2024年人口移動報告が発表!社会増減を把握して人口減少時代の賃貸経営に備えよう

統計局による「人口推計」の2024年(令和6年)の結果が発表されました。これは、住民基本台帳にもとづいて人口移動の状況を明らかにするもので、全国、都道府県別、3大都市圏の転入・転出者数などを提供しています。住まいの需要に大きな影響のある人の動きを把握することで、今後の土地活用や賃貸経営に生かしていきましょう。
賃貸オーナーが注目すべきポイント
✅ 都市圏(特に東京都・大阪府・神奈川県など)は社会増加が続いており、賃貸需要が高い
✅ 地方では社会減少が進行中。空室リスクが高まるため、今後の経営戦略を再考する必要がある
✅ 単身世帯、高齢者世帯が増加しており、対応した間取りや設備の工夫が必要
人口の基礎知識|「自然増減」「社会増減」とは?
2024年9月1日現在の日本の総人口は1億2,377万9千人で、前年同月に比べ56万9千人減少しました。

出典:出生数・死亡数の推移|内閣府HP「自然増減の推移」
人口調査でよく出てくるのが「自然増減」「社会増減」という言葉。自然増減は死亡数と出生数の差によるもので、死亡数より出生数が多ければ自然増加となり、逆であれば自然減少となります。
日本では、1980年代頃から少子高齢化が深刻化し、出生数が減少。同時に人口に占める高齢者の割合も多くなってきたことで死亡数が増加。2007年以降は死亡数が出生数を上回る自然減少の状態が続いています。
社会増減は人口の流出数と流入数の差で、地方自治体や地域ごとの転入出の推移を示しています。転入が転出を超えている状態(転入超過)で社会増加、その逆で減少となります。日本全体では、国外からの転入者数が国外への転出者数を上回り、2024年は約33万人の社会増加でした。
賃貸オーナーが活かしたいポイント
💡日本全体では人口減少が進行中だが、都市部では社会増加が起きているエリアがあるため、地域によって賃貸市場の状況が異なる
💡賃貸経営をするなら、社会増減のデータをもとに、エリアの将来性を見極めることが重要
2024年の社会増加は東京都はじめ20都道府県
都道府県別に社会増減※の状況を見てみると、社会増加となっているのは東京都の14万548人、大阪府4万9,767人、神奈川県4万1,916人など20都道府県。
このうち1万人以上の社会増加となっているのが東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県です。

出典:都道府県別社会増減数(2023年、2024年) ※ここでの社会増減数=(転入者数-転出者数)+(国外からの転入者数-国外への転出者数)+移動前の住所地不詳-職権消除等
社会減少は福島県5,139人、青森県4,537人、新潟県4,008人など27県で、前年比で社会減少数が最も拡大しているのは石川県2,114人でした。
賃貸オーナーが活かしたいポイント
💡社会増加が続く都市では、賃貸需要が高いため、積極的な投資やリノベーションが有効
💡逆に社会減少が進んでいる地方では、入居者の確保が難しくなるため、家賃の見直しや空室対策が必要
転入超過数の最大は東京都で7万9,285人

都道府県別の転入者数は、東京都への転入者数が46万1,454人と最多。次いで神奈川県が23万4,079人となっている他、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県、福岡県の5府県が10万人台となっています。これら7都府県への転入者数だけで、転入者数全体の57.7%を占めています。
転出者数も東京都からの転出者数が38万2,169人と最も多く、神奈川県の20万7,116人が続く他、大阪府、埼玉県、千葉県及び愛知県の4府県が10万人台です。
転入数-転出数がプラスで転入超過となりますが、転入超過数が最も多いのが東京都の7万9,285人。次いで神奈川県2万6,963人、埼玉県2万1,736人、大阪府1万6,848人など7都府県が転入超過の状態です。
転出超過数が最も多いのが広島県の1万711人。次いで愛知県7,292人、兵庫県7,287人、静岡県7,271人など40道府県が転出超過となっています。
賃貸オーナーが活かしたいポイント
💡東京都は引き続き転入超過が続いており、賃貸市場は活況。特に単身者向けの物件需要が高い
💡今後も都市圏ではワンルームや1LDKの需要が続くと考えられるため、ターゲットを単身者向けに特化するのも有効
東京都内では前年同月比で中央区が最も増加
転出入の動きが激しく、最も社会増加となった東京都に注目してみましょう。こちらは2025年1月1日現在の推計人口を東京都が発表しています。(推計時期が違うため総務省の数字と若干のずれがあります)
それによると、2025年1月1日現在の東京都の推計人口は1,419万5,730人。23区で987万8,821人、市部が424万517人を占めています。
人口の多い区と市町村のそれぞれ上位5位は以下の通りです。
人口の多い区 | ||
1位 | 世田谷区 | 94万4,617人 |
2位 | 練馬区 | 75万7,644人 |
3位 | 大田区 | 75万2,128人 |
4位 | 足立区 | 70万1,492人 |
5位 | 江戸川区 | 69万4,476人 |
人口の多い市町村 | ||
1位 | 八王子市 | 57万6,566人 |
2位 | 町田市 | 43万2,049人 |
3位 | 府中市 | 26万3,464人 |
4位 | 調布市 | 24万4,326人 |
5位 | 西東京市 | 20万7,726人 |
また、対前年同月比で人口増加が多い市区町村は以下のようになりました。
人口増加の多い区市町村(対前年同月比) | ||
1位 | 中央区 | 1万569人 |
2位 | 大田区 | 6,885人 |
3位 | 板橋区 | 5,987人 |
4位 | 世田谷区 | 5,069人 |
5位 | 足立区 | 5,053人 |
賃貸オーナーが活かしたいポイント
💡京都内でも人口増減には差があるため、エリアごとのトレンドを把握して投資を検討する
💡人口増加が著しいエリアでは、新規の賃貸物件を投入するチャンス
💡逆に人口減少が進むエリアでは、家賃調整や設備投資による差別化が求められる
東京都では単独高齢世帯が2045年に3割増に
2025年2月1日の概算値によると、日本の総人口は1億2,354万人で、前年同月に比べ約57万人減少しています。しかし、東京をはじめとした都市圏では社会増加が起きていることがわかりました。
さらに、賃貸経営においては、世帯数がどのように推移するかが重要になります。世帯数については2024年3月に東京都が予測資料を公表しています。
それによると、東京都の一般世帯数は2020年現在で721.7万世帯。今後、総人口が2030年に1426.5万人でピークを迎えた後も、単独世帯や夫婦のみの世帯の増加により2035年の768.3万世帯まで増加が続き、以後ゆるやかに減少。2045年には760.6万世帯になる見込みです。

出典:東京都の高齢世帯数(世帯主が65歳以上及び75歳以上)
1世帯当たりの人数は2020年の時点で2.1人ですが、2045年には1.79人。単独世帯数は、2045年には410.1 万世帯となり、2020年の362.6 万世帯と比べて47.5万世帯(13.1%)の増加となる見込みです。さらに、一人暮らしの高齢者(65歳以上)は2045年に122.3万世帯となり、2020年から36.7%増加すると予測されています。
賃貸オーナーが活かしたいポイント
💡高齢者向け賃貸の需要が今後増加するため、「バリアフリー設備」「見守りサービス」などの付加価値を検討
💡エレベーター設置、バリアフリー改修を行うことで、高齢者入居者を確保しやすくなる
💡単身世帯向けに1K・1LDKの物件需要が高まるため、小規模な間取りの物件でも収益を上げる戦略を立てる
まとめ|人口動態を理解して賃貸経営の戦略を練る
「日本の人口は減少」「都市圏には人が集まる」「単独世帯・高齢世帯が増える」といった傾向はよく言われていますが、具体的なデータを見ることでより適切な賃貸経営の対策を立てることができます。
実際に所有物件が立地するエリアの人の動きを分析することは、事業計画には不可欠です。将来の人口推移や世帯構成の変化に対応できる建築プランや、フレキシブルな経営方針で人口減少時代を勝ち抜いていきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年3月5日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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