多くの人が見落とす“窓の防火性能”─災害対策の盲点とは?窓ガラスで変わる住まいの安全性と価値

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公開日:2025年9月9日
更新日:2025年9月9日
多くの人が見落とす“窓の防火性能”─災害対策の盲点とは?窓ガラスで変わる住まいの安全性と価値1

今後30年の間に70%の確率で発生すると言われている「首都直下地震」の危機が注目されている中、日本電気硝子(株)が全国の20代〜60代の男女600名を対象に防災に関する意識調査を実施しました。多くの人が不安を抱きつつも、内閣府が想定した災害の詳細は意外と多くの人に知られていないという事実が明らかに。同調査で言及している、災害対策に有効な窓ガラスに関する詳細とあわせて解説します。

70%以上の人が災害に不安感。首都直下地震に関する意外な認識も明らかに

今回の調査によれば、「災害に遭う可能性について、どの程度不安を感じていますか?」と尋ねたところ、7割以上(70.2%)が、「非常に不安を感じている」「やや不安を感じている」と回答。

とりわけ地震に対する意識が90.3%と強く、これは日本が世界でも有数の地震多発国であり、南海トラフ巨大地震や首都直下地震といった大規模な地震の発生がたびたび指摘されているためでしょう。

内閣府が発表した想定によれば、「首都直下地震」が発生した場合、その死者の約7割が火災によるもので、建物の倒壊や津波よりも、都市部においては火災が一番の脅威になると言います。

多くの人が見落とす“窓の防火性能”─災害対策の盲点とは?窓ガラスで変わる住まいの安全性と価値2

これは、首都圏の密集市街地に木造住宅が多く、道路幅も狭いエリアが存在するため、一度火災が発生すると同時多発的に延焼し、消防活動も困難になることが大きな理由です。

また、関東大震災が発生したときのようなお昼時や、冬の時期に地震が発生すれば、暖房器具や調理中の火が原因で火災が拡大する可能性も高まります。意外なのは今回の調査において、なんと8割以上(84.8%)が火災によって被害が広がるという想定を「知らなかった」もしくは「聞いたことはあったが、詳しくは知らなかった」と回答したこと。

「火災」が震災時における最も深刻なリスクであるにもかかわらず、それが周知されていないことが明らかとなりました。もしこの想定を意外と感じたなら、地震災害への対策や意識といったものの認識を改めなければならないかもしれません。

備蓄だけでは不十分?逃げ遅れるリスクも

家庭で実際に行っている災害への備えについて、食料等の備蓄(39.7%)や、家具の補強や固定(28.3%)などが挙げられました。しかしその一方で、具体的な「防火対策」を行っていると回答した人は、わずかに5.8%でした。

加えて3割以上(35.0%)が「災害対策を特にしていない」と回答。災害への意識の高さに反して、実際の対策はとても十分とは言えない事実が明らかになりました。

食料の備蓄や家具の補強で安心しきっていたら、火災から逃げ遅れたとならないよう、 日頃から「すぐに逃げる行動」を意識し、備えることが重要です。

窓が火災を広げる?知らなかった人が75%

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開放感や視界の確保の面で欠かせない「窓」ですが、火災時には「炎や煙の通り道」となってしまうことも。コップに熱湯を注いだ時と同じ原理で高温によってガラスが割れると、外気が一気に流入し、炎が勢いを増す「バックドラフト」や、煙が一気に広がる「フラッシュオーバー」を引き起こす危険があります。

特に木造住宅や高層マンションでは、窓の割れが延焼や煙の拡散を加速させ、避難経路を奪う要因となります。今回の調査によると、窓が割れることによる火災の拡大リスクについて「知らなかった」もしくは「聞いたことはあったが、詳しく知らなかった」と答えた人は全体の7割超(75.5%)にのぼりました。

住まい選びで約半数が防火対策を考慮せず。その理由とは

「家を購入または賃貸契約を結んだ際、窓の防火性能を確認しましたか?」という質問に対し、約半数(47.7%)が「確認していない」と回答しています。

その理由ですが、最多となった「そもそも考えたことがない」(46.5%)はさておき、「賃貸なので自分が選べる範囲ではないと思った」(21.3%)、「建築基準法に則っていれば問題ないと思った」(21.3%)という声も多く見られます。

その背景には、不動産情報や内見時に提示される項目は、間取り・立地・価格・アクセスの利便性といった生活に直結する要素が中心で、防火性能や耐火構造について具体的に説明される機会が少ないことや、現代の建築基準法や消防法に基づき一定の安全性が担保されているという安心感がありそうです。

しかし火災は、一度起これば生活基盤を根こそぎ奪う重大リスク。防火対策を軽視する姿勢には改善の余地が大きいとも考えらえます。

「網入りガラス」と「防火ガラス」。その違いとは

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パイロクリア®J(ワイヤレス防火ガラス)と網入板ガラスの違い(日本板硝子グループHPより引用)

ガラスの内部に金属網を封入した防火用ガラスが「網入りガラス」です。火災時に高熱で割れても網が破片の脱落を防ぎ延焼を抑えてくれるものですが、網に沿ってひび割れが生じやすく、実際は熱による割れが生じやすいガラスでもあります。

その一方、耐熱強化ガラスや合わせガラスなどの「防火ガラス」は、フロート板ガラスの6倍以上、強化ガラスの2倍以上の強度により特殊な加工で高温に耐えるだけでなく、万が一の破損時も破片の飛散を防ぐため、安全性が高く、窓ならではの開放感やデザイン性にも優れています。

そのため、近年では建築物の防火区画や開口部において、網入りガラスの代替として防火ガラスが広く採用されるようになってきました。

防災面で差別化に。「防火ガラス」は耐用年数も長く、コスト面でも貢献

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日本電気硝子「防火ガラス:ファイアライト®」製品ページより引用

「防火ガラス」は、窓としてのデザイン性や視認性は高いまま、特殊加工や複層構造によって火災時の炎や熱の侵入を防ぐことで延焼を抑制。従来の一般ガラスと比べて高温にも耐えるため、避難時間を確保し人命を守る役割も果たす性能を備えています。「防火ガラス」を採用していない物件と比較すると、防災面において大きな差別化要素となります。

導入時のイニシャルコストは若干高めではあるものの、サビにより劣化が早まる「網入りガラス」よりも耐用年数も長いため交換や補修の頻度が低く、長期的な目で見れば維持管理コストの削減につながります。耐久性にも優れているため、建物のライフサイクルという観点からもコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。

加えて、気密・断熱をはじめとする省エネ性能や遮音性を兼ね備えた製品もあり、快適性の向上やエネルギー面でのランニングコストの削減にも寄与します。

このように、防火ガラスは防災対策の強化のみならず、長期的な経済性と快適性の確保という点においても、入居者メリットの大きい建材と言えます。物件の差別化やグレードアップを検討しているオーナーは導入を考えてみてはいかがでしょうか。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年9月3日時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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