「室内はきれいなのに空室が埋まらない」外壁が古いだけで4割が入居を断念——調査で判明した”見た目コスト”の正体
賃貸物件選びでは、間取りや家賃に目が向きがちですが、外壁や外観の状態も入居判断に大きく影響しています。株式会社NEXERと株式会社アケボノが共同で実施した今回の調査では、約3割が外壁の汚れやひび割れを気にした経験があり、そのうち約4割が好条件でも入居を見送っています。さらに、外壁から室内や管理状態まで想像する傾向も明らかになりました。この記事では、こうした入居者心理をもとに、賃貸住宅経営における外壁管理の重要性と具体的な改善ポイントを分かりやすく解説します。
「ポータルサイトの写真」ですでに評価されている
今回の調査によると、28.0%が外壁の汚れやひび割れ、色褪せが気になった経験があると回答しています。一見すると少数に見えますが、これは「目についた瞬間に印象が決まる」層が一定数存在することを意味します。
画像引用元の調査データ:「賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する意識調査」|株式会社NEXER、株式会社アケボノ
賃貸物件は比較検討される中で選ばれるため、第一印象で候補から外れることは大きな機会損失につながります。外壁は内見前、あるいは検索段階の写真でも確認されるため、いわば“入口の評価ポイント”です。
特にポータルサイトでは一覧表示で比較されるため、外観の印象が弱い物件はそれだけで不利になります。さらに、写真では分かりにくい細かな劣化でも、現地で一度気になるとマイナス印象が強く残る傾向があります。
賃貸経営においては、室内設備と同様に外観の状態も「選ばれる条件の一部」として捉え、早い段階での改善判断が重要になります。
外壁劣化は室内・管理への不信に直結
外壁が気になった人のうち、52.4%が「室内も古そう・傷んでいそう」と感じたと回答しています。また、「管理が行き届いていない」(41.7%)、「安全性に不安」(36.9%)といった声も多く見られました。
画像引用元の調査データ:「賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する意識調査」|株式会社NEXER、株式会社アケボノ
つまり、外壁の状態は単なる見た目の問題ではなく、「管理品質」や「建物全体の信頼性」を判断する材料になっています。実際のコメントでも「メンテナンスする気がなさそう」「耐震性が不安」といった声があり、外観から建物の中身まで連想されていることが分かります。
さらに一度こうした印象を持たれると、内見時に多少良い点があっても評価を覆すのは難しくなります。
賃貸経営では、こうした“見た目からの連想”を軽視できません。外壁の劣化は、室内の状態に関係なく評価を下げる要因となり、結果として成約率に直接影響します。
家賃を下げても埋まらない物件に共通する「見えない原因」
外壁が気になった人のうち、39.3%が「条件が良くても入居を見送った」と回答しています。これは家賃や立地、間取りといった基本条件を上回る影響力を持つことを示しています。
画像引用元の調査データ:「賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する意識調査」|株式会社NEXER、株式会社アケボノ
実際の声でも「ヒビが多く耐震性が不安」「衛生的に気になる」「管理がずさんそう」といった理由が挙がっています。ここで重要なのは、判断の基準が“見た目そのもの”ではなく、“そこから感じる不安”にある点です。
つまり、外壁の劣化は心理的なハードルを生み、最終的な意思決定を止めてしまうということ。また、同じ条件の物件が複数ある場合、わずかな不安でも比較の中で不利に働きやすくなります。
賃貸経営では、家賃や立地だけでは解消できない『不安要素』をなくすことが、成約への近道であり、外壁の状態はその代表的な要素の一つと言えます。
塗り替え一つで「長期入居者」が生まれる理由
画像引用元の調査データ:「賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する意識調査」|株式会社NEXER、株式会社アケボノ
入居後に外壁が塗り替えられた場合、「満足度が上がる」(28.0%)、「印象が良くなる」(25.3%)といったポジティブな回答が多く見られました。理由としては「清潔感が増す」「気分が良くなる」「きちんと管理されていると感じる」などが挙げられています。
外壁の改善は単なる見た目の向上にとどまらず、入居者の安心感や信頼感にも直結します。特に長期入居を促すうえでは、こうした心理的満足度の積み重ねが重要になります。また、建物全体の印象が良くなることで、入居者が知人に物件を紹介しやすくなるなど、副次的な効果も期待できます。
賃貸経営においては、空室対策だけでなく、既存入居者の満足度を維持する・向上させるという観点からも、外壁メンテナンスの価値を見直す必要があります。
家賃上昇への不安が示す経営判断の難しさ
一方で、「家賃が上がりそうで不安」(18.0%)という声も一定数あります。「きれいになるのは嬉しいが負担が増えるのでは」という心理です。これはオーナーにとって重要な示唆です。
外壁修繕は価値向上につながる一方で、そのコストをどう回収するかは慎重な判断が求められます。短期的な家賃アップだけを狙うと、既存入居者の退去リスクにつながる可能性もあります。特に周辺相場との乖離が大きい場合は、募集時の競争力にも影響します。
賃貸経営では、修繕の目的を「家賃上昇」だけでなく、「空室期間の短縮」や「長期入居の維持」といった複数の視点で捉えることが重要です。オーナーには、収益全体で判断する視点が重要です。
今すぐできる:外壁メンテナンスの判断基準と優先順位
画像引用元の調査データ:「賃貸物件選びの際の外壁・外観の老朽化に関する意識調査」|株式会社NEXER、株式会社アケボノ
外壁メンテナンスは費用がかかるため後回しにされがちですが、今回の調査結果を見ると、それが空室や機会損失につながるリスクがあることが分かります。
外観の印象ひとつで候補から外れる可能性がある以上、外壁は単なる維持費ではなく“選ばれるための投資”と考えるべきです。とくに競争が激しいエリアでは、第一印象の差がそのまま成約率に影響します。
また、定期的に手入れされている物件は管理状態の良さが伝わりやすく、長期的な資産価値の維持にもつながります。加えて、外観が整っている物件は募集時の写真映えも良くなり、問い合わせ数の増加にも寄与します。
賃貸経営では、コスト削減だけでなく「どこに投資すべきか」を見極める視点がより重要となってきます。
【外壁メンテナンスの目安】
一般的に外壁塗装の寿命は10〜15年といわれています。次のサインが出たら早めの点検を検討しましょう。
• チョーキング(外壁を触ると白い粉がつく)
• 目地(コーキング)のひび割れや剥がれ
• 雨だれによる黒ずみ汚れ
• 塗膜の膨れや剥離
空室1ヶ月分の損失を考えると、早期のメンテナンス投資が長期的な収益を守ります。
まとめ
今回の調査から明らかになったのは、外壁や外観が入居判断に与える影響の大きさです。
約3割が外壁の劣化を気にし、そのうち約4割に至っては条件が良くても入居を見送っているという結果は、外観が単なる付加要素ではなく、意思決定に直結する要因であることを示しています。また、外壁の状態から室内や管理体制、安全性まで連想される傾向もあり、「見た目以上の意味」を持っていることが分かります。
一方で、外壁の改善は満足度の向上や印象改善につながり、長期入居にも寄与する可能性があります。これらのことからも賃貸経営においては、外壁をコストとして捉えるのではなく、収益や稼働率に影響する要素として位置づけることが重要です。
今後は、設備や条件の改善だけでなく、外観の維持・向上を含めた総合的な価値づくりが求められます。第一印象で選ばれるかどうかが、その後の収益を大きく左右する時代に入っています。加えて、修繕のタイミングや投資判断を後ろ倒しにすること自体が、結果的に空室期間の長期化や賃料下落を招くリスクにもなります。
「劣化してから直す」のではなく、「印象が落ちる前に手を打つ」という予防的な視点が、安定経営のカギを握ると言えるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年4月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















