ペット可賃貸は家賃3万円アップ&不可物件よりも17日早く成約!大家さん向け最新データから解説

築古物件の空室対策や家賃アップの理由付けとして、ペット可物件への変更を検討している賃貸オーナーも多いのではないでしょうか。大きな設備投資をしなくても、競合物件との差別化につながるペット可物件は魅力的です。まずはLIFULL HOME'Sが行ったアンケート結果から、ペット可物件のニーズを見てみましょう。
2割未満のペット可物件。家賃が高くても埋まりやすい
ニーズと比較して、圧倒的に供給が足りていないといわれ続けているペット可賃貸物件。今もその状況は変わらないのでしょうか。
LIFULL HOME’Sに掲載されている物件のうち、ペット可物件の割合を調べたところ、2022年3月時点ではすべての賃貸物件に対して12.9%という割合でした。そこからゆるやかに増え続けており、2025年3月時点では19.3%まで増加しています。4年間で6.4ポイントも上昇したとはいえ、まだ全体の2割にも満たない状況です。
また、ペット可物件で賃料アップが望めるのか、空室対策として効果があるのかは大いに気になるところ。賃料についてはペット可物件の掲載賃料平均は11万2,771円で、ペット不可物件の掲載賃料平均は7万8,253円。ペット可物件の方が3万4,518円も高いことになります。

掲載日数については、ペット可物件は平均66.8日、ペット不可物件は平均83.4日と、ペット可物件の方が16.6日早く埋まっています。これらのことから、ペット可は家賃アップと空室対策に有効であることがわかりました。
9割が不便を感じた住まい探し。理由は「物件の少なさ」
ユーザー視点で見てみると、ペットがいることを理由に住まい探しで不便を感じたり困ったりした経験が「ある」と答えた人は91.6%。不便を感じた理由としては、次のような経験が上位でした。
「ペット飼育可」の物件を探す際に不便に感じたこと(複数回答) | |
「ペット可」の物件数が少なかった | 34.4% |
家賃が高かった | 29.9% |
敷金・礼金などの追加費用がかかった | 25.9% |
ペットの種類・大きさに制限があった | 24.3% |
新築や築浅の物件数が少なかった | 23.9% |
契約条件が厳しかった | 23.4% |
物件数がそもそも2割に満たない状況の中、立地や家賃などの条件を合わせるとさらに選択肢が少なくなってしまうのでしょう。また、ペットを飼う場合は「敷金プラス1カ月」などの設定があったり、ペット可であっても「犬はOKだが猫はNG」などの制限があったりすることが多くあります。
ペットとの住まい探しでは、ほとんどの人が不便を感じたり、困ったりしている現状が改めてよくわかります。
住まい探しは長期化の傾向で「3カ月以上」も15.8%

前項の通り、ペットとの住まい探しで苦戦する人が多い中、物件探しから契約までにかかった期間も調査しています。まず、最多はペットを飼っている人、一般層※のどちらも「2週間から1ヶ月未満」という点は変わりません(飼っている人25.8%、一般層29.2%)。
しかし、2カ月未満で契約できている割合は、ペットを飼っている人で71.3%と、一般層(82.1%)より10.8ポイント低くなります。ペットとの住まい探しは長期化する傾向が明らかになりました。
実際にペットと住んだあとにも、近隣から注意や要請を受けた経験が「ある」と回答した人は66.5%と半数を超えています。ペットの鳴き声やニオイは完璧にコントロールするのは難しく、多くの人が苦労しているようです。
※一般層:LIFULL HOME’S「住宅弱者の「住まい探し」に関する実態調査」(2022年)における住宅弱者(65歳以上の独居者、日本国籍を有していない外国人、LGBT、生活困窮者、シングルマザー・ファーザー、被災者、障害者)以外の人
67.2%の不動産会社が「ニーズは増えている」と実感
LIFULL HOME’S加盟の不動産事業者へのアンケートでは、現場でペット可物件のニーズは「とても増えている」と回答した会社が29.8%、「やや増えている」が37.4%。合わせて67.2%がペット可賃貸物件ニーズは増えている、としています。
居住者からのペットにまつわるトラブル相談の対応頻度は「よくある」が6.1%、「時々ある」が58.3%。合わせて約6割の不動産会社がトラブル相談に対応しているようです。トラブル相談内容の上位は以下の通りでした。
入居者からのペットにまつわるトラブル相談(複数回答) | |
近隣の部屋のペットの鳴き声がうるさい | 64.9% |
近隣の住人が飼育禁止のペットを飼っている | 43.2% |
共用スペース(廊下・エレベーターなど)でのマナー違反 | 37.8% |
先住者のペットによる物件の破損や汚れ | 33.8% |
近隣の部屋のペットの匂いが共用部や部屋に広がる | 24.3% |
トラブル相談の対応経験が「全くない」は35.7%でした。
ペット不可物件オーナーの実際のトラブル経験は4割弱
賃貸物件の「ペット可/ペット不可」を決めているのは多くは賃貸オーナーです。ペット不可物件のオーナーからその理由を聞いた経験がある不動産会社は77.3%。「自社から提案」「オーナーから聞いたことがある、かつ自社からの提案」と回答したのは合わせて17.3%でした。
オーナーから聞いたペット不可の理由(複数回答) | |
破損や汚れが発生し、修繕費や回復期間が 長くなる可能性があるため |
74.2% |
過去にペット飼育者とのトラブルがあったため | 39.3% |
ペットが苦手な人やアレルギーのある人の 入居を妨げないため |
30.3% |
ペットの匂いやアレルギーにより、 次の入居者の募集が難しくなる可能性があるため |
30.3% |
ペット飼育に対して、 一般的に悪いイメージを持っているため |
23.6% |
ペット不可とした理由には、実際に経験したトラブルや修繕費の懸念、ペットを飼っていない入居者への配慮などが挙げられています。賃貸オーナーにとっては深くうなずける内容でしょう。
しかし「ペット飼育に対して、一般的に悪いイメージを持っているため」という声があるように、なんとなく悪いイメージからペット不可としているオーナーも一定数いるようです。
まとめ
供給過多といわれる賃貸物件においても、ペット可物件はまだまだ足りない現状。ペット可賃貸は平均家賃がペット不可物件よりも3万円以上高く、早く埋まることも数字で明らかになりました。ペット可物件にすることは空室対策として有効と言えるでしょう。
ペットと暮らすほとんどの人は部屋探しで苦労した経験をもつため、一度入居すると長く住んでくれる傾向にあります。ペット可によって収益の安定も期待できるかもしれません。

しかし、ペット不可物件をペット可にするには、現在住んでいる人への配慮が必要です。もしアンケート等で反対している入居者がいる場合、退去のリスクもあります。また、一度ペット可にしてしまうと、ペット不可に戻すのは難しくなることも頭に留めておきましょう。
ペット可物件にした後も、ペットの種類や頭数、条件について明確に契約書に定めておきたいもの。実態を把握するために、入居時にペットの写真を求めるケースも増えています。ペット可物件の実績が多い不動産会社に、進め方や条件設定について相談してみるのがおすすめです。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年6月23日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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