賃貸物件探しで2024年に最も検索された街はどこ?ランキングから読み解く賃貸市場のトレンド

賃貸物件探しにおいて、どの街が注目されているのかは、オーナーにとって非常に重要な情報です。ニフティ不動産が発表した「2024年に最も検索された街」のランキングを見ると、これまでの人気エリアとは異なる新たな動きが見えてきます。賃貸オーナーが注目すべきポイントを交えながら、関東・関西それぞれのランキング結果を解説していきます。
関東エリア:川崎が1位に!都心周辺から郊外への広がりが顕著
関東エリア(東京都/神奈川県/埼玉県/千葉県/栃木県/茨城県/群馬県)で賃貸物件探しをしている人が2024年に最も検索・閲覧した街のランキングは以下の結果となりました。20位までを抜粋してご紹介します。
年間ランキング2025 賃貸・関東版 それぞれの間取りごとの平均家賃(単位:万円)
順位(前年) | 駅名 | 1K | 1LDK | 2LDK | 3LDK |
1 (2) ⇧ | 川崎 | 7.4 | 7.9 | 14.7 | 20.1 |
2 (1) ⇩ | 三軒茶屋 | 8.5 | 11.1 | 23.6 | 30.7 |
3 (8) ⇧ | 三鷹 | 6.4 | 7.5 | 17 | 19.7 |
4 (6) ⇧ | 荻窪 | 7.2 | 9.1 | 18.4 | 23.5 |
5 (3) ⇩ | 高円寺 | 7.3 | 9.2 | 21.4 | 22.9 |
6 (9) ⇧ | 葛西 | 6.9 | 8.1 | 14.9 | 18.6 |
7 (4) ⇩ | 中野 | 7.9 | 9.7 | 23.4 | 28.7 |
8 (5) ⇩ | 学芸大学 | 8.7 | 10.4 | 24.8 | 34.6 |
9 (7) ⇩ | 武蔵小杉 | 7.1 | 9.2 | 16 | 21.1 |
10 (11) ⇧ | 元住吉 | 6.6 | 7.6 | 15.5 | 20.1 |
11 (17) ⇧ | 西荻窪 | 7 | 8.9 | 19.3 | 23.8 |
12 (14) ⇧ | 北千住 | 7.2 | 8.1 | 16.9 | 19.6 |
13 (10) ⇩ | 池袋 | 8.7 | 10.7 | 22.6 | 31 |
14 (20) ⇧ | 大宮 | 6.3 | 6.6 | 12.5 | 15.8 |
15 (16)⇧ | 新小岩 | 6.7 | 7 | 13.1 | 17.9 |
16 (18) ⇧ | 吉祥寺 | 6.6 | 7.8 | 16.7 | 19.4 |
17 (32) ⇧ | 本厚木 | 4.9 | 5.7 | 8.6 | 9.9 |
18 (12) ⇩ | 笹塚 | 8.4 | 11.3 | 24.2 | 28.1 |
19 (15) ⇩ | 西川口 | 6.5 | 6.6 | 12.7 | 14.2 |
20 (23) ⇧ | 浦安 | 6.7 | 7.8 | 15.6 | 16.6 |

川崎駅前の風景
2024年のランキングでは、前年1位だった三軒茶屋を抜いて、川崎が最も検索された街となりました。川崎は東京都心部へのアクセスが良く、駅周辺に充実した商業施設が揃っていることから、幅広い層に人気のあるエリアです。さらに、掲載物件数も多いため、住まいを探す際の選択肢が豊富であることが、検索数の増加に影響していると考えられます。
また、トップ10内では三鷹や荻窪、葛西などのエリアが順位を上げており、都心に隣接したエリアの需要が高まっていることが分かります。これらの街は都心部と比較して家賃が抑えられる一方、生活の利便性が高く、単身者だけでなくファミリー層にも選ばれやすいエリアです。
そのため、今後の賃貸経営においては、単身者向けの1K・1LDKだけでなく、2LDK・3LDKなどの広めの間取りにも注目することで、より多くの入居希望者にアピールできるでしょう。

西川口駅前の風景
また、千葉や埼玉の主要エリアでも検索数が増加しました。特に、埼玉の大宮や西川口、千葉の浦安や船橋などがランクインしており、都心部の家賃高騰を背景に、比較的リーズナブルな賃料で住めるエリアが選ばれていると考えられます。
この傾向は今後も続くと予想されるため、これらのエリアに物件を所有するオーナーは、賃料設定や物件の魅力を再検討することで、競争力を高めることができるでしょう。
急上昇エリア:埼玉・茨城の発展エリアに注目

東武東上線志木駅前
今回のランキングでは、前年と比較して順位を大きく上げた街がいくつか見られました。特に、埼玉の志木、茨城の水戸やつくばといったエリアが急上昇しています。これらの街は、交通の利便性が向上したり、再開発によって暮らしやすさが向上したことが影響していると考えられます。
例えば、志木は池袋まで電車で約30分という好立地にありながら、家賃が比較的手頃であることから、都心への通勤・通学を考える人々に選ばれやすいエリアとなっています。
また、つくばは研究学園都市としての発展が進み、都市機能の充実とともにファミリー層の流入が増えています。こうしたエリアでは、単身者向けのワンルームや1Kだけでなく、ファミリー向けの広めの物件にも需要があるため、オーナーとしてはターゲットを幅広く設定することが賃貸経営の成功につながるでしょう。
関西エリア:武庫之荘がトップ。大阪の再開発エリアに注目
続いて関西エリアを見てみましょう。対象となるのは大阪/兵庫/京都/滋賀/奈良/和歌山です。
年間ランキング2025 賃貸・関西版 それぞれの間取りごとの平均家賃(単位:万円)
順位(前年) | 駅名 | 1K | 1LDK | 2LDK | 3LDK |
1(2)⇧ | 武庫之荘 | 5 | 5.5 | 8.9 | 9.7 |
2(1)⇩ | 三ノ宮 | 6.2 | 7.4 | 13.1 | 14.4 |
3(10)⇧ | 東三国 | 6.1 | 6.9 | 12.4 | 12.8 |
4(3)⇩ | 神戸 | 5.9 | 6.5 | 10.1 | 11.4 |
5(6)⇧ | 上新庄 | 4.5 | 4.6 | 7.8 | 10.1 |
6(7)⇧ | 新大阪 | 5.8 | 6.7 | 12.5 | 14.5 |
7(4)⇩ | 江坂 | 6.2 | 7.4 | 11.4 | 12.3 |
8(13)⇧ | 天神橋筋 六丁目 |
6 | 7 | 14.4 | 15.8 |
9(8)⇩ | 十三 | 5.7 | 6.3 | 12.3 | 16.8 |
10(11)⇧ | 立花 | 5 | 5.5 | 9.1 | 9.8 |
11(5)⇩ | 大国町 | 6.6 | 8.7 | 18.9 | 18.2 |
12(9)⇩ | 阿波座 | 10.6 | 8.7 | 18.9 | 18.2 |
13(31)⇧ | 弁天町 | 5.7 | 5.7 | 10 | 14.2 |
14(17)⇧ | 南方 | 5.9 | 6.6 | 12.8 | 17.4 |
15(12)⇩ | 茨木市 | 5 | 4.8 | 8.6 | 9.3 |
16(20)⇧ | 高槻 | 4.9 | 5.7 | 8.6 | 9.9 |
17(14)⇩ | 西明石 | 4.8 | 5.2 | 7.3 | 8 |
18(21)⇩ | 京橋 | 5.7 | 6.1 | 13.3 | 14.2 |
19(35)⇧ | JR淡路 | 4.9 | 4.9 | 10.3 | 13.2 |
20(24)⇧ | 高槻市 | 5.2 | 5.2 | 8.7 | 9.1 |

武庫之荘駅前
関西エリアでは、前年2位だった武庫之荘が1位となり、三ノ宮を抜きました。武庫之荘は兵庫県尼崎市に位置し、閑静な住宅地として人気のあるエリアです。大阪・梅田まで約20分という利便性に加え、家賃相場が比較的抑えられていることから、幅広い層の入居希望者に支持されています。
また、大阪エリアでは、東三国や弁天町といったエリアが急上昇しました。これらのエリアは、2025年の大阪・関西万博に向けたインフラ整備が進められていることが影響しており、今後も賃貸需要が増加すると予想されます。特に、御堂筋線沿線の東三国や新大阪は、通勤・通学の利便性が高く、ビジネスパーソンを中心に人気が高まっています。
一方で、神戸エリアでは三ノ宮や神戸が順位を下げたものの、依然として上位にランクインしています。これらのエリアはブランド力があり、安定した需要がありますが、物件数が多いため競争が激しくなっています。そのため、オーナーは物件の差別化を図ることが重要です。
例えば、駅近の物件であれば、設備の充実やリノベーションを行うことで競争力を高めることができます。
今後の賃貸市場戦略を読み解くポイント

上記で紹介したランキングから見えてきたのは、「都心部から郊外へのシフト」と「再開発エリアへの注目」という2つの大きな流れです。生活コストの高騰により、これまで都心部の人気エリアに集中していた需要が、より家賃が抑えられる郊外エリアに広がりつつあります。
また、再開発が進むエリアでは、新たなインフラの整備によって住環境が向上し、今後の賃貸需要の増加が期待されます。
オーナーとしては、これらの動きを的確に捉え、自身の物件のターゲット層を見直すことが重要です。郊外エリアでは、ファミリー向け物件の需要が高まっており、2LDK以上の広めの間取りや駐車場付き物件が人気を集めています。一方で、都市部では競争が激化しているため、設備の充実やデザイン性の高いリノベーションが求められるでしょう。
また、最近注目されている「ずらし駅(人気エリアに隣接する比較的家賃が安い駅)」の傾向も踏まえ、人気エリアに近い駅の物件に目を向けることも戦略の一つとなります。これらの駅では、通勤・通学の利便性を保ちながらも、コストパフォーマンスの高い物件が選ばれやすい傾向にあります。
2024年の検索データは、賃貸市場における新たなトレンドを示しています。今後の賃貸経営を成功させるためには、エリアの変化を敏感に察知し、ターゲット層に合わせた物件の提供を行っていくことが求められるでしょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年3月19日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
年4回無料で賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」をお届け!
