【法律Q&A】元入居者から訴えられることも!?退去から入居者募集時までに発生するトラブル

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久保原弁護士による法律相談、入居者の退去から、次の募集時までに起こりうるトラブルのQ&Aです。
良かれと思って行った空室対策のために、入居者からクレームがくることもあります。
近隣や入居者への配慮を第一に、適切な対策をしましょう。

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。


2008 年、九帆堂法律事務所設立。


最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。


Q1:クロスの張り替えはオーナー負担だと言われましたが、本当ですか?

A1:借主に請求するには、入居者過失、張り替えの範囲、経過年数等の考慮が必要です。

原状回復費用のうち、通常損耗や自然損耗は明確な特約がない限り賃貸人負担というのが判例です。このような損耗の原状回復費用は一般的に賃料に含まれると考えられています。よって、賃借人に請求できるのは通常損耗や自然損耗ではなく、賃借人の故意過失による損耗の原状回復費用となります。

しかし、この場合でも、かえってグレードアップになるような費用の請求は認められません。そこで、部屋全部のクロス張り替えが対象になるわけではありません。クロス1枚分(通常は1メートル位の幅)が基準になると思います。

さらに、経過年数が考慮され、6年以上でクロスの価値はほぼなくなるものとされますので、6年以上居住された場合には、賃借人に請求するのは難しくなります。

Q2:自分で清掃したからといって、ハウスクリーニング代の請求を拒否されました。

A2:特約で明確に定めてあれば、ハウスクリーニング代を請求できます。

退去後のハウスクリーニングは、次の入居者を募集するために行うという側面が強く、一般的に賃借人の原状回復義務の範囲を超えていると考えられます。しかし、明確な特約があれば、賃借人負担とすることもできます。

明確な特約とは、1)消毒等は本来賃貸人負担であるが賃借人負担とすること、2)いつ(退去時に)、3)いくら支払うのかということが明確になっているということです。ハウスクリーニング代といっても入居者は金額が想像しにくいので、金額まで明記しておくことが望ましいです。

ハウスクリーニングは消毒など特殊技術により実施されることに意味があるので、特約で明確に定めれば、「自分で掃除した」こととは意味合いが異なることは賃借人にも理解してもらえるでしょう。

Q3:空室対策で募集賃料を下げたら、隣の部屋の入居者から賃料減額請求を受けました。

A3:募集賃料と継続賃料は異なりますが、よく話し合いをしましょう。

賃料は賃貸人と賃借人の合意で定まるため、合意した賃料額が当事者にとって最も適正な賃料額ということができます。そこで、賃料を改定する場合、合意した時点からどのような変化があったかという検討が第一になされます。この見地からは、隣の部屋の新規募集賃料は一要素ですが、絶対的に影響を与える変化ではありません。もっとも、賃料は入居者が特に関心を持つ条件のため、近隣相場の変化による事実上の影響は避けられません。賃料減額の申し出に対しては話し合いが必要でしょう。

なお、借地借家法により、賃借人からの賃料減額の申し出に対して賃料を改定せず、将来裁判で減額が認められた場合、減額分に1割を加えて賃借人に返還しなければならないこととされています。

Q4: 空室対策として新規募集はペット可に変更したいのですが、注意すべきことは?

A4:従来の入居者への配慮と、ペット飼育規約の整備を行いましょう。

ペットの飼育を許す場合は、十分な検討のもとで飼育のルールを作成し、徹底することが重要です。臭いや鳴き声などに対する感じ方は人それぞれですので、近隣(入居者間)問題が生じることは十分に予想されます。ペット不可の物件を選んだ既存入居者への配慮は必須です。

また、退去後の原状回復の問題があります。ペットが飼われていた部屋では、爪のひっかき傷や臭いなど、自然損耗なのか故意過失によるものなのかが不明確で、争いとなることがよくあります。糞尿屋敷となり、莫大な原状回復費用がかかった事案も多数あります。敷金の一部を償却するという契約を検討するほか、細かな基準を明確に定めておくことも、トラブルを防ぐ努力の一つでしょう。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2015年12月7日時点の情報です。

イラスト/すぎやまえみこ

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