「地籍調査」とは?調査内容やかかる費用、地籍不明で起こりうるトラブルを解説
土地の境界や面積などといった基本的な情報である「地籍」。”土地の戸籍”とも呼ばれるこの地籍が、正確に調べた情報となっているのは全国の土地(国有林、河川等は除く)の半分強に過ぎないのはご存じでしょうか?そもそも地籍調査が進んでいないと、どんな困ったことが起こるのか。詳しく解説します。
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地籍とは?調査しないと土地売買や相続時のトラブルに
土地登記簿上の区画のことを「筆」といいますが、この一筆ごとの土地についての、所有者、地番、地目、面積などといったあらゆる情報が地籍です。地籍調査では、土地の境界と面積を測量して求め、都道府県の認証等を経たのち、地籍図を登記所に登録します。
地籍が明らかになっていないと起こる困りごと
地籍調査を行うことで、土地の面積や境界など登記の情報が正確なものになります。そのため、土地境界をめぐるトラブルを未然に防ぐことができるのはもちろん、土地取引や土地資産の保全がスムーズになります。
もし地籍調査が行われていない場合には、「土地を購入してから、改めて測ってみたら登記簿の面積と違う」などといったトラブルや、「そもそも相続した土地の正確な位置が分からない」という困りごとが起きる可能性があります。
また、万が一災害が発生したとき、災害によって土地の境界を示す杭や塀が無くなってしまう恐れも。もし地籍調査を実施していない場合は、災害復旧にあたって土地の境界を確認してから進める必要があります。そのため道路や上下水道等ライフライン施設の復旧、住宅の再建等が遅れてしまう原因になります。
現在の土地台帳は140年以上前の情報である可能性も
「土地の境界や所有者なんて、登記簿を見れば分かるのでは?」―そう思われるかもしれません。しかし、地籍調査自体は「国土調査法」が制定された昭和26(1951)年から行われており、70年以上経った現在でも、全国における進捗は2022年度の時点で全体の52%です。
つまり、全国の登記所に備え付けられている図面のうち、地籍調査等による測量に基づいて作成された図面は、全体の半数程度に過ぎないのです。
現在の地籍調査の前に国を挙げて行われた大規模な調査は、明治政府による地租改正(ちそかいせい)までさかのぼります。
地租改正の実施は1873~1880年。当時は測量技術も未熟で、素人の土地所有者等が測量を行っていました。現在、登記所に備え付けられている半分近くの地図は、この140年前の情報がもとになっている可能性があるのです。
地籍調査の「優先実施地域」は進捗率が80%
昭和26(1951)年から始められた地籍調査がなかなか進まなかったため、昭和37(1962)年に「国土調査促進特別措置法」が制定。それに基づく「国土調査事業十箇年計画」により地籍調査が強力に推進されることとなりました。
現在は令和2(2020)年5月に閣議決定された「第7次国土調査事業十箇年計画」に基づき、15,000㎢の計画で地籍調査が実施されています。
さらに、新たに「優先実施地域での進捗率」を設定。「優先実施地域」とは、地籍が一定程度明らかになっている地域や、土地取引が行われる可能性が低い地域を全体から除いた「境界画定の必要性が高い地域」です。
この進捗率が、令和4(2022)年度の実績では「優先実施地域」で80%、全国の「地籍調査対象地域」で52%となりました。
地籍の調査方法は?
では実際に、現在の地籍調査はどんな手順で行われるのでしょうか?市町村等の職員が直接実施する場合と、作業を民間会社等へ委託する場合がありますが、一般的には以下のような流れとなります。
①市町村で地籍調査の実施計画を作成 ⇩ ②調査実施地域の住民への説明会 ⇩ ③土地の境界の確認 (一筆地調査) ⇩ ④確認した境界の測量 (地籍測量) ⇩ ⑤地籍簿を作成 ⇩ ⑥地籍調査の結果を確認 (20日間の閲覧) ⇩ ⑦地籍調査の成果を登記所へ送付 |
調査方法も、高精度な空中写真や航空レーザ測量データ※等が活用できる環境が整いつつあり、測量が困難な山村部での地籍調査に活用されています。
※航空機に搭載したレーザスキャナから地上にレーザ光を照射し、地上から反射するレーザ光との時間差より得られる地上までの距離と、GNSS測量機、IMU(慣性計測装置)から得られる航空機の位置情報より、地上の標高や地形の形状を調べる測量(国土地理院HPより引用)
地籍の調査費用は国と自治体が負担。各地域に相談窓口も設置
気になる地籍調査の調査費用ですが、費用は市町村、都道府県、国が分担するため、土地の所有者などといった個人が負担することはありません。
もし、売買を検討している土地や相続予定の土地の地籍が気になったら、地籍調査状況マップで、その土地で地籍調査が行われているのかどうかを確認してみましょう。また、登記所に備え付けられている図面が「地籍図」となっていれば、地籍調査が行われた土地であることが分かります。
その他、地籍調査の計画予定などについては各都道府県に相談窓口が設けられていますので、そちらに問い合わせることもできます。興味のある方はぜひ確認してみてください。
※この記事内の情報は2023年8月2日時点のものです。
取材・文/丸石 綾野
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