外国人流入の影響もあり東京都の人口はついに1420万人台に。賃貸経営に与える影響と課題は?

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公開日:2025年10月1日
更新日:2025年10月2日
外国人流入の影響もあり東京都の人口はついに1420万人台に。賃貸経営に与える影響と課題は?1

少子高齢化による日本人の人口減少が危機的状況にある一方、国内に居住する「外国人」の人口は急激に高まっており、その影響は不動産市場においても無視できないものになりつつあります。しかし、賃貸住宅等に関する外国人受け入れの体制は十分とは言えない状況です。そのため不動産オーナーや企業は自治体などと連携し、外国人に向けた居住支援を急ぐ必要がありそうです。

東京都の人口が過去最多に。背景に外国人流入

総務省が公表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、日本の総人口は2025年1月1日現在で1億2,433万690人(前年から55万4,485人減)となり、そのうち日本人人口が90万8,574人の大幅に減少する一方、外国人人口は35万4,089人の増加。日本人の減少を外国人の増加で補っている事実が明らかとなりました。

こうした全国的な日本人の減少、外国人の増加が進行する中、東京の人口の動向はどのようになっているのでしょうか。東京都が公表している「東京都の人口(推計)」によれば、2025年7月1日現在で1,426万1,422人と、ついに過去最多の1,420万人台に乗りました。

さらに2024年の内訳を見ると、日本人1万6,825人増、外国人7万3,807人増と、外国人の増加の影響が大きいことがわかります。日本人の人口は、社会増減(転入者数等-転出者数等)においては7万2,052人増とコロナ禍前の水準にまで回復したものの、自然増減(出生者数-死亡者数)では5万5,227人と大きく減少。自然減の数が膨らむことで全体の対前年比増加数は1万6,825人に留まっています。

その一方で外国人は、社会増減が7万1,039人増と、コロナ禍前(2015~2019年)には2~3万人台だったものが倍増。あわせて自然増減数も2015年の1,900人増から2024年の2,768人増へと拡大しつつあります。

2024年の東京都は日本人の自然減がありながら、外国人の人口が増えたこともあ、9万632人の人口増加を果たしています。

東京都および東京圏における転入・転出状況

外国人流入の影響もあり東京都の人口はついに1420万人台に。賃貸経営に与える影響と課題は?2

日本人および外国人の国外との移動状況、国内都道府県間の移動状況はそれぞれどうなっているのでしょうか。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2024年に国外との移動状況は、転入者数73万5,883人、転出者数37万1,615人で、36万4,268人の転入超過となっています。内訳は日本人の9,852人の転出超過に対し、外国人は37万4,120人の転入超過となっています。

さらに東京圏(一都三県)でみると、転入超過数は総数15万5,431人で、日本人は4,207人の転出超過、外国人は15万9,638人の転入超過となっています。東京都に限定すると、転入超過数は総数7万2,795人で、日本人は2,011人の転出超過、外国人は7万4,806人の転入超過に。つまり国外から流入してくる外国人のじつに4割以上は、東京都をはじめとする一都三県を目指して来ることがわかります。

次に国内間移動による東京圏および東京都の転入・転出状況を見てみましょう。2024年は東京圏13万5,843人、東京都7万9,285人の転入超過であり、いずれも前年に比べ1万人程度増加。コロナ禍前の2019年と比べて9割超の水準まで回復しました。日本人・外国人別にみると、2023年以降は転入超過数の1割程度を外国人が占めるようになるなど、国内間移動においても外国人の存在感は徐々に高まりつつあります。

郊外分散から都心回帰へ。人口動態の変化

外国人流入の影響もあり東京都の人口はついに1420万人台に。賃貸経営に与える影響と課題は?2

社会増減や自然増減によって東京圏内の市区町村の人口分布はどのように変化したのでしょうか。総務省がリリースした「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、コロナ禍の2021年では東京都区部から隣接3県への転出および外国人の国外への転出により東京都区部の多くの区で人口が減少。

反対に東京都心からおおむね30㎞圏の市で人口が増加する「郊外分散」状態となりましたが、2024年では都心部に再び人口が増加する「都心回帰」へ状況が変化しました。

国籍別でみる外国人人口と居住エリアの特徴

次に東京23区について人口増減の状況を見ていきます。日本人と外国人を合わせた全体では、2024年は8万7,528人(0.91%)の増加。そのうち外国人のみに着目しますと、2024年は6万2,642人(11.54%)増と、全体で見た場合のおよそ12倍の増加率となっている状況です。

このように増加を続ける23区の外国人人口ですが、国籍と居住地の観点からはどのような違いがあるのでしょうか。まず半数以上を中国人と韓国人が占めており、特に中国人は23区すべてで増加率が1位という結果に。韓国人は5区(中野区、杉並区、豊島区、板橋区、江戸川区)以外で2位、その5区でも5位以内に入るなど、外国人人口において中国人、韓国人の多さが非常に際立っています。

外国人流入の影響もあり東京都の人口はついに1420万人台に。賃貸経営に与える影響と課題は?2

新大久保の東京コリアンタウン

中国人が最も多いのは江東区で、これは豊洲のタワーマンションを購入する中国人が多いことなどが、その大きな理由と考えられます。韓国人が最も多いのは、日本最大のコリアンタウン「新大久保」を抱える新宿区です。中国人、韓国人に共通して言えるのは、中央区や渋谷区での増加率が高いこと。これは都心部の住環境や教育環境を求める富裕層の動向が影響していると見られています。

増加率で目をひくのが中野区、杉並区、板橋区で2位、豊島区で3位のネパール人。23区全体でも5位にランクインしています。増加の要因は各地にコミュニティが形成されていることで、新たに来日するネパール人にとって過ごしやすい環境が整っていることでしょう。また2013年、杉並区に世界で初めてのネパール人学校が設立されたことも杉並区、中野区で人口を増やすひとつの理由と思われます。

さらに豊島区2位のミャンマー人、江戸川区2位のインド人の他、台湾人、ベトナム人、フィリピン人、インドネシア人など、10か国中9か国がアジア諸国となっていることも、23区の外国人人口における大きな特徴です。

外国人増加がもたらす影響と課題

少子・高齢化による日本人人口の減少をカバーするような形で増加する外国人人口。そのメリットは消費の後押しや地域経済の活性化、さらに飲食店、小売店などで新たな需要が生み出すことなど多岐にわたります。また、介護や建設、物流といった分野での深刻な労働力不足を緩和する重要な役割も期待されています。

文化的な側面においても、食文化、芸術、習慣といった面での多様化、加えて地域住民と外国人居住者の交流の活発化すれば、お互いの文化や価値観への理解が深まり、地域住民との交流が進めば、文化や価値観への理解が深まり、差別的な意識の緩和にもつながる可能性があります。年齢にかかわらずの語学習得への意欲が高まることも考えられます。

一方で、特定の地域に外国人人口が集中すると、家賃の高騰や住居の確保が困難になる可能性もあります。生活習慣の違いから、ゴミの分別ルールが守られなかったり、集合住宅での騒音トラブルが発生したりするケースも見られます。

医療機関や教育現場では、言語対応ができるスタッフの確保が難しく、治安への懸念も一部で聞かれています。外国人の増加が直接的に治安悪化に繋がるわけではありませんが、報道などによって不安を感じる住民がいるのも事実です。

受け入れ体制の課題と賃貸経営への影響

賃貸経営においても、外国人入居者の存在感は高まっており、2020年の国勢調査では「外国人のみの世帯」の46%が民営の借家に居住。にもかかわらず、受け入れ体制は不十分で、東京圏で「外国人入居者の受け入れを行っている」と回答した賃貸人は3割強に留まっています。

外国人が住宅を探す際の課題として、「外国人という理由で入居を断られた」(40%)、「保証人がいなかった」(33%)などが挙げられ、約7割が何らかの不便を感じているという調査結果もあります。

今後も外国人労働者や留学生の流入は続くと見込まれており、賃貸住宅オーナーや業者は自治体と連携し、言語対応や文化的配慮を含めた居住支援体制の整備が求められます。翻訳ツールの導入や多用途家具の整備など、今から準備を進めることが競争力の強化につながるでしょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年10月1日時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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