2026年4月施行・改正区分所有法で何が変わる?賃貸オーナーが「得をする物件」「損をする物件」を見分ける判断軸
2026年4月、約23年ぶりとなる区分所有法の大規模改正が施行されます。健美家株式会社のアンケートでは約36%が改正を「知らない」と回答した一方、認知者の約86%がポジティブ評価、約7割が投資意向の増加を示しました。ただし恩恵は全物件に均等ではなく、管理状態や立地によって資産価値の差はさらに広がる見込みです。賃貸住宅オーナーが今押さえるべき判断軸を解説します。
約36%が「知らない」改正区分所有法。情報の差が投資判断の差になる

画像引用元:「区分所有法改正に対する不動産投資家アンケート」|健美家株式会社
アンケートでは、改正を「知っている」が64.3%、「知らない」が35.7%と、約4割が未認知という結果でした。
この数字は単なる知識差にとどまらず、投資判断の精度に直結する“情報格差”を示しています。制度の理解が不十分なまま物件選定を行う層が一定数存在するということは、市場に価格の歪みが残る可能性があるということでもあります。
例えば、再生余地のある築古物件が過小評価されていたり、逆に管理不全リスクの高い物件が適切に織り込まれていなかったりするケースも想定されます。
賃貸住宅オーナーにとっては、改正内容をいち早く理解し、意思決定の変化がもたらす影響を織り込むことで、仕入れ段階から優位性を確保できる局面にあると言えます。知らない投資家がいる今こそ、情報で差をつけられる局面なのです。
投資家の約86%がポジティブ評価。ただし「全物件に均等な恩恵」は幻想

画像引用元:「区分所有法改正に対する不動産投資家アンケート」|健美家株式会社
改正を認知している投資家のうち、85.9%が「ポジティブ」または「ややポジティブ」と回答しています。
この理由には、「スラム化・管理不全リスクの低減」が43.5%で最多、「資産価値の向上」が35.3%、「大規模修繕の円滑化」が34.1%といった具体的な期待が背景にあります。

画像引用元:「区分所有法改正に対する不動産投資家アンケート」|健美家株式会社
つまり投資家は、これまで最大の不確実性であった“管理の停滞リスク”が制度的に改善される点を評価しているのです。
賃貸住宅オーナーにとって重要なのは、この期待が「全物件に均等に作用するわけではない」という点。実際には、管理体制が整っている物件ほど恩恵を受けやすく、反対に管理が機能していない物件は改善が進まず、相対的に評価を落とす可能性があるということです。ポジティブ評価の裏側には、“選別の強化”という現実があることを理解する必要があります。
投資意向が増す約7割。市場活性化の裏にある「選別の加速」を読む

画像引用元:「区分所有法改正に対する不動産投資家アンケート」|健美家株式会社
改正を認知している投資家のうち、66.7%が「投資意向が増す」と回答しており、資金流入の可能性が高まっています。
この動きは一見すると市場全体の押し上げ要因に見えますが、実態はより選別的な資金配分になると考えられます。なぜなら、制度によって再生の選択肢が広がることで、投資家は「どの物件が再生可能か」をより厳しく見極めるようになるためです。結果として、再生余地のある物件には資金が集中し、そうでない物件は敬遠される傾向が強まるでしょう。
賃貸住宅オーナーにとっては、単に市場が活性化するという捉え方ではなく、「どのポジションに自分の物件が置かれるか」を意識することが重要です。市場参加者の増加は競争の激化でもあり、選ばれる物件づくりがこれまで以上に求められます。
「立地」を最重視する投資家が約5割。出口から逆算した物件選びへ

画像引用元:「区分所有法改正に対する不動産投資家アンケート」|健美家株式会社
投資行動の変化として最も多かったのが、「立地重視での購入」が47.5%という結果です。
この数値は、改正によって出口戦略の現実性が高まったことを示唆しています。建て替えや一括売却が現実的な選択肢となることで、「最終的に価値が発揮される立地かどうか」がこれまで以上に重要になります。
再開発需要のあるエリアや流動性の高い地域では、合意形成が整えば大きな価値向上が見込める一方、需要の弱いエリアでは制度があっても実行に至らない可能性が高まります。
賃貸住宅オーナーは、利回りだけでなく、将来の売却・再生を見据えた立地評価を行う必要があります。立地は変えられない要素であるからこそ、利回りよりも“出口で価値が出る立地か”が最も重要な指標になります。
築古物件を検討する投資家が約37%に。「安いから」ではなく「再生できるから」買う時代へ
「築古物件の購入を検討する」が37.4%に達している点も注目に値します。これは、改正によって建て替えやリノベーションのハードルが下がり、築古物件に再生価値が見出され始めていることを示しています。
ただし、すべての築古物件が魅力的になるわけではありません。重要なのは、再生が現実的に可能かどうかです。所有者構成が複雑で合意形成が困難な物件や、立地的に再開発の余地がない物件は、依然としてリスクが高いままです。
賃貸住宅オーナーは、築年数だけで判断するのではなく、「再生の可能性」「権利関係」「管理状況」といった複合的な視点で評価する必要があります。築古は“安いから買う”ではなく、“再生できるから買う”へと発想の転換が必要です。
多数決で建て替えが決まるリスクも。オーナー間対立と出口設計の実務対応
一方で、ネガティブな声として挙がるのが「オーナー間の対立リスク」です。
多数決による意思決定が進むほど、利害の異なる所有者同士の衝突は表面化しやすくなります。加えて、建て替えや売却に伴う費用負担、転居を巡る調整なども、現実的なハードルとして無視できません。
こうした背景を踏まえると、これからの賃貸住宅オーナーには「出口から逆算する発想」が欠かせません。家賃収入だけに依存する従来型の投資ではなく、将来どのように売却・再生できるかまで見据えた判断が、取得時点から求められます。
具体的には、管理規約の内容確認や総会議事録のチェック、さらには所有者構成の把握などを通じて、将来的な合意形成のしやすさを見極めることが重要になります。
例えば、建て替えが実現可能な環境か、一括売却に進みやすい条件が整っているか、あるいは長期保有による安定運用が現実的か―。複数の出口シナリオを想定しておく必要があります。
制度改正によって選択肢は広がりますが、その分、判断の巧拙が収益に直結する局面でもあります。事前調査の深さそのものが、結果を左右する時代に入ったと言えるでしょう。
まとめ
今回の区分所有法改正とアンケート結果を総合的に見ると、区分マンション投資は新たな局面に入ったことが明らかです。
約4割が改正を認知していない一方で、認知者の約86%がポジティブに評価し、約7割が投資意向の増加を示していることから、市場には期待と資金流入の動きが生まれています。
しかし、その恩恵は均等ではなく、「管理の質」「立地」「再生の可能性」によって大きく分かれる構造になります。特に、立地重視が約5割、築古検討が約37%という結果は、投資判断がインカム中心から出口戦略重視へとシフトしていることを示しています。
賃貸住宅オーナーにとっては、単純に利回りだけを比較するのではなく、将来の選択肢と実現の可能性を見据えた判断が不可欠です。制度の変化はリスクであると同時に機会でもありますが、その差を分けるのは情報の理解と実務への対応力です。
今後は「安い物件を買う」ではなく、「将来動かせる物件を選ぶ」ことが、賃貸経営の成否を分ける決定的なポイントとなるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年3月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















