敷金・礼金・仲介手数料の許容範囲はいくらまで?賃貸契約時に支払う初期費用についてのアンケート調査
物価や賃料が上昇している昨今、引越しの際の初期費用はできるだけ抑えたいという人が増えているのもうなずけます。しかし、敷金や礼金については地域によって慣習が違うこともあり、妥当と納得できる金額には個人差も。(株) AZWAYが発表したアンケートから、20代〜60代以上までのエンドユーザーの考える初期費用の相場を見ていきましょう。
敷金は「払うもの」ととらえている人が8割以上
まずは敷金についてですが、「家を借りるときに検討対象になる敷金の金額」の1位は「家賃1カ月分」で55.6%、2位が「2カ月分」で26.6%、3位が「なし」で12.6%という結果でした。
「家賃3カ月分」という人も5%おり、合わせて8割以上が「敷金は払うもの」と思っていることがわかります。しかし、金額としては「家賃1カ月分」を希望する人が多く、全体の過半数となりました。
フリーコメントでは、「敷金については仕方ない部分もあると思うが、退去時にきちんと精算してほしいと思う。本来返ってくるはずの敷金も返ってくることがない方が普通という現代の考え方がおかしいと思う」という声が。
敷金については、2020年の民法改正で定義が明文化されました。家賃の滞納があった場合や、退去後の原状回復にあてられる必要経費ととらえている人が多い一方で、返還される条件については不満に思っている人もいるようです。
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仲介手数料は「あまり払いたくない」という人が多め
仲介手数料は大家さんではなく、不動産仲介会社に支払う報酬で、宅建業法で「家賃1カ月分(+消費税)以内」と定められています。
仲介手数料は入居者と大家さんが按分して負担しますが、合意がある場合はどちらかがすべて払うこともできます。入居者の負担は「0円〜家賃1カ月分(+消費税)」となりますが、「家を借りるときに検討対象になる礼金の金額」について聞いたところ、「0.5カ月分」が最多で44.4%でした。
続いて「なし」という回答が32.0%で「仲介手数料は払いたくない」という人は敷金よりも多くなります。フリーコメントでも、「仲介手数料は中間マージンと変わらないので、なくてもいいのではと思っています」「1カ月分は多いと思う」という声が挙がっていました。
しかし、「1カ月分」と答えた人は23.7%おり、4人に1人は仲介手数料を全額負担しても良い、もしくはそうするものだと考えていることになります。
礼金には敷金より厳しい視線。「納得できない」という人も
「家を借りるときに検討対象になる礼金の金額」については、「家賃1カ月分」が1位で58.9%、「なし」が2位で29.2%、「2カ月分」が3位で10.5%という結果になりました。退去時に戻ってくる可能性がある敷金とは違い、礼金については「できれば払いたくないが、払えても1カ月分」という人が多いようです。
同調査では、他の契約条件との兼ね合いもある中で、礼金についてどのような物件を選ぶかも質問しています。最も多かった回答が「礼金1カ月分なら理想に近い物件を選ぶ」で55.3%でした。
2位以下は「礼金0で理想に近い物件が出るまで待つ」18.3%、「礼金2カ月以上でも理想に近い物件を選ぶ」13%、「ある程度妥協して礼金なしの物件を選ぶ」9.3%、「絶対に礼金0の物件を選ぶ」4.1%が続きます。
理想に近い物件ならば礼金1カ月分を払ってもいいという人が半数以上で、礼金0を希望する人の中にも条件を妥協する人、理想に近い物件が出るまで待つ人、礼金0を死守する人などがいることがわかりました。
フリーコメントにも、礼金については「法的根拠がない礼金については請求されるのは納得できません。不動産賃貸取引の慣例なのでしょうが、そんな慣例は早くなくなれば良いと思っています」「礼金は正直必要ないお金だと思っているので、よほどのことがない限り払いたくないです」とやや厳しめのトーンでした。
初期費用の総額は「家賃の2カ月分」が約半数に
最後に、敷金・礼金・仲介手数料をすべて合わせた「賃貸契約時に支払える費用総額」について質問。1位は「家賃の2カ月分」で49.6%、2位は「家賃の3カ月分」で24.7%、3位は「それ以下」で14.9%という結果になりました。
賃貸契約時の初期費用として家賃の2カ月分と考えている人が多く、敷金・礼金・仲介手数料がそれぞれ家賃1カ月分ずつの物件の場合は候補から外れてしまうことになります。
まとめ
アンケート結果から、敷金に関しては支払うことが当たり前ととらえている人が多いものの、仲介手数料と礼金についてはやや抵抗感が強く、0円を希望している人もそれぞれ3割程度いることがわかりました。
特に礼金については、金額の多寡というよりは「払うことに納得できない」という感情も伝わってきます。これは多くの大家さんが日常で感じている反応と同じものかもしれません。
賃貸契約時に支払える費用総額で最も多い回答が「家賃の2カ月分」だったことから、アンケートでは「今後、礼金・仲介手数料が安いもしくは無料の物件の需要が高まっていくことが予想される」とまとめています。
しかし、安易に「礼金0」にしてしまうとそのまま減収につながってしまいます。カード決済ができるように切り替えたり、カーテンや照明などをプレゼントしたりすることで入居者の初期費用の軽減につなげるという方法もあります。競合物件の設定もチェックしつつ、仲介会社と相談しながら慎重に検討しましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年12月9日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。