大家さんが資産を守るために!知っておきたい「資産組み換え」の基礎知識
「このまま持ち続けて本当に大丈夫なのか」「将来、資産として足を引っ張らないか」──築年数が進むにつれ、賃貸経営は“日々の運営”だけでなく、“資産としての出口”も意識せざるを得なくなります。本記事では、賃貸オーナーの資産形成や将来設計に携わってきた専門家に取材し、築古物件を保有するうえで今考えておきたい視点や判断のヒントを整理しました。先送りしがちなテーマだからこそ、早めに知っておきたい内容です。
「資産組み換え」とは?「稼ぐ」資産で全体を守る
資産とは、プラスの価値がある財産を指します。その中身は、現金や株・債券などの金融資産から、不動産・金などの実物資産まで多様です。そして、資産の価値はそれぞれ日々変動する。資産組み換えとは、資産全体の価値を守るため、これらの資産の組み合わせ=ポートフォリオを状況の変化に合わせて見直していくことを指します。
資産組み換えを考える上で重要なのは、積極的に増やしていく発想です。「収益を生む=稼ぐ力」をもつ資産へ組み換えなければ、資産は減っていきます。稼ぐ力をもつ資産の代表が「収益不動産」と「株式」です。現金も含めてそれぞれの特徴を図1に示しています。
「リスク」は主に価格変動の幅広さを表し、「リターン」が稼ぐ力にあたります。一般に株式は「ハイリスク・ハイリターン」、収益不動産は「ミドルリスク・ミドルリターン」といわれます。
この他、不動産は節税効果が期待できる一方で、売却に時間がかかり流動性が低いというデメリットもあります。その他の資産にもそれぞれに特徴があり、万全の資産はありません。リスクとのバランスを考え、組み換える必要があります。
不動産は稼ぐ力と相続対策、両面から検討する
資産の種類は多岐にわたりますが、ここでは不動産について組み換えを検討する場合を取り上げます(図2)。不動産のうち、稼ぐ力は「更地→貸地→駐車場→賃貸住宅→オフィス・店舗」の順で高くなります。稼げない土地は固定資産税や相続税の分マイナスです。
しかし、立地や市場ニーズなど様々な要素が関係するため、単純に同じ場所で不動産の種類を変えれば稼ぐ力が高まるとは限りません。また、収益の低い不動産は売るに売れなくなることも考えられ、長期的な市場の変化も視野に入れて、不動産の買い換えや金融資産への組み替えも含め検討する必要があります。
さらに不動産の場合、どうしても相続が絡んできます。遺産分割しやすい資産構成か、必要な納税資金を確保できるかという観点に加え、相続する家族の意志も関係します。
現金で不動産を取得すれば相続税評価額が圧縮でき、節税対策にはなる一方で、納税資金が足りなくなるケースも多くあります。相続人の希望によっては物件を手放すなど、相続対策の基本である、分割・納税・節税の3つを考えるにあたっても資産組み換えは重要です。
目的に合わせた資産組み換えのパターン
【収益性アップ】築古物件を建て替え
土地は手放したくないが、アパートは築古で空室が増加。修繕費の増加で収益も悪化し、管理負担も大きい。このまま子に継がせたくない。
▼
▼
▼
所有地で築古物件の建て替えを実施。収益性が大きく改善して土地の資産価値も向上。管理負担も減り、将来的な事業承継にあたっての心配も軽減。
流動性アップ】都心の物件に買い換え
郊外で駅から離れた土地にアパートを複数所有。現金化したくても買い手がつかなかったり、価値が低下したりするのではと心配。
▼
▼
▼
いくつかのアパートを売却し、都心のオフィスビルに買い換え。流動性が大幅にアップし、将来的な資産価値の向上も見込める。
【分割対策】1棟から区分に買い換え
子ども2人に平等に資産を相続して欲しいが、資産の大半が郊外の大型1 棟マンションで、現金などはわずか。共有名義は避けたい。
▼
▼
▼
1 棟マンションを売却し、都心の区分マンション2 戸に買い換え。平等な相続が可能になった。流動性も高まり子どもの意向に沿った柔軟な対応が可能に。
【節税対策】現金で不動産を買い増し
昔、相続税対策で建てたアパート1棟を所有。借入金返済・減価償却期間の終了で所得税が増加。路線価も上がり、相続税評価額も上昇。
▼
▼
▼
現金や株式の売却益で賃貸マンションを別エリアに新たに買い増し。所得税と相続税の節税対策に加え、立地分散や収益安定化の効果も。
定期的な見直しで適切な調整を
不動産に関する具体的な資産組み換えの方法には、主に次の3つのパターンがあります。
①資産の種類を換える
例:納税資金調達のため、不動産を売却し現金化
②不動産の種類・用途を換える
例:駐車場にアパートを新築し、収益性を高める
③不動産の立地を換える
例:都心の物件に買い換え、流動性と資産価値アップ
この他にも、物理的ではなく権利関係の変換というパターンもあります。例えば、底地や持ち分共有の土地を他の権利者から買い取って単独所有権にしておく、共同売却で現金化して持ち分で按分するなどです。相続を見据えた整理として進めておくと良いでしょう。
不動産は、流動性が低く長期活用が前提の資産。賃貸市場や周辺環境の変化、家族の状況や他に保有している資産をふまえ、長期的な目線で有効な選択肢を考える必要があります。定期的に資産のポートフォリオを見直し、適切な組み合わせに調整しましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年2月時点のものです。
取材・文/木村 元紀

















