その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは

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公開日:2025年10月8日
更新日:2025年10月9日
その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは1

賃貸経営は、放っておいても毎月家賃が入る不労所得というわけではありません。自分で考えて判断し、時には動くことも必要になってきます。一方、すべての業務をオーナー1人で行うのも難しく、複数の協力会社との連携が大切。協力会社との信頼関係が築ければ、管理も空室対策も驚くほどスムーズに!現役大家が語る「応援されるオーナー」になるための行動術とは?管理会社との連携に悩む方、必読です。

お話を聞いた方
その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

合同会社アップ 代表社員
廣田 裕司

大家歴約20年、12棟90戸超を所有する大家さんとしての経験、不動産業者としてのノウハウを活かし、大家さんの賃貸経営をサポート。セミナー実績も多い。「行動する大家さんの会」代表。

協力会社は信頼関係に支えられたパートナー

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

賃貸経営を回すうえで欠かせない協力会社の代表が管理会社です。仲介業務をあわせて行っているケースも多くあります。

オーナーズ・スタイル読者へアンケート調査を行った「大家さん白書2025」によると、委託している管理会社に満足しているオーナーが全体の3分の2に近い一方で、不満を持つ大家さんは約5人に1人という結果に。不満の理由として「空室を決めるのが遅い」「空室対策の提案がものたりない」、「原状回復費が高い」「リフォーム費用が高い」といった内容が上位に来ています。

実際に管理会社の側に不備がある場合もあると思いますが、それとは裏腹に、オーナー自身の行動がこの結果を招いている可能性もあります。現役大家で、管理会社やコンサルティング会社を経営する廣田さんには多くの相談が寄せられています。

「オーナーさんに悩みを聞くと、『管理会社が動いてくれない』『費用が高い、中抜きされているのでは?』といった言葉が聞かれます。管理会社にとって自分はお客さんだから、動いて当然だと思っているのでしょう。頭ごなしに叱ったり、自分の都合で『すぐに来い』と呼びつけたりする人もいるようです。

しかし、協力会社は下請けではありません。入居者に快適に暮らしてもらい、満室経営を一緒に目指すビジネス・パートナーと考えるべきです。横柄な態度で接していると、付き合いにくいオーナーだと敬遠され、本来の力を発揮してくれない恐れも。フラットな関係で信頼関係を築くという心構えが大切です」

自主管理オーナーにとっては、清掃・設備保守・リフォームなどの業務を個別に依頼している協力会社はチームの一員とも言えます。

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

「オーナーは、いわば野球チームを指揮する監督です。私は大家として、ユニフォームを着て現場に出るプレイング・マネジャーでありたい。そして協力会社に“応援したい大家さん”と思ってもらいたいです」

そのために、彼らの意識の中で印象に残るような、オーナー自身の行動や心がけが重要だと言います。

“応援したい大家さん”に対して協力会社は、物件を満室にするために優先的に動き、入居者に働きかけてくれるだろう。次から具体的な対応方法を解説していきます。

協力会社と良い関係を築く5つの行動

①定期的な対話で連携する

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

管理会社からは、少なくとも毎月1回は家賃の収支明細を送られてくるため、滞納の有無や入居状況が把握できます。なかには清掃や修繕の状況を知らせる管理報告書を送ってくるケースもあります。

「滞納や入居者のトラブルなどがなければ、つい読み飛ばしてしまいがちです。しかし、一通りは確認するようにしましょう」

何も反応がないと、管理運営に興味・関心がないオーナーだと思われ、必要な提案がされずに、最小限の報告だけで放置されてしまうかもしれません。

「あるオーナーは家賃の滞納が収支明細に書かれていたことに数カ月気付かず、怒っていました。しかしオーナー側も毎月きちんと収支明細をチェックすることが大事です。備考欄に少しでも気になる記載があれば、詳しい状況について担当者に説明を求めましょう。相手が忙しい場合は、自ら訪問したり、オンラインで会議をしたり、相手の立場を尊重しながら双方向で連絡を取り合うことが大切です」

報告書は必ずチェックし管理状況の把握を

管理会社から送られてくる定期報告書には、管理業務や建物・設備修繕の実施状況、入居者からの苦情処理など、賃貸経営にかかわる重要な情報が書かれています。管理状況の「今」がわかるともに、経営方針や修繕計画など「これから」を考えることにも役立ちます。

②提案に耳を傾け、必要な投資を実行

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

オーナーは「とにかく入居を決めれてくれ」の一点張りで聞く耳を持たず、管理会社からは「複数の空室対策メニューを提示しても話すら聞いてくれない」と嘆く声が少なくありません。結果として何も進まず、空室が長引く悪循環に陥ってしまう。そもそも話を聞かなければ是非を判断できません。

「実は、オーナー自身がどうしたいのかが曖昧なため、判断停止になっていることがよくあります。空室を埋めるために、必要な投資は行いながら家賃を維持していきたいのか、コストを一切かけない代わりに家賃は下げてもいいのか。大前提としてオーナーの方針を決めて伝えるべきです。その上で、提案をきちんと聞いて経営判断をする。断る場合も、理由を明確にすれば関係性を保つことができるでしょう」

③素早い判断、権限移譲を行う

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

「客中の仲介会社から、家賃交渉などの入居条件の問い合わせ電話が来た場合は、通話中に即決するぐらいのスピード感が欲しいです。そこで答えを留保してしまうと、目の前の入居検討者を逃してしまうだけでなく、仲介会社の担当者に『決められないオーナー』と思われ、次に案内する物件から外されてしまうこともあります。」と廣田さん。

「入居中の設備トラブルも、連絡が来たらスピード第一で対応しましょう。判断は『YES』でも『NO』でもいいから素早く結論を出すこと。現場の動きを止めないためには、ある程度の権限移譲をすることもおすすめです」

スピーディな対応のために廣田さんは、管理会社ごとのチャットアプリやショートメールなどの連絡ツールも使いこなしています。

「権限移譲」はどんなことをすればいい?

金額と状況、2つの権限がある。よくあるのは金額は「家賃交渉は3,000 円以内」「設備故障の修繕は3万円以内」は事後報告でOK。状況は、緊急性が高く、対応遅れの損害が大きい水まわりトラブルは、金額より処置優先で、というように対応をゆだねます。

④要望は具体的に、冷静に話す

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

今、都市部で家賃相場が上昇傾向にあるせいか、「家賃を1万円上げろ」「リフォームで100万円のキッチンを入れたんだから大幅に家賃を上げられるだろう」といった強気の主張をするオーナーが増えているといいます。合理的な水準ならいいが、市場とかけ離れた無謀な要望を、高圧的な態度で繰り返し求めるのはNGです。

顧客からの不当な要求や悪質なクレームを従業員が受けるカスターマー・ハラスメント(通称カスハラ)が社会問題になっていて、国や自治体、業界団体も対策に乗り出しています。

高圧的な態度のオーナーに協力会社は委縮してしまい、的確な提案や積極的なコミュニケーションを避けるようになってしまいます。要望は遠慮なく伝えて良いですが、感情的に怒鳴ったり威圧したりせず、根拠を示して冷静に伝えるように注意しましょう。

こんな行動はNG!
その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

賃貸経営に悪影響をおよぼしかねない“ざんねんな行動”。無意識のうちにやっていませんか?

・「やって当たり前」の言動
・怒鳴る、威圧する
・決断が遅い
・丸投げ・無関心
・提案を聞かない
・連絡が取りにくい

感謝・お礼の気持ちを伝える

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

賃貸経営に資する良い仕事をしてくれた仲介会社や管理会社の担当者には、積極的に感謝の意を示すことも大切です。

「年に1~2回程度は担当者とランチに行って、日ごろの感謝を伝えています。支店長クラスの方にも着任のタイミングで挨拶し、部下の担当者をさりげなく褒める。お盆や年末年始にも店舗に挨拶に行きます。繁忙期にはちょっとした差し入れをすると喜ばれ、オーナーの存在も記憶に残りますよ」

スタッフとの距離が縮まり、気心が知れる間柄になれば「このオーナーのために頑張ろう」という気持ちが生まれ、改善点や工夫を提案してくれるようになるでしょう。

入居者との“関わり方”のコツ

自主管理オーナーの場合は、入居者からのクレームやトラブルの処理にダイレクトに関わる必要があります。対応を間違えると、退去にもつながりかねません。

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

「協力会社に対してはチームの監督として対応すると言いましたが、入居者には“サービス提供者”という立場を意識しましょう。つまり『貸してあげている』のではなく『借りていただいている』という姿勢です。

そのうえで、クレームを受けたら、まずは相手の言い分を冷静に受け止めて、真摯な対応を心がけます。なかには、カスハラまがいの過剰な要求に合うこともあるかもしれません。これに対しては、毅然とした姿勢で『できること/できないこと』を伝えましょう」

入居者からのクレームは、基本的に3種類あります。

1つ目は原状回復・敷金精算などの権利関係。ネットやSNSの情報などで知恵を付け、一方的に借主に有利な主張をする人もいます。こうした場合は、法律や原状回復ガイドラインに則ったルールを説明し、強硬な態度に出る場合は弁護士を立て、裁判に訴えるなどの措置をとります。

2つ目は、設備故障などの物理的要因で、迅速に修理・交換などの対処をすれば解決できます。設備が使用できない期間は家賃減額の対象となるため、早めの対応を。

3つ目が騒音など生活ルール関係。
「対応が一番難しい問題です。発生源が特定できていれば個別に、わからない場合は全体に対し、改めて共同生活のルール、使用細則を説明し、注意喚起しましょう」(廣田さん)

入居者からの声は物件改善ヒントと捉えよう

不満の声の裏には改善のヒントが隠れているかも?耳を傾け、より良い物件づくりにつなげましょう。

修理・交換は「水平展開」でチェック

設備故障の修理依頼が来たとき、集合住宅は同時期に設置するので、1カ所で壊れたとすれば、経年劣化で他の部屋でも壊れる可能性が。そこで他の部屋も点検したり、設備寿命の時期だと考え、壊れる前に交換を進めます。

騒音は「注意喚起」と「お互いさま」

上下左右に住人がいる集合住宅で、騒音問題は非常に多く起こります。RC造でも完全には排除できません。注意喚起文書の掲示や各戸配布で改善を促します。入居者同士が挨拶をするなど「お互いさま」と思えるコミュニティづくりも良いでしょう。

「入居の決め手」でPRポイントを知る

入居者の退去時に、引っ越す理由のアンケートを取り、改善に生かすオーナーもいます。一方、入居時の決め手をヒアリングするのも有効。オーナーも気づかなかった新たなPR ポイントをキャッチできる可能性があります。

管理業務を細分化し、自分に合うスタイルを

その言動が空室を招く?“満室経営”をかなえるための協力会社が本気で動く賃貸管理の極意とは2

賃貸経営をうまく回すうえで、業務の多くを占める賃貸管理の形式を、委託管理にするか自主管理にするかも検討課題の1つです。これは、どちらが正解というわけではなく、オーナーの価値観や考え方次第。専業大家さんでも、自主管理を積極的に選んで経験を積むオーナーもいれば、管理会社に任せて負担を減らしたいオーナーもいます。なかには、保有する物件によって使い分けているケースも珍しくありません。

また、委託管理の中でも、すべての業務を任せる全面委託の場合と、清掃やコールセンター業務など一部をアウトソーシングする選択肢もあります。

「管理業務の内容を細分化して考えて、自分が何にどこまでタッチしたいかを決めると、自分に合ったスタイルが見い出せます」

管理会社の対応に満足できなければ、担当者の入れ替えや管理会社の変更も検討してみましょう。

いずれにしても、賃貸経営をオーナー1人で回すことはかなり大変なことです。専門知識や技術を持つ協力会社と対等に接しながら、監督として指示を出すには、オーナー自身も知識やノウハウ、判断力を身に着けることが大切です。本誌のような情報誌やインターネットで学習するのはもちろん、セミナー・イベントに参加するのも有効です。

「実は、資格取得も役に立ちます。賃貸不動産経営管理士やメンテナンス主任者など、試験を受けるために勉強するだけでも知識が深まり、有意義です」と廣田さん。

常に自分自身の知識をアップデートしながら、協力会社との信頼関係を築き、賃貸管理を上手に回していきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年9月1日時点のものです。

取材・文/木村 元紀 イラスト/高村あゆみ

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