不動産取引の電子化はどこまで進んだ?ニーズは?書類のオンライン化や電子サインについての調査が公表
不動産取引での電子契約が全面解禁されて1年以上。長らくアナログといわれてきた不動産業界でも、書類や契約業務の電子化が進みつつあります。この流れは、家を買ったり借りたりしているユーザーにはどのようにとらえられているのでしょうか。アットホーム(株)が、2021年8月以降に物件を購入もしくは賃貸物件を新規で契約・更新・解約した人を対象に調査を行いました。
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契約書類のやり取り、売買は対面が多数だが賃貸の状況は?
契約書類について、メールやLINEなどでもやり取りが可能になりましたが、購入者の85.8%が「対面(手渡し)」で行っています。今後の希望についても76.0%が「対面(手渡し)」を希望。不動産は大きな買い物であるため、対面が安心と考える人が多いようです。
賃貸についても、実際のやりとりは契約時72.4%、解約時49.8%で「対面(手渡し)」がトップです。今後の希望についても契約時61.8%、解約時41.5%で対面を希望している人が多数派。「しっかりと解約できたのが目で見て分かって良かった」と、対面の確実性はまだまだ支持されているようです。
また、「間違いがあってもすぐに訂正できるし、会話をしながら物件のことも確認できた(契約時)」、「物件の周辺環境のことをついでに相談できた(更新時)」など、事務的なやり取り以外でコミュニケーションがはかれることを評価する意見もありました。
賃貸更新は郵送がトップ。賃貸では一定数がオンラインを希望
しかし同じ賃貸でも、更新時については少し異なり、実施・希望ともに「郵送」がトップでした。しかし、「契約書がきちんと届くか不安だった」という声も。LINEは「手軽だったが、うっかり友人に送ってしまった」という人がいました。手軽すぎるがゆえの誤送信もあるようです。
さらに、対面が多数派ではあるものの、メール・LINEなどを合わせたオンラインでの対応は、実施よりも希望が契約時9.0ポイント、更新時13.9ポイント、解約時15.4ポイント高くなっていた点に注目です(希望%-実施%の差分)。実際は対面や郵送で行っているやりとりについても、賃貸においてはオンラインを望む人が一定数いることが分かります。
メールは「予約をしなくていいので自分のタイミングで手続きできた(更新時)」、「電話するより気楽だった(解約時)」という声や、不動産会社のホームページからの手続きについても「信頼できた(更新時)」、「電話でのみ解約可能と勘違いしており正月休みは対応してくれないと思っていたが、スムーズに解約できた」と好意的な声が挙がっていました。
書類への電子サインは賃貸で希望者増加の傾向
契約書類への署名・捺印の方法について、購入者の95.6%が「手書きで署名・捺印」を実施。今後についても9割以上が「手書きで署名・捺印」を希望しています。「購入したことを実感できた」と感慨にふける人もみられました。
賃貸契約・更新・解約においても、現状は「手書きでの署名・捺印」がそれぞれ8割以上。しかしその一方で、「電子サイン」への希望は契約時11.7ポイント、更新時18.6ポイント、解約時17.4ポイントも高くなっています。
電子サインには「郵送などの手間がなく、簡単に手早くできる点が良かった(契約時)」、「時間に関係なく更新できて、ハンコを用意する手間がなかった(更新時)」、「ペーパーレスで簡易に手続きができて、書類が増えないことが良かった(更新時)」などの好意的な意見も多くありました。
「手続きのためだけに足を運ぶ」のが最も面倒との回答
アンケートでは、不動産会社とのやり取りで「大変だったこと」「面倒だったと感じたこと」も聞いています。購入・賃貸の各段階においてすべて、トップは「手続きのためだけに不動産会社に足を運ぶこと」でした。
賃貸更新では2位以下が「書類に手書きで記入すること」「契約に関する書類のやり取り」で、書類へのわずらわしさに関する項目が目立っていました。電子サインの希望者も32.1%と最も多かったことから、まずはここから電子化が進みそうです。
賃貸契約と解約の3位には「営業時間内に不動産会社に連絡すること」が入っており、異動や引越しなど、ただでさえ忙しいことが多いタイミングで、時間を合わせることのわずらわしさが表れていました。
更新と解約では特にオンライン化のニーズが高まる
手続きの中でオンライン化してほしい項目としては、賃貸更新・賃貸解約の約3割が「書類等の確認」「署名・捺印」「書類の返送」のオンライン化を希望。解約時については「不動産会社への連絡」「事前の書類の受け取り」についても約3割となっており、最後はムダのない事務的なやり取りを望む人が多いことが分かります。
フリーコメントの電子サインにおいて「スマートフォンが無いと手続きできないのが難点(解約時)」という意見はあったものの、いまやスマートフォンの世帯保有率は9割近く※。時間や場所に縛られないオンラインでの手続きは、今後ますます増えていくと考えられます。
※この記事内の情報は2023年8月16日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
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