「長期優良住宅化リフォーム推進事業」とは?対象となる工事や補助金上限、必要な条件まとめ
既存住宅を含めた住宅の性能向上は国の重要な施策でもあり、毎年、補助金制度に補正予算が組まれています。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」もそのひとつ。賢く使えば費用削減につながる「長期優良住宅化リフォーム推進事業」について、利用条件などをまとめました。
補助金の対象となる建物は?
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」とは、2009年に施行された「長期優良住宅普及促進法」を背景とした国の補助事業です。良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備のために、既存住宅の性能向上リフォームに対して支援を行うものです。
既存の戸建て住宅、賃貸を含む共同住宅のいずれも対象ですが、事務所や店舗、違反建築物は対象外となります。
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どんなリフォーム工事が補助対象?
主に以下のような工事で、インスペクション(建物現況調査)の費用も補助対象となります。
建物の劣化対策や耐震性、省エネ性能など特定の項目を一定の基準まで向上させる工事で、例えば断熱サッシや高効率給湯器への交換、耐力壁の増設や屋根の軽量化、給排水管の更新などが含まれます。共同住宅に関しては、高齢者や可変性に配慮した工事も対象になります。
また、上記以外にインスペクションで指摘を受けた箇所の補修工事(外壁塗装や屋根の張り替えなど)、バリアフリー工事(手すりの設置や床段差の解消など)、テレワーク環境整備(仕切り壁や建具の設置)といった性能向上工事も対象になります。
キッチン・浴室・トイレ・玄関の増設工事が対象で、リフォーム後にこのどれか2つ以上が複数箇所あることが必要です。
若者・子育て世帯が実施するのが条件で、子育てしやすい環境整備のための工事が対象となります。例えば住宅内の事故防止、子どもの様子の見守り、不審者の侵入防止、災害への備えなどのためのリフォームです。
若者とは2024年4月1日時点で40歳未満の工事発注者、子育て世帯とは2024年4月1日または交付申請時点に18歳未満の子どもがいる世帯を指しています。
防犯性や自然災害に対応する改修で玄関ドアやサッシの交換、蓄電池の設置工事などが該当します。
補助金はいくらもらえる?
補助率は1/3で、補助限度額は評価基準型1戸につき80万円、認定長期優良住宅型で160万円/1戸です。三世代同居対応改修工事を実施する場合、若者・子育て世帯または中古購入リフォームの場合は、上限がそれぞれ130万円/戸、210万円/戸に引き上げられます。
ただし、「認定基準には満たないが⼀定の性能確保が見込まれる水準」である評価基準型は、2024年5月15日現在で予算が100%に達したため、交付申請受付が締め切られました。
補助上限 | |
事業タイプ | 補助限度額 |
評価基準型 | 1住戸につき80万円※1←すでに申請受付が終了 |
認定長期優良住宅型 | 1住戸につき160万円※2 |
※1 以下の場合、50万円を上限に加算
三世代同居対応改修工事を実施する場合/若者・子育て世帯が改修工事を実施する場合/既存住宅を購入し改修工事を実施する場合/
※2 1申請あたりの補助金額が10万円(補助対象工事費が30万円)以下は補助対象外です
長期優良住宅化リフォーム推進事業で補助を受けるための条件は?
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の対象となるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
少なくとも1階の床面積(階段部分を除く)が40㎡以上、かつ、延べ面積が55㎡以上であること。リフォーム前後ともに、延べ面積の半分以上が住宅であること。
リフォーム工事の内容が、住宅の性能基準に適合させるための工事、 三世代同居対応改修工事及び子育て世帯向け改修工事並び防災性、レジリエンス性向上改修工事のいずれかであること。
リフォーム工事後に住宅性能が評価基準に適合すること。適合させる性能項目は構造躯体等の劣化対策、耐震性、省エネルギー対策、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅のみ)、可変性(共同住宅のみ)の6つ。
リフォーム工事着手前にインスペクション(現況検査)を実施すること。また、リフォーム工事の履歴と維持保全計画を作成、保管すること。
〈適合させる特定の性能項目〉 ・構造躯体等の劣化対策、耐震性及び省エネルギー対策の性能が確保されていること |
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性能項目 | 概要 | リニューアル後の住宅の性能 |
①躯体構造等の劣化対策 | 柱、床などの腐朽、蟻害の抑制 | 必須 |
②耐震性 | 大地震でも倒壊しないよう耐震性の確保 | |
③省エネルギー対策 | 窓や壁、床、天井などの断熱化、給湯器などの効率化 | |
④維持管理・更新の容易性 | 給排水管を点検・清掃・交換しやすくする | 任意 |
⑤高齢者対策(共同住宅のみ) | バリアフリー化 | |
⑥可変性(共同住宅のみ) | 将来の間取りの変更等に対応しやすくする |
※認定長期優良住宅型を選択の場合は④~⑥も必須項目になります
他の補助金との併用は可能?
国による以下の補助金とは目的や財源が同じのため、工事個所が重複する場合は併用できません。
■住宅・建築物安全ストック形成事業(地方公共団体)
■次世代ZEH+実証事業(経済産業省)
■戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業(環境省)
■次世代省エネ建材支援事業(経済産業省)
■既存住宅における断熱リフォーム支援事業(環境省)
■集合住宅の省 CO2 化促進事業(環境省)
■子育てエコホーム支援事業(国土交通省)
■先進的窓リノベ2024事業(経済産業省、環境省)
■給湯省エネ2024事業(経済産業省)
■賃貸集合給湯省エネ2024事業(経済産業省)
■住宅・建築物省エネ改修工事推進事業(国土交通省)
■サステナブル建築物等先導事業(省CO2 先導型) (国土交通省)
■結婚新生活支援事業(内閣府)
しかし、地方自治体の補助事業で、国費が充当されず単独費でおこなわれているものであれば併用可能です。併用できる補助金があるか自治体に問い合わせてみましょう。
まとめ
インスペクションや一定以上の性能基準が求められる「長期優良住宅化リフォーム推進事業」。敷居の高い一面はあるものの、うまく使えば入居者の安心と快適につながり、長く物件の資産価値を保つきっかけになってくれます。大規模修繕を予定しているのであれば、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
2024年度の「評価基準型」は交付申請スタートから1日で予算が上限に達してしまいましたが、来年度以降も予算が組まれると思われます。今後リリースされる情報に気を配り、必要な時にすぐに動けるようにしておきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年5月22日時点のものです。
文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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