡もランクイン。需要の地図が変わり始めている

住みたい街(自治体)ランキング<首都圏> 大東建託株式会社
住みたい自治体ランキングでは、東京都港区が昨年2位から順位を上げて1位となりました。2位は世田谷区、3位は渋谷区です。
上位には都心ブランドを持つ自治体が並ぶ一方で、15位に札幌市、19位に福岡市がランクインしている点も興味深い結果です。テレワークの浸透やライフスタイルの多様化により、「首都圏に住む人が地方中核都市に魅力を感じる」傾向もうかがえます。
これは賃貸経営においても、従来の常識だけでは需要を読み切れない時代に入ったことを意味しています。都心物件の強さは依然として健在ですが、地方主要都市や準都心エリアにも新たな可能性が広がっています。
投資判断では、「これまで人気だった場所」だけでなく、「これから支持が広がる地域」にも目を向ける柔軟さが求められるでしょう。
「スーパー徒歩3分」より「仕事帰りに寄れる」——ランキングが教える募集文の書き方
ランキングは投資判断だけでなく、既存物件の空室対策にも活用できます。
例えば、「住みここち」で評価される要素を自社物件の募集に反映する方法です。周辺施設や交通利便性、自然環境、子育て環境などを具体的に伝えることで、物件の魅力は大きく変わります。
物件広告で「スーパー徒歩3分」と記載するだけでなく、「仕事帰りに立ち寄れる大型スーパー」「休日に家族で過ごせる公園」といった暮らしの情景まで伝えることで、入居後のイメージが湧きやすくなります。また、ファミリー向けであれば学校や公園、単身者向けであれば通勤利便性や飲食店の充実度など、ターゲットごとに訴求ポイントを整理することも重要です。
人気ランキングは「うちの物件には関係ない」と考えられがちですが、実際には入居者が何を重視しているかを知る貴重なデータでもあります。ランキングの背景を読み解き、自身の募集戦略に落とし込むことで、広告の精度向上や反響率アップにもつなげることができるでしょう。
立地条件は同じでも、伝え方で差がつく。街の魅力を物件の強みに変える方法
これからの賃貸経営では、「良い物件を持つこと」だけでは十分とはいえません。その街の特性を理解し、地域の魅力と物件の強みを結びつける視点が重要になります。
例えば、住みここち上位の街では落ち着いた住環境を訴求し、住みたい街では憧れや利便性を前面に出すなど、地域性に応じた戦略が必要です。
また、ランキングの変動を定期的に確認することで、地域ニーズの変化にも気づきやすくなります。入居者が求める価値は時代とともに変わるため、募集条件や設備投資の優先順位を見直すきっかけにもなるでしょう。
「駅から何分」「築何年」といった条件競争だけではなく、街の魅力を含めた総合提案こそが、今後の賃貸経営の差別化につながっていくはずです。
まとめ——ランキングは「入居者の声」。街の価値を物件に結びつける視点を持とう
今回のランキングから見えてきたのは、住民満足度の高い街と、憧れを集める街には共通する要素が存在するということです。それは、交通利便性や商業施設だけではなく、暮らしやすさ、安心感、地域とのつながりなど、日常生活の質に関わる価値でした。
また、東京都中央区や文京区、吉祥寺などが長年にわたって高い評価を維持していることは、地域の総合力が資産価値の安定にもつながることを示しています。一方で、北千束や荏原中延のように順位を大きく上げる街もあり、「次に注目される地域」を見極める重要性も浮かび上がりました。
賃貸経営においてランキングは、単なる話題づくりの材料ではありません。入居者ニーズを知り、地域の魅力を再発見し、自身の物件の訴求力を高めるためのヒント集でもあります。これからの賃貸経営では、物件そのものの性能だけでなく、「どんな暮らしを提供できるのか」が問われます。ランキングは、その答えを教えてくれる入居者の“生の声”です。街の価値を見極め、物件の魅力と結びつける視点こそが、長く選ばれ続ける賃貸経営の競争力になるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年6月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















