「不動産クラウドファンディング」とは?メリット・デメリット、始めるまでの流れを解説
1万円という少額から不動産投資ができる「不動産クラウドファンディング」。2022年度の総出資額は約604億円(前年度比約2.61倍)と市場を拡大しつつあることから、国交省から事業者に向けた実務手引書が公表されました。不動産クラウドファンディングとはどのような仕組みで、どれくらいの利益やリスクがあるのでしょうか。基礎知識をまとめました。
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不動産クラウドファンディングの基礎知識
不動産クラウドファンディングとは
事業などを行うために個人から少額の資金を募ることをクラウドファンディングといいますが、不動産クラウドファンディングとは資金の用途が不動産の運用に特化したものを指します。
会社にもよりますが、不動産クラウドファンディングは最低投資額1万円と少額から始められることができ、基本的にはスマートフォンだけで完結できる手軽さで注目を集めています。
不動産クラウドファンディングは、投資家から集めた資金を賃貸物件や商業ビル、リゾート開発などに投資するものです。
投資家から集めた資金は、「動産特定共同事業法」で認可された事業者が運営します。不動産事業で出た利益は、事業者によって再び投資家に分配される仕組みです。
不動産クラウドファンディングの認可事業者はWEB上で投資家から資金を募り、集まった資金で不動産を購入します。事業者は不動産を運営・売却し、その運営成績に応じて分配金を得ることができます。
不動産クラウドファンディングと他の投資手段との違い
不動産クラウドファンディングと混同されやすいものに、同じ少額不動産投資といわれるREIT(不動産投資信託)や、クラウドファンディングの一種であるソーシャルレンディング、現物不動産投資があります。それぞれの特徴と、不動産クラウドファンディングとの違いを解説します。
「Real Estate Investment Trust」の略称であるREIT(リート)。資金を集めて不動産投資を行う点や、少額から始められる点は不動産クラウドファンディングと同じですが、REITはあくまで投資信託の一種です。
そのため、不動産の運用だけでなく選定もプロが行い、投資家が具体的に指定することはできません。また、金融商品であるため社会情勢や為替の影響を受け、不動産の価格変動よりも短いスパンで価格が変動すること、すぐに現金化できることも特徴です。
また、不動産クラウドファンディングには「優先劣後方式」という元本割れのリスクを軽減する仕組みがありますが、REITにはありません。「優先劣後方式」についてはこの後の項で詳しく解説します。
ソーシャルレンディングもクラウドファンディングの一種ですが、集めた資金の使い道が違います。不動産クラウドファンディングが不動産の購入に充てられるのに対し、ソーシャルレンディングは貸付に充てられます。そのため、ソーシャルレンディングは融資・貸付型クラウドファンディングともいわれます。
融資先の企業が不動産を購入することもありますが、お金の使い道は不動産に限りません。自分の関心のある事業などを選んで投資することができます。
ソーシャルレンディングの分配金は利息分から支払われ、貸付期間中に利息が変動することはありません。しかし、元本保証はなく早期返還される、つまり得られる利息が少なくなってしまうリスクがあります。
現物不動産投資は、マンションやアパートなどの収益物件を購入し、家賃収入を得たり、売却して売却益を得たりするものです。購入資金はローンを組むこともできます。ローンによって元手を増やすことで利幅を高める「レバレッジ効果」が期待できます。
投資家が物件を選び、投資額も多額で年単位での長期投資が前提となっています。物件の管理は管理会社に任せることはできますが、そのための管理委託費や修繕費などのコストがかかります。不動産クラウドファンディングより大規模な、事業レベルの投資であるといえるでしょう。
不動産クラウドファンディングのメリットとリスク
不動産クラウドファンディングのメリット
不動産クラウドファンディングには様々なメリットがあります。どのようなものなのでしょうか。
利回りとは投資額に対する収益の割合で、「1年間の予定配当金額÷投資金額」で計算されます。利回りは事業者によって異なりますが、LIFULLの調査によると、2022年の平均利回りは5.8%でした。中には利回りは10%を超える案件も存在します。
短期間で一攫千金が狙えるとはいえないものの、預貯金よりもずっと利回りが高く、不動産クラウドファンディングは低コストで安定した資産運用ができる方法といえるでしょう。
不動産クラウドファンディングは1万円から投資が可能であるため、資金がない場合や、副業などでも気軽に始められるというメリットがあります。
不動産クラウドファンディングは、運用期間中の物件の管理はすべて運営会社(事業者)が行い、出資者に手間や費用はかかりません。投資したい物件を選んで資金を払えば、あとは運用期間が終了して分配金が支払われるまで何もする必要がありません。
管理会社に委託できるとはいえ、空室リスクを避けるための入居者選定や家賃収入の管理、修繕などの出費が必要な現物不動産に比べると、不動産クラウドファンディングは手間無しの投資といえます。
不動産クラウドファンディングのリスクとその対策
投資である限りリスクが伴い、それを避けることが安定収益につながるのは、不動産クラウドファンディングも同じです。不動産クラウドファンディングにはどのようなリスクと、とるべき対策法があるのでしょうか。
元本割れとは、運用期間終了時に戻ってくるお金が投資額より下回ってしまうことを指し、不動産クラウドファンディングにもそのリスクが存在します。しかし、多数の案件に分散投資することで、リスクを低くすることが可能です。
また、「REIT(不動産投資信託)との違い」の項でも触れましたが、「優先劣後方式」という回避策があります。この方式は、「優先出資者」である投資家と「劣後出資者」である事業者の出資金を分けて扱う仕組みで、利益が出た場合は投資家の方に優先して利益を得ることができます。
逆に、損失が出た場合は事業者から損失を負担するため、投資家の元本が守られる安全性が高いことになります。ただし、劣後出資率を超えた損失は投資家の元本にも影響します。
不動産投資クラウドファンディングの分配金は、不動産の運用や売却によって生まれた利益から支払われます。しかし、運用成績が悪く利益が出なければ分配金が得られないリスクもあります。
例えば、賃貸物件の場合は入居者が見つからず家賃収入を得られない、ホテルなどであればコロナ禍のような要因で観光客が激減してしまうなどの事態がその原因として考えられます。
不動産クラウドファンディングは、一つのファンド(案件)に投資できる金額が限られています。人気の高いファンドには応募が殺到し、投資すらできないというケースもあります。
応募方式には先着式と抽選式があり、先着式の場合は募集開始直後から争奪戦が始まり、クリック合戦ですぐに終了となってしまうことも。抽選式の場合は運次第ですが、やはり案件によっては倍率が上がり、当選するのが難しくなります
募集されたらすぐに応募ができるように、クラウドファンディングサービスの会員登録を先に済ませておくことや、様々な案件に応募できるように複数のサービスに登録をしておくことなどが対策となります。
実際の利用方法
不動産クラウドファンディングへの投資手順
それでは、実際に不動産クラウドファンディングを始めるにあたり、どのような流れで行えば良いのでしょうか。まずはクラウドファンディングサービスへの会員登録からスタートします。
まずは不動産投資クラウドファンディングを運営する事業者のサイトにアクセスし、アカウント登録をします。メールアドレスなどの必要事項を入力します。
続いては投資家登録。氏名や口座登録、本人確認できる証明書をアップロードし、審査が行われます。審査が問題なければ募集中の案件に申し込むことができます。
申し込み後、抽選式の場合は当選者に契約書や出資金の入金案内などがメールで届きます。入金が済んだら運用スタート。運用状況は、事業者のサイトやアプリなどにログインすることで確認ができます。ほとんどの場合、すべての手続きがスマートフォンで可能です。
クラウドファンディングサービス選びのポイント
「不動産クラウドファンディング」で検索すると、多くの事業者によるサービスサイトが表示されます。事業者を選ぶときは、取扱い案件の数や種類、情報量が多いサービスから選ぶようにしましょう。
また、大前提として、国に不動産特定共同事業の許可を受けている会社を選びましょう。許可を得るためには、資本金や純資産、業務管理者の設置や電子取引業務の体制整備など、様々な要件を満たしている必要があります。以下のリンクを参考にしてみてください。
不動産クラウドファンディングの大きな要素に、運用期間と利回りがあります。利回りが高くても運用期間が短いと得られる配当は少なくなります。
利回りは1年あたりで表示されるため、例えば「想定利回り10%」の案件に100万円投資したとしても、もし運用期間が6カ月だとしたら利益は50,000円となります。
案件(ファンド)選びのポイント
募集案件の画面には、プロジェクト名や想定利回り、運用期間、募集金額、運用期間などが表示されています。一つひとつチェックし、リスクとリターンを想定しましょう。
前述のように、不動産クラウドファンディングでは運用期間が短い案件は利益も少なくなります。ただし、途中解約に対応しておらず、運用期間が終了するまでは出資金が引き出せない案件も多い点には注意しましょう。
不動産クラウドファンディングで得られる利益(配当)には、「キャピタルゲイン型」と「インカムゲイン型」があります。キャピタルゲインは不動産の売却益で、運用期間は比較的短めです。
インカムゲインは入居者からの賃貸料収入などを収益源とするもので、長期で運用されるものが多く、景気に左右されにくいという特徴があります。
案件は「●●プロジェクト」や「●●一棟ビル」などと場所の名前が冠されたものが多く、エリアの判断基準となります。また、募集金額によってその案件の規模が分かります。
都心の案件は価格が高いため利回りが低くなっていることが多いですが、その分、需要が安定しており、リスクも小さくなります。このあたりは現物不動産投資と共通していますね。
不動産クラウドファンディングにおける出資割合とは、劣後出資の割合のことを指します。「優先劣後方式」における事業者の劣後出資割合が高いほど、投資家の損失リスクは低くなります。
一般的には劣後出資の割合は20%前後であることが多く、これは20%の損失までは投資家の元本が守られることを意味します。
案件の詳細をクリックすると、開示されている情報ページを見ることができます。物件の概要からエリアの特徴、投資のポイントといったマーケット情報の他、想定できるリスクや配当ポリシーなどが表示されています。
もし自分が現物不動産投資家だった場合、その物件を買うかどうかというくらい厳しい視点で、情報の量と質がしっかり担保されているかを確認するようにしましょう。
不動産クラウドファンディングの投資先は不動産ですが、お金は事業者に払うことになります。そのため、万が一トラブルが発生したときに、迅速に対応してくれる事業者を選ぶようにしましょう。
国交省の手引書にも募集開始直後のアクセス集中によるトラブルや、クーリングオフについてなどが示されています。
不動産クラウドファンディングの業界動向と将来性
不動産クラウドファンディング市場規模の動向
2017年に不動産特定共同事業法が改正されたことで、不動産クラウドファンディングに関するルールが整備されました。そこから事業者の参入が相次ぎ、市場規模は年々拡大しています。
国交省「不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングの件数・出資額の推移」によると、2022年度の出資額は前年度の2.61倍にもなっています。
不動産クラウドファンディングで流通している物件の動向
不動産クラウドファンディングサービスのサイトを見ると、様々な案件がアップされています。2023年現在の物件の動向はどのようになっているのでしょうか。
2023年11月開業の「麻布台ヒルズ」などの再開発で注目される麻布・赤坂・六本木エリアをはじめとして、都心のマンション価格は高値を更新し続けています。
三菱不動産リアルティ(株)の調査によると、都心主要エリアのプレミアムマンション平均成約坪単価は817万円で、2006年の集計開始時点のおよそ1.88倍。引き続き堅調に推移すると思われます。
ただし、都心のマンション案件は人気も高いため投資申込が集中し、早いものでは数十秒で募集が終了してしまうことも増えているようです。
海外不動産を投資対象にした案件も増加しています。
モンゴルやカザフスタンといった新興国のオフィスビルやマンションに投資できるサービスもあります。新興国の不動産は利回りが高めで、日本の不動産投資クラウドファンディングサービスを利用すれば、手続き等に英語も一切不要です。
しかし、為替差額の影響を受けて実際の運用利回りがマイナスになってしまうリスクや、入金・出勤時に手数料がかかることもあるため、注意が必要です。
不動産クラウドファンディングの将来性
今回、国交省が公開した手引書に「クラウドファンディングの活用促進を図ることを目指す」とあるように、不動産クラウドファンディングの整備は国にとっても重要な施策であることが分かります。
投資市場としての成長はもちろん、官民が連携して地方創生や社会問題の改善などに不動産クラウドファンディングを活用すること。それが今後、より不動産クラウドファンディング発展の可能性につながるはずです。
不動産クラウドファンディングは新規参入企業数、募集総額ともにこの5年で急速に増加しています。2022年度の募集総額は、前年度比2倍以上となる604.3億円となりました。
しかし、2023年の日本の収益不動産の資産規模は約289.5兆円(前回比+13.9兆円)あり、そのほんの一部です。まだまだ今後の発展が見込める投資分野であるといえます。
老朽化した施設の改修や空き家再生、高齢化社会に対応したまちづくりなどのための資金調達方法としても不動産クラウドファンディングは注目されています。
投資家としては、利益の追求だけでなく、投資活動がより良いまちづくりや社会貢献につながることになります。
WEB上で手続きが完結し少額からはじめられる手軽さ、目的に共感した不動産に投資ができるという魅力を併せ持った不動産クラウドファンディング。今後ますます、裾野を広げていくと考えられます。
※この記事内の情報は2023年10月24日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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