実務のプロ&オーナーに学ぶ!成功する大規模修繕のカギ~大規模修繕の進め方・会社の選び方・費用の考え方を一挙解説~

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公開日:2026年4月22日
更新日:2026年4月22日
実務のプロ&オーナーに学ぶ!成功する大規模修繕のカギ~大規模修繕の進め方・会社の選び方・費用の考え方を一挙解説~1

大規模修繕の必要性は感じつつ、具体的に何から手を付けていいのか迷っているオーナーもいれば、すでに実施しながら、満足できずに後悔しているオーナーもいます。実務に長けた修繕のプロとオーナーの体験をもとに、大規模修繕の現実的な取り組み方と失敗しないための必須知識を解説します。

取材・監修

株式会社小菅不動産 代表取締役 小菅 貴春さん
株式会社小菅不動産 執行役員 大石 昭夫さん
オーナーズ・スタイル「大家さんの相談窓口」 山田 睦
取材協力:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会

建物性能の維持・保全、長期活用に大切なプロセス

実務のプロ&オーナーに学ぶ!成功する大規模修繕のカギ~大規模修繕の進め方・会社の選び方・費用の考え方を一挙解説~2

オーナーズ・スタイルが実施したアンケート調査「大家さん白書2025」によると、読者オーナーが感じている「悩みや不安」のトップは定番の「空室」(39.5%)。意外にも、2番目に付けているのが「大規模修繕」(31.5%)です。

また保有している賃貸住宅の平均築年数は30年以上が半数を超えます。保有物件が古くても、ベテランのオーナーとは限らず、大家歴は6割近くが10年以内と意外に短くなっています。築年の古い物件を相続で受け継いだ2代目オーナーか、不動産投資として購入した人が少なくないと推定されます。

そのせいか、自身で大規模修繕を1回も実施していないオーナーが3分の1に達します。「修繕に取り組まなければ……」と、大規模修繕の必要性を自覚しながらも、どう始めていいかわからず、行動できていないのではないでしょうか。

大規模修繕とは、建物本体を守る外壁や屋根防水などの外装材が、築年とともに次第に劣化していくのを防ぎ、防水性や耐久性などの機能を回復させるために行われるもの。建物の性能の維持・保全につながるだけでなく、安定して長期活用していくための重要なプロセスです。表面的には目立った損傷がなくても、一定の周期で予防的に行うことが推奨されています。

「現実には、何か問題が起きるまでは、なるべく支出を抑えたいと考えてしまうものですよね。雨漏りが発生したから、壊れたから直すなど、場当たり的に動くケースが多く見られます。計画的に実施しているオーナーは少ない傾向です」(山田)

編集部に寄せられた読者オーナーの生の声をピックアップ!「大規模修繕」成功に導く4つのカギ

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カギ1「実施の判断」
●遅らせた結果、傷みがひどく費用がかさんだ。
もっと早くやっていれば……。
●実施を考えていた矢先に、雨漏りが発生。
入居者の仮住まいが必要で、余計な出費に。

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カギ2「会社選び・契約」
●遅らせた結果、傷みがひどく費用がかさんだ。
もっと早くやっていれば……。
●実施を考えていた矢先に、雨漏りが発生。
入居者の仮住まいが必要で、余計な出費に。

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カギ3「工事の内容」
●塗料や外壁タイルの知識がなく、施工会社の言いなりに。
過剰工事だったかも……。
●予算を先に伝えたところ「本来行う工事が抜けていた」
ことが後で発覚。相談した大家仲間の指摘で気づいた。

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カギ4「見積もり・資金準備」
●比較せずに1社に依頼。金額の妥当性に確信が持てず、
複数社から相見積もりを取れば良かった……。
●資金不足でローンを利用したが金利が高い。
ちゃんと積み立てるべきだった。

負のスパイラルから脱却。正しい知識を得て好循環に

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大規模修繕を怠ると、劣化が進んで雨漏りが起こって退去の引き金になったり、新規募集の反響が鈍くなったり、空室が長引き収益悪化につながります。さらに、コスト面でも余計な費用負担がかかってしまうことがあります。

「鉄骨階段のサビを放置しすぎて鉄部の腐食が進行し、塗装だけでなく溶接からやり直したため、数百万もかかったケースがありました。タイルが落下して入居者や通行人にケガをさせてしまうと、損害賠償に発展するなど、深刻な事態も招きかねません。費用と安全の両面から悪い影響が出てしまいます」(小菅さん)

結果として「建物劣化の進行→競争力の低下→家賃値下げ→修繕費の確保困難→より一層の老朽化」という負のスパイラルに陥ると、警告を発する専門家は少なくありません。大規模修繕は、こうした悪循環を断ち切り、競争力を保ち、収益物件としての価値を守り、長期安定経営に役立ちます。

一方で、すでに大規模修繕を実施した経験のあるオーナーからは「もっと相場や工法の勉強をしておけばよかった。費用も割高だった」「あまり準備をせずに、きちんと会社を選ばずに頼んでしまった。品質やアフターケアに不満が残った」など、後悔する声も少なくありません。

大規模修繕は数百万円から数千万円におよぶ多額の費用が掛かる大事業です。ゆえに、安易な選択や他人任せの判断は避け、オーナー自身が主体的に取り組む姿勢が欠かせません。満足度の高い大規模修繕をかなえるために、会社選びや工事の内容、費用にかかわる知識を身につけておくといいでしょう。次ページから、具体的に必要な知識やノウハウを解説します。

大規模修繕の流れと良い会社の見極め方

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失敗しないために、大規模修繕はどんな順番で進めればいいのでしょか。主なダンドリと、信頼できるパートナー選びのポイントを紹介します。

経営方針で変わる判断基準。修繕周期も状況で異なる

施工会社に接触する前にオーナー自身の経営方針を明確にしておきましょう。大規模修繕の内容は、オーナーの目的によって変わります。

「次世代に引き継ぎ賃貸経営を続けてほしい」のか「一定期間の運営をした後に、売却や建て替えをしたい」のか。それによって「物件をあと何年もたせるか」の判断が変わり、必要な工事の内容やグレードも決まってきます。

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例えば、次世代まで賃貸経営を続けるなら、資産価値を高める本格的な修繕を目指します。昨今の建築費や解体費の高騰を受けて、建て替えるよりもコストを抑えられ、継続的な安定収入を得られる可能性が高くなります。また収支バランスを整えることを目的にするケースも。

「修繕費は経費化でき、所得の圧縮にもなります」(小菅さん)。

売却予定なら修繕をしない選択肢もあるが、小菅さんは言います。

「買い主から、その分の指し値が入るのが一般的です。最小限でも修繕して売る方が、オーナーにメリットはあります」

こうした方針を立てる上で知っておきたいのが、図表1に示した一般的な修繕周期と費用の目安です。これはあくまでも1つのモデルとしての試算なので参考程度に考えてください。

実際には、建物の置かれている環境、構造や建材のグレード、管理の状況によっても差が出てきます。大規模修繕は11~15年、鉄部塗装は5~10年周期を目安に、物件の状況確認と時期の見極めに取り掛かりましょう。

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具体的な会社選びや契約・工事内容のチェックに入る前に、オーナーが知っておきたい知識の要点を図表2にまとめました。

図表2 知っておきたい修繕の主な知識
● 外壁塗装の材料
樹脂塗料の種類によって「ウレタン→シリコン→フッ素」の順番でグレード・価格が上がり、耐久性が増す
● 屋上防水の工法
ウレタン塗膜防水、シート防水が代表的。場所や目的に応じて使い分けられる
*アスファルト防水は主に新築時の工法
● 仮設足場の種類
単管足場、クサビ緊結式足場、枠組み足場などの種類があり、規模に応じて設計。養生も異なる。無足場工法はスペースが取りにくい場所向け

 

具体的な内容はインターネットで調べたり、賃貸経営セミナーやイベントでも知識が得られます。「賃貸住宅メンテナンス主任者」などの資格取得を通じて学習してもいいでしょう。

複数の会社に相談、建物診断や現場見学で比較

大規模修繕に取り組む時期が来たら、依頼先となる会社について調べておきましょう。

図表3 修繕工事の依頼先の種類
● 管理会社
日常管理で建物状態を把握し、入居者目線での提案も期待できる。グループ会社または協力会社が施工
● 建築会社
新築時の施工会社は自社建物に精通し、特許工法や純正部材の使用で安心。工事費用は高めの傾向
● 大規模修繕専門会社
大規模修繕を専門に請け負う会社。幅広い構造の修繕ノウハウがあり、特殊な塗料・工法を持つ会社も

 

管理会社・建築会社・修繕専門会社など、特徴や強みは様々で(図表3)、比較することで違いが見えてきます。気になる会社を3~4社ほどピックアップしたら、次に必要なのが建物の劣化診断です。

「施工会社が無料で行う建物の劣化診断で、物件の現在の状況を把握することが大切です。ただし建物診断依頼=発注する会社の決定ではありません」(山田)

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施工会社は見積もりを作る前提として、建物の劣化状態と補修箇所の数量を測るために、図面確認と現地での簡易調査を行います。そして補修の必要性や緊急度に応じて修繕計画を提案する。オーナーは修繕計画を受けて、外壁の浮きや防水の破断など、性能保全や安全性に関わる指摘があれば、先送りせず工事の実施を検討しましょう。迷う場合は複数社の意見で判断してください。

会社を選ぶポイントは次にまとまっている「抑えておきたい、良い会社の見極め方」の通り。建物診断の丁寧さや見積もり書の精度も有力な判断材料になるほか、施工中の現場見学も有効です。

「保有物件に類似した施工現場を選んで見学します。一番見るべき点は、現場の整理状態と職人の動き。乱雑だったり対応が悪いと、入居者にもマイナスです。現場監督の常駐・巡回頻度や、施主の窓口を誰が担うのかも確認しましょう。会社を訪問すれば雰囲気や規模感を実感できます」(山田)

抑えておきたい、良い会社の見極め方

①見積もり作成の姿勢

建物診断の時間のかけ方や丁寧さをチェック。劣化の緊急度がわかりやすく整理された報告書が◎。見積もりの根拠を質問した際に、明確に回答してくれる会社が誠実。

②修繕計画・工程表

安全・防犯面に配慮した計画書になっているか確認。オーナーの点検日を工程に組み込んでくれるスケジュールが望ましい。工程ごとの点検や報告体制も、信頼性を測るポイント。

③会社の信頼性・作業員の対応

所有物件に近い規模・構造の施工実績が多い会社は安心感があります。現場見学で管理体制や対応力を見よう。建設業免許のほか、一級建築士や施工管理技士などの在籍も判断材料に。

④契約・保証・アフターケア

アフター保証の充実度も分かれ目。塗料などの材料メーカーの保証に加えて、施工会社による工事保証の両方揃うことが重要です。施工後の定期点検の有無は、会社によって対応が異なりますが、保証が切れる直前に定期点検を行うかどうかもポイント。

契約書・施工報告書(図面・仕様書)、保証書の内容を聞いて、サンプルを見せてもらうと良いでしょう。工事会社と塗料メーカーの保証範囲や年数、施工後の定期点検の有無などを確認しましょう。

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「例えば10年保証なら、その期限が来る前の9年目に点検して、問題があれば保証の範囲内で修理をしてくれるところは良心的です。また、施工後に絶対にやってはいけないのが、雨漏りなどが起きた場合に、工事保証を付けた施工会社にすぐ連絡がつかないからといって、第三者に応急処置を頼んでしまうこと。他社が手を加えた時点で保証が無効になってしまうので注意が必要です」(山田)

工事現場に立ち会い、自分の目でチェック

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施工の質が確保されているかどうかは、工事中の現場に足を運んでチェックすることが大切。写真で見るのと現場で実物を見るのとでは印象が違います。タイミングは次の4~5回が目安です。

外壁は、①足場を掛けて高圧洗浄した後、②コーキングの打ち替え・ひび割れなどの補修後、③塗装仕上げ後、④足場解体前の施工抜けなどの最終確認。これに加えて⑤番目として、屋上や屋根の防水工事の前後も挙げられる。 施主チェック日を工程表に組み込んでいる会社は信頼度が高まります。

「見積もり書通りに施工されているかを確認する方法の一つとして、塗料の『出荷証明書』を提示してくれる会社は信頼性が高い。また外壁塗装は3度塗りが基本で、下塗りの後の中塗り・上塗りでは、塗り残しを防ぐために色を分けるのが一般的です」(大石さん)

見積もり書の見方と費用・資金の考え方

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修繕費や資金繰りなどお金にかかわる項⽬を中心に詳しく解説します。見積もり内容を精査する手順、修繕資金の準備について知っておきましょう。

「一式」表記に注意!見積もりチェックのコツ

見積もり書のチェックポイントは、一般に「一式」表示ではなく、工事項目ごとに「数量」と「単価」、「仕様」が個別に記載されている方が望ましいです。仕様とは、使う材料の種類や工法などの明細です。材料については、品番や商品名が出ていれば、メーカーのホームページで用途や特徴をつかむことが可能だ。グレードや価格相場も調べられます。

「注意したいのは、インターネットに出ている単価は、あくまでも材料費のみの金額であること。施工会社の見積もり書に記載されている金額は、職人の工賃も含めた材工合計の金額です。単純に比較できません」(山田)

工事費用の是非を判断するには、複数の会社から相見積もりを取って、見比べるのがおすすめです。

「見積もり書の様式は会社によって書き方がバラバラで、数量も仕様も異なります。重要なのは条件を揃えること。まず1社を決めて、そこに見積もり書を作成してもらいます。

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次に、工事項目と仕様(材料・施工方法)・数量を残して、単価を消した統一仕様書を作り、他の会社に同じ様式で見積もりを書いてもらいましょう。そうすれば横並びで比べることができます。施工会社独自のより良い提案がある場合は、別途出してもらって検討しましょう」(山田)

見積もり書をチェックする上で、もう1つ注意点があります。実は、見積もりの金額は、確定した工事費ではないことです。

修繕工事では、最初に図面や目視で行う簡易診断の想定よりも、実際には下地の傷みがひどかったり劣化の範囲が広かったりして、工事費が膨らむケースが珍しくありません。これは契約後に足場を組んで現場の全面検査をしないと精確にはつかめません。そのため、見積もり書と実際の施工した分の差分から生じる費用の過不足をどのように精算するかを契約時に決めておくのです。これを「実数精算」といいます。

そこで見積もりの際に、「どのくらい追加の可能性があるか」を質問して、具体的な説明があるかをチェック。通常は、5~10%ぐらいの予備費を見ておけばいいでしょう。当初の金額が低すぎる見積もりは要注意で、実数精算で大幅に膨らんだ金額を請求されるリスクが。見積もりに不明な点があれば質問し、曖昧さのない回答をしてくれる会社が誠実です。

内容を決め、費用を抑える「優先順位」の考え方

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大規模修繕では、提示された工事内容が「本当に必要か」を見極めることが重要。費用を抑えるために初めから予算を提示するという意見もあるが、リスクが大きくなります。

「建物の劣化診断から判断した、必要な工事をすべて網羅したフルスペックの見積もりを出してもらった後に、取捨選択するほうが賢明です。事前に予算で縛ってしまうと、その枠に合わせて、本来必要な工事も落としてしまうおそれもあります。

例えば、総額を抑えるために、建物の耐久性に影響しない集合ポストの交換、敷地外周のフェンスの塗り替えなどを除外したとします。部屋探しの内見者は『外壁がきれいなのに、ポストの古さが目立つ』と第一印象が悪くなる可能性が高い。ここは節約せずに施工しておかないと、空室が悪化して収益ダウンになりかねません」(小菅さん)

フルスペックから取捨選択する方法の1つが、優先順位による判断です。大規模修繕には、多くの項目がありますが、必ずしもすべてを同時に行う必要はありません。

前述のように、見積もり前の建物調査レポートには、修繕の緊急度がランクで示されていることが多くなっています(図表4)。これをベースに予算に合わせて施工する順番を決める。Aは即実行、Bは3年後に実施、Cは5~7年後までに検討などという具合です。それでも予算が厳しい場合は、仕様グレードを下げる手もあります。

図表4 優先順位の考え方

診断結果から「緊急度」を基準に、どこを優先して直すべきかを部位ごとに考えましょう。

緊急度 A 高い
(早急に修繕)

※ 事故・雨漏りのリスク
B 中程度
(早めに対応)

※劣化が近い、進行しやすい
C 低い
(タイミングを見て)
屋上 ●防⽔層の破断、雨漏り
●勾配不良による排⽔不全
●防⽔トップコートの劣化
●軽微なシート浮き
●軽度の汚れ
外壁 ●ひび割れ(構造クラック)
●タイル浮き・剥落リスク
●塗膜劣化(チョーキング)
●軽微なひび
●軽度の汚れ
●美観の劣化
鉄部 ●サビ・腐食進行、穴あき ●初期サビ
●塗装のはがれ
●美観目的の塗り替え
共用部 ●滑り・破損など危険箇所
●天井落下の恐れ
●廊下・階段の防⽔・長尺シート
●手すりのガタつき
●サイン更新
●意匠リニューアル

 

「同じ部位の外壁塗装の材料にも松竹梅のグレードがあります。最低限の品質を維持したうえで、目的に応じてグレードを調整するとよいでしょう」(小菅さん)

このほか費用を抑えるには、足場が必要な工事はまとめる、繁忙期を避けるなどの工夫もあります(図表5)。しかし、安全対策は削るべきではありません。

「足場や養生が必要な工法などは、ガードマンの有無や人数が作業者の安全だけでなく、入居者や近隣住民にも関わります」(山田)

図表5 費用を抑える工夫
☑ 相見積もりを取る
 複数社を比較し、仕様と価格を見極める
☑ 優先順位をつけて判断
 緊急度に応じてランクを分け、無理なく選択する
☑ 足場工事は“ まとめる”
 足場を一度で済ませ、重複する費用を抑える
☑ 繁忙期を避ける
 職人が確保しやすく、価格調整もしやすい時期に行う
☑ 適正なグレードを選ぶ
 建物に合う仕様を選び、過剰な工事を防ぐ
☑ 工期を無駄なく進める
 段取りの良い会社を選び、日数と諸経費を削減する

 

賢く備える、修繕資金の作り方

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①毎月の積み立て

将来必ず発生する大規模修繕に備え、毎月コツコツ積み立てておく方法。資金繰りが安定し、借り入れを抑えながら必要な工事を適切な時期に実施できる。ただし、積み立て金は経費にならないため、税引き後の貯蓄になる点に注意。

②金融機関からの借り入れ

手元資金では足りない、または自己資金を大きく減らさずに修繕したい場合はリフォームローンなどが選択肢に。金融機関のほか修繕会社が提携する信販会社なども。家賃で返済可能か、金利上昇に無理なく対応できるか、慎重な資金計画も必要。

③保険の活用

生命保険(変額生命保険)は積み立て金を運用して増やすことも目指せる。解約返戻金を修繕費用に充てる。

④共済の活用

小規模企業共済(個人)や倒産防止共済(セーフティ共済)(法人)は積み立て金を経費にできる。解約した資金を修繕費用に。

準備不足は経営を圧迫。資金調達を柔軟に

大規模修繕は一度にまとまった資金が必要になります。準備不足のまま進めると、経営を圧迫する原因にも。複数の収益物件があれば、ある程度キャッシュフローは回りやすいですが、1~2棟しか保有していないオーナーほど資金繰りが難しくなる傾向にあり、念入りな資金調達対策が必要になります。

一般には、分譲マンションのように毎月少しずつ積み立てることが望ましいとされている。他にも積み立て型の保険や共済で用意する方法がある。しかし、緊急度の高い工事が差し迫っていて、手持ち資金が乏しい場合は、金融機関からの借り入れを検討しよう。

「規模の大きなマンションでは、外壁塗装に数千万円かかるケースもあります。その場合は、手持ち資金があっても借り入れで賄うケースは少なくありません。キャッシュを温存してローンを組み、収支の平準化を図るオーナーもいます。税金対策も含めて、経営戦略の中で検討することが大切です」(山田)

今回紹介した知識やノウハウを最大限活かすことが、成功のカギとなります。大規模修繕は未来への投資と考え、一歩を踏み出しましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年3月1日時点のものです。

取材・文/木村 元紀 イラスト/平井 きわ

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