4人に1人が年齢を理由に「入居拒否の経験あり」。高齢者の最新賃貸事情を解説
統計局によると、2022年9月推計で日本の人口の29.1%が65歳以上。高齢者の「住宅確保要配慮者」の増加はいまや社会問題になりつつあります。実際に65歳以上の高齢者が賃貸物件を探す際、どのような弊害が生まれているのでしょうか。シニア向けのお部屋探しを支援する不動産会社(株)R65不動産が、高齢者の賃貸事情を明らかにすることを目的に実態調査を行いました。その内容を抜粋してご紹介します。
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65歳を超えた高齢者の賃貸お部屋探し、3人に1人が経験あり
まず、「65歳になってから賃貸住宅を借りるために探した経験がある」と35.7%と高齢者が回答しています。
「ある」と回答した高齢者がお部屋探しをした理由の上位3つは、以下の通りとなっています。
1位 | 家賃の低い物件に住み替えるため | 36.6% |
2位 | 適切な広さの間取りに住み替えるため | 32.2% |
3位 | 子どもの近所に住み替えるため | 10.8% |
住み替えの理由は家賃・間取り・場所を変えたいというものでした。背景には、子どもの独立や同居人の死去などがあると思われます。ちなみに「賃貸住宅のオーナーや不動産会社から立ち退きを促されたため」という人も7.6%いました。
収入による差はなし?4人に1人の高齢者が「年齢が理由の入居拒否」を経験
「年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験のある高齢者」は全体の26.8%。そのうち、「5回以上断られた経験のある方」が11.9%います。
年齢を理由とした入居拒否を経験している割合は関東(東京・神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城)が多めで、32.2%。全体の1.2倍となります。
2021年6月の調査との比較では、「年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験のある高齢者」は3.4%増え、「5回以上断られた経験のある高齢者」は1.5%減っています。
収入別にみると、年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られた経験のある高齢者のなかでも、「年収200万円未満」の方が27.7%、「年収200万円以上」の方が26.4%で、収入による差はほとんどありませんでした。
R65不動産では、2022年9月に不動産会社を対象にした実態調査を行っているのですが、そこでも28.3%の不動産会社が「直近1年間で、年齢を理由に高齢者の入居を断ったことがある」と回答。今回の結果と対応したものとなっています。
同調査では、4社に1社(25.7%)が高齢者の入居可能な賃貸住宅が「全くない(0%)」状態であることも明らかになりました。
高齢者が抱く賃貸住宅への不安の上位3つは「老朽化」「孤独死」「立ち退き」
R65不動産の調査では、賃貸住宅に入居してから、高齢者が不安に感じている点についても聞いています。上位は以下の通りでした。
1位 | 住宅設備の老朽化による災害 | 21.8% |
2位 | 孤独死のおそれ | 14.0% |
3位 | 物件の建て壊しによる立ち退き | 11.2% |
4位 | 認知症による周囲への影響 | 9.4% |
5位 | 看取り人の不在 | 7.2% |
高齢者の心理としては、孤独死よりも災害への恐れが強いようです。しかし、53.0%の高齢者は「特にない」と回答しています。
老朽化による災害に不安を感じている人が多くいましたが、高齢者が実際に住んでいる賃貸住宅の築年数はどのくらいなのでしょうか。
これについては過半数である52.4%の高齢者が「築30年以上」の賃貸住宅に住んでおり、うち26.8%の高齢者が「築40年以上」、「築50年以上」が11.2%となりました。関東では「築30年以上」と答えた高齢者が57.8%、そのうち「築50年以上」の賃貸住宅に住んでいる高齢者が14.7%と、さらに住宅事情が厳しくなります。
いまの住まいに今後はどの程度住み続けたいと考えているかについては、「わからない」が35.2%で最多となりました。それ以外では「終の住処にしたい」と回答した高齢者が最も多く19.6%。永く住みたいという人が多いようです。
調査では、『高齢者は現在の住まいに「長く居住したい」と思う傾向が強い一方で、本人の要望に関わらず「築年数の古い物件」が提供される場合が多いため、老朽化物件の建て壊しなどを理由に長く住み続けられない場合が多いのではないか』と分析しています。
「物件を見せてももらえなかった」という高齢者の声も
最後にお部屋探しで最も苦労したエピソードを聞いたところ、次のようなコメントが見られました。
・家賃が結構高い地域だが、同じところで働き続けるには、近くに引越すしかなかった。 65歳を超え、障害者でもある事を正直に伝えると、息子が契約すると言っても、物件を見せてももらえず、断られた。 |
・探していた当時は働いていたが、それでも年齢だけで部屋を紹介してもらえなかった。銀行の残高証明を出すといっても、貸してくれなかったことがつらかった。 |
・親、親戚などが死亡したため、保証人を見つけるのに苦労した。 |
・プライベート優先の間取りやオールフローリングや浴室、洗面、洗濯機置き場など使い勝手のいい物件が少なかった。 |
今回の調査では、多くの高齢者が部屋を見つけるのに苦労し、見つけたとしても老朽化による災害や立ち退きを不安に感じている現状が明らかになりました。
しかしその一方で、不動産会社対象の調査では、高齢者の入居後に「実際にトラブルがあった」と答える不動産会社が過半数。高齢者の孤独死による事故物件化や家賃滞納などを懸念する声は根強くあります。
これらの問題を解決するには、貸す側、借りる側双方への国の支援が必要です。すでに住宅セーフティネット制度として民間の空き家を利用した住宅の確保や住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度などがありますが、今後さらに拡充が望まれます。
※この記事内の情報は2023年7月19日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
高齢者の受け入れ方にはメリットも!解説記事はこちら
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