賃貸住宅のプロパンガスは料金が高い?都市ガスとの違いやメリット・デメリットを解説
賃貸経営をはじめるときには、賃貸物件のオーナーが使用するガスの種類やガス会社を選択します。ガスの種類は大きく都市ガスとプロパンガスに分けられ、それぞれ仕組みや料金設定が異なります。今回はプロパンガスを中心に、導入のメリットやデメリット、都市ガスとの違いを比較していきます。
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賃貸住宅で使うガスは主に2種類
冒頭でも触れた通り、賃貸住宅で使用するガスはプロパンガスと都市ガスがあり、どちらを使うかは基本的には賃貸オーナーが決めます。ただし、都市ガスが使えない地域もあり、その場合はプロパンガス一択となります。
それぞれのガスの特徴はどのようなものなのでしょうか。見ていきましょう。
プロパン(LP)ガス
プロパンガスとは、LPガスとも呼ばれるもので、液化石油ガス(LPG)の一種です。プロパンとブタンの混合物で通常は気体ですが、家庭で使用する際には液化して運搬、貯蔵されます。屋外に設置された設備にボンベを接続し、使用する時にはガス状態に変化させます。
空気より重いという特徴から、ガス感知器は床から30cm以内に設置することになっています。
都市ガス
都市ガスは、メタンを主成分とする天然ガスや海外から輸入している液化天然ガス(LNG)によって構成され、地下のガス管を通して供給されます。ガス管の埋設工事が必要なため、工事がされていない場所には供給することができません。都市ガスの普及率は全国平均で約46%※となっています。
また、都市ガスには空気より軽いという特徴があるため、ガス感知器は天井から30cm以内に設置します。
賃貸住宅でプロパンガスが多いのはなぜ?
「賃貸住宅ではプロパンガスを採用している物件が多い」とよく耳にしますが、それはなぜなのでしょうか。次のような理由があります。
まず物理的な理由で、都市ガスが普及していないエリアではプロパンガスしか使えません。ガス管の設置工事は人口が多い都市部から始められるため、東京や大阪では8割の普及率があるものの、地方ではなかなか普及が進まず、10%未満の県もあります。
都市ガスが普及しているエリアでも、プロパンガスを使用している賃貸物件はあります。理由のひとつは導入費用。都市ガスが配管工事費として10〜15万円程度の初期費用がかかるのに比べて、プロパンガスはガス供給会社との契約にともない、ガス供給会社が初期費用を負担してくれる場合が多いのです。
また、導入にあたって給湯器やエアコン、インターホンの無料貸与や給湯器の無償交換などのサービスを付けてくれる会社も。賃貸オーナーにとっては経費が節約できるため、メリットとなります。
これらは「無償貸与契約」といわれるプロパンガス業界特有の商習慣ですが、現在問題視されており、法規制が検討中です。規制の具体的な内容については後述していますので、そちらをご確認ください。
プロパンガスを選んだ場合のメリット・デメリット
プロパンガスを選ぶメリット・デメリットについてもう少し見てみましょう。実際にガスを使用する入居者にもメリット・デメリットがあり、賃貸経営に大きく関わってきます。
プロパンガスを選ぶメリット
プロパンガスと都市ガスの大きな違いは、ガスの成分と供給方法にあります。そのためプロパンガスには、都市ガスにはないメリットも存在します。
プロパンガスは、都市ガスよりも2倍以上、燃焼時の発熱量が高いのが特徴です。そのため、火力の強さが必要な溶接工場やレストランなどに採用されている場合が多いようです。
ただし、一般的な家庭用コンロには鍋底の温度が250℃以上になると火力を自動調節するセンサーが付いています。そのため、日常の料理などでは火力の強さを生かせることは少ないかもしれません。
プロパンガスはボンベに入れて供給されるため、地震などの災害時の復旧が早いというメリットがあります。都市ガスの場合は、災害によってガス管がダメージを受けると供給がストップし、復旧工事や点検に時間がかかってしまうのです。過去の大地震の例では、東日本大震災ではガスの復旧に最大54日かかりました※。
プロパンガスを選ぶデメリット
プロパンガスのデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。主なデメリットには以下の3点があります。
ガス管を通して供給される都市ガスと違い、プロパンガスは定期的なガスボンベの運搬が必要です。その人件費がかかる分、ガス料金が高くなる傾向があります。
(一社)プロパンガス料金消費者協会の試算によると、東京都のプロパンガス平均料金は8,128円であるのに対し、都市ガスは4,303円となっており、倍近くの差があることが分かります※。
都市ガスはもともと、電気や水道などの公共インフラと同じ「総括原価方式」で料金が設定されていました。2017年に都市ガスでも料金が自由化されましたが、最初から自由化されていたプロパンガスの方が、事業者ごとの差が大きくなっています。
ガスの原価に運搬費などを上乗せしてガス会社が独自に料金を決めるため、運搬が不便なエリアや、他に競合が存在せず一社が独占しているようなエリアでは特に、ガス料金が高くなることがあります。
プロパンガスを使うことで高くなる月々のガス料金を負担するのは入居者です。プロパンガスしか選択肢がないのであればまだしも、都市ガスも使えるエリア内では、都市ガスが使える競合物件の方が、入居者に選ばれやすくなります。
多くの賃貸ポータルサイトでは「都市ガス」を条件に設定することができます。ここにチェックを入れると、プロパンガスの物件は部屋探しの候補にも挙がらなくなってしまいます。
また、プロパンガス会社が初期費用負担やオーナーへの無料貸与の費用をガス料金に上乗せしている場合も多く、ガス料金が高すぎると感じた入居者からのクレームになるケースもあり得ます。
プロパンガスは都市ガスより高い?その理由と値下げの方法
プロパンガス料金が都市ガス料金より高くなりがちなことについて述べてきましたが、料金を安くする方法はあるのでしょうか。
賃貸のプロパンガス代が高い理由① 入居者がガス会社を選べないから
ガス会社を選ぶのは入居者ではなく、賃貸オーナーです。月々のガス料金だけでなく、賃貸オーナーは初期投資も含めたトータルのコストでガス会社を決定するため、ガス料金を支払う入居者と必ずしも利害が一致するとは限りません。
消費者が直接、会社を比較検討することで競争が起こり、その結果として料金が安くなる、ということが起こりにくいのです。
賃貸のプロパンガス代が高い理由② 設備費用が上乗せされているから
前項で触れた通り、プロパンガス会社が負担している初期費用や設備の無料貸与サービス分をガス料金に加算している場合があります。入居者にとっては当然、月々の負担は重くなり、あまりに不当に高いと感じた場合はクレームにつながります。
プロパンガスでも契約会社の変更で値下げができる可能性あり
ガス料金についてクレームが入った場合、プロパンガスの契約会社を変更するのもひとつの選択肢です。ガス料金は事業者ごとに独自に設定されているため、もっと安い料金の会社もあるかもしれません。ただし、今のガス会社との解約については、導入費用の無料貸与契約により、違約金が発生する場合があることに注意しましょう。
また、賃貸住宅におけるガス会社との契約は全室一括のため、アパート全体を切り換えることになります。しかし、長い目で見て、違約金を払ってでもガス会社を変更した方がメリットの大きい場合も。冷静に比較検討しましょう。ちなみにガス会社を変更する場合は、入居者に通知を出すことが法律で義務付けられています。
プロパンガスから都市ガスに変更できる?費用や手順は?
もし可能であれば、現在プロパンガスを利用している物件を都市ガスに変えたい、という賃貸オーナーもいるでしょう。プロパンガスから都市ガスに変えることでどのようなメリットがあるのか、費用や注意点などをまとめました。
プロパンガスから都市ガスに変更するメリット
月々のガス料金が安く済むことで、入居者に選ばれやすいのが最大のメリットといえます。お部屋探しのときも、ポータルサイトなどで都市ガスを条件に設定できるため、光熱費を気にする人の目にとまりやすくなります。
都市ガスへ変更する費用
まず、ガス管の引き込みに10〜15万円程度がかかります。これはあくまで目安で、導管から距離が離れている場合にはさらに高くなる場合もあります。
さらに、各戸の配管やメーターの取り替え費用が一戸当たり10万円程度、給湯器やガスコンロなども互換性がないため、入れ替え費用が5万円/戸程度がかかります。
さらに、場合によってはプロパンガスの契約によって負担してもらっていた初期費用の精算や違約金が発生することがありますので、契約内容をしっかり確認しましょう。
プロパンガスから都市ガスへの変更手続き方法
1. 都市ガス会社を選定
⇩
2. 工事費用、機器交換費用等の見積り
⇩
3. 都市ガス会社の決定、契約
⇩
4. 現在契約しているプロパンガス会社との契約解除
⇩
5. 工事日程調整(工事期間中はガスが使えないため、入居者との調整も必要)
⇩
6. 工事終了後、ガス供給スタート
物件の前面道路にガス管がある場合でも、申し込みから切り替えまでには1〜2カ月程度かかります。引き込み後の敷地内への配管、ガス機器の交換等は1日で済む場合が多いようです。
プロパンガスから都市ガスへ変更する際の注意点
前項の変更手続き「4. 工事日程調整」についてですが、ガスの切り替えのための工事期間中は、ガスが使えません。そのため、入居者とのスケジュール調整や、事前に入居者への説明が必要です。
月々のガス料金が安くなることなど入居者のメリットをしっかり説明し、納得してもらうようにしましょう。さらに、都市ガスに変えたことで募集条件も変わりますので、仲介会社にその旨を連絡しましょう。
ガス会社選びのポイント
賃貸物件のガス会社を選ぶときは、経営目線と入居者メリットの両面から検討する必要があります。具体的には以下のようなポイントを確認しましょう。
ガス料金
プロパンガスに加えて、都市ガスでも2017年から料金の自由化が始まりました。月々の光熱費が妥当なものかは必ずチェックするようにしましょう。
キャンペーンなどで一時的に安くなるものの、割引期間終了後は普段より高くなってしまう場合もありますので、目先の割引に惑わされないようにします。切り替えの場合は、前後の料金シミュレーションを必ず行いましょう。
無償貸与サービスの内容と条件・期間など
プロパンガス会社のなかには、無償貸与サービスを提供している会社があります。ガス設備の初期費用や様々な設備を無償にしてくれる、賃貸オーナーにとってはありがたいサービスですが、注意点もあります。
「賃貸のプロパンガス代が高い理由」の項でもお伝えしたとおり、入居者が払う月々のガス料金にそれらが上乗せされている場合です。また、無償貸与分のコストを回収するための契約期間が10〜15年設けられており、途中解約する場合は費用を清算する旨、取り決められている場合もあります。
契約前に、しっかりサービスの内容を検討するようにしましょう。
メンテナンスなどのアフターフォロー
ガス会社とは、普段はそこまで頻繁に連絡を取ることがないかもしれませんが、もし何かあった時のためにサポートがしっかりしている会社を選びましょう。担当者や相談窓口の有無を確認し、何かあった時にすぐに連絡がとれるかどうかを判断します。
まとめ:2025年から制度改正。賃貸オーナーは要チェック
経済産業省は2023年11月に、ガス利用と直接関係がない設備費をガス料金に上乗せすることを2025年から禁止する方針を示しました。
2025年からは、賃貸住宅の新規契約や契約更新において、エアコンやインターホンなどガスに関係のない設備費の貸与サービス分を入居者に負担させた事業者は罰則の対象となります。既存の契約については、料金の内訳表示が求められます。
そのため、現在プロパンガスの物件を経営している賃貸オーナーは、今後の負担分をどのようにするかの検討を迫られているといえます。
家賃への反映(値上げ)や都市ガス・オール電化への切り替えなどの選択肢が考えられますが、いずれにしてもキャッシュフローの見直しが必要となります。プロパンガスの物件をお持ちの賃貸オーナーは、今から準備を始めておきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関して本記事は、2024年2月21日時点の情報をもとに制作しています。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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