「家賃の安さ」より「広さ/間取り」重視にシフト?家賃アップにもつながる部屋選び最新トレンドを知る

賃貸仲介サービスのハウスコム(株)が、2024年5月以降に賃貸住宅に引っ越した、または2026年4月までに賃貸物件に引っ越し予定の男女15~49歳を対象に、“部屋選び”に関する調査を行いました。2022年から毎年実施している同調査の結果から、賃貸住宅を選ぶときの価値観はここ1年でどのように変わったのかを見てみましょう。
「家賃」より「広さ」?部屋選びの優先順位が変化中
まず、複数回答で「引っ越しの際に重視した(している)項目」を聞いたところ、次のような結果となりました。前年(2024年)の結果と比較してみましょう。
Q. 引っ越しの際に重視した(している)項目をすべてお答えください。(複数回答) | |||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | 家賃 | 65.2% | 73.2% |
2位 | 広さ/間取り | 52.4% | 52.0% |
3位 | 最寄り駅の路線/交通アクセス | 40.3% | 52.3% |
4位 | 最寄り駅までの距離 | 36.5% | 59.2% |
5位 | 築年数 | 35.9% | 39.5% |
6位 | 独立したトイレ | 34.5% | 38.5% |
7位 | 部屋の階数 | 29.4% | 25.8% |
8位 | 日当たり | 27.0% | 29.3% |
「家賃」が1位なのは2024年と変わりませんが、8ポイント下がっています。2位は「広さ/間取り」52.4%で前年度とポイントは変わらないものの、昨年2位の「最寄り駅までの距離」、3位の「最寄り駅の路線/交通アクセス」を抜いて順位を上げています。
最重要視は「広さ/間取り」へ──家賃の優先度が低下
次に、単一回答で「引っ越しの際に最も重視した(している)項目」を聞いたところ、回答項目の順位に変動が見られました。
Q. 引っ越しの際に最も重視した(している)項目をすべてお答えください。(単一回答) | |||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | 家賃 | 26.5% | 32.0% |
2位 | 広さ/間取り | 14.8% | 8.7% |
3位 | 最寄り駅の路線/交通アクセス | 11.4% | 15.5% |
4位 | 最寄り駅までの距離 | 7.1% | 19.3% |
5位 | 独立したトイレ | 4.5% | 2.0% |
6位 | 築年数 | 3.9% | 3.3% |
7位 | ペットの可否 | 3.8% | 2.5% |
8位 | 建物の構造/遮音性 | 3.5% | 2.0% |

1位「家賃」は前年度と同じですが、前年度より5.5ポイント減少しており、引っ越しをする際に「家賃」を最重要視する人の割合が減っています。同調査では、「近年、大企業を中心に行われている賃上げや初任給引き上げの動きにより家賃に対する許容範囲が広がっている可能性」を指摘。
「広さ/間取り」14.8%は前年度の8.7%から大幅にポイントアップ。「最寄り駅までの距離」と「最寄り駅の路線/交通アクセス」を抜いて2位に上昇しました。
7、8位に入っている「ペットの可否」「建物の構造/遮音性」は、少数派ながら、譲れない条件として挙げる人も一定数いるようです。
人気は1LDK・2LDK!ワンルーム離れが進行中
前項では「広さ/間取り」が前年度より重要視される傾向が見られましたが、実際にどの間取りが人気なのでしょうか。引っ越しをした(または、引っ越しをする際に希望する)部屋の間取りを聞いたところ、1位は同率で「1LDK」と「2LDK」17.0%でした。
Q. 引っ越しをした部屋の間取り、もしくはこれから引っ越しをする際に希望する間取りを教えてください。 | |||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | 1LDK | 17.0% | 16.8% |
2位 | 2LDK | 17.0% | 16.3% |
3位 | 1K | 15.5% | 21.0% |
前年度調査では1位だった「1K」は大幅にダウン。「ワンルーム(キッチンが部屋の中)」も前年度の9.8%から今回6.7%にダウンしており、部屋が複数ある間取りの人気が高まっていることが明らかになりました。
希望家賃は5,000円アップ──広さ重視が影響か
「引っ越しをした(これから引っ越しをする予定の方は引っ越しする際に希望する)部屋の家賃」については、2025年度調査は中央値が69,480円でした。昨年度の64,000円から5,000円以上高くなっています。
ここまでのアンケート結果から「家賃」を最重要視する人の割合が減ったこと、部屋の「広さ/間取り」を最重要視する人が増えたことが関連するのかもしれません。ただし、実際に賃貸住宅の平均家賃が上がっていることも要因として考えられます。
設備選びは「キッチン」「独立トイレ」が鉄板

広さや部屋数が重視されるなか、設備についてはどうでしょうか。「引っ越しをした(これから引っ越しをする予定の方は引っ越しする際に希望する)部屋の設備」を聞いたところ、上位3位は以下の通りでした。
Q. 引っ越しをした部屋の設備、もしくはこれから引っ越しをする際に希望する設備をすべてお答えください。 | |||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | キッチン | 64.4% | 87.2% |
2位 | 独立バス/トイレ | 61.5% | 74.3% |
3位 | エアコン | 59.5% | 71.7% |
新築人気が上昇中──築浅物件への関心が強まる
Q. 引っ越しをした部屋の築年数、もしくはこれから引っ越しする際に希望する部屋の築年数をお答えください。 | |||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | 10年以内 | 17.1% | 17.7% |
2位 | 5年以内 | 12.4% | 12.2% |
3位 | 不明 | 12.4% | 14.2% |
4位 | 1年以内(新築) | 12.0% | 8.0% |
トップ3に大きな変化はありませんが、前年度7位の「1年以内(新築)」が4位に上昇。また、8位だった「3年以内」も5位にランクアップしました。より新しい住まいが好まれる傾向が表れています。
部屋探しはSNSで?ポータルサイトの一強時代に変化
「部屋探し、部屋選びの際に利用したメディアおよび情報源」を複数回答できいたところ、1位が「物件検索ができる不動産ポータルサイトや不動産会社のウェブサイト」で42.4%ですが、前年度65.0%からは大きくポイントを減らしています。
Q. 部屋探し、部屋選びの際に利用したメディアおよび情報源で 当てはまるものをすべてお答えください。 |
|||
順位 | 項目 | 割合 | 前年度 |
1位 | 物件検索ができる不動産ポータルサイトや不動産会社のウェブサイト | 42.4% | 65.0% |
2位 | 物件検索ができるアプリ | 34.8% | 32.3% |
3位 | 不動産仲介会社などの店舗 | 32.9% | 17.5% |
トップ3の顔ぶれは変わらないものの、上位2位はポイントを減らし、3位「不動産仲介会社などの店舗」のみが上昇しています。4位以下では、「YouTube」「X」「Instagram」「TikTok」といったSNS関連メディアの合計が35.5%となり、前年度から10ポイント近く増えました。
「スペックより暮らしやすさ」ライフスタイル重視が加速
引っ越し時の考え方についての質問「物件は単純なスペックではなく、自分のライフスタイルに合っているかで選ぶ」には、「ややあてはまる」「とてもあてはまる」の合計が87.0%となり、前年度79.8%から7.2ポイント増えています。

ライフスタイルについて、家での過ごし方を聞いたところ1位が「テレビや動画、映画鑑賞」で55.2%。前年度1位の「料理をする」43.6%と順位が入れ替わりました。3位「音楽を聴く」、4位「ゲーム」は前年度と同様です。
家の周辺にあってほしいと思う施設や場所は、1位が「スーパー」60.8%、2位「コンビニ」54.2%、3位「ドラッグストア」53.0%。「ドラッグストア」と「コンビニ」の順位が入れ替わりました。しかし、それぞれ前年度よりポイントは減少しており、背景には宅配サービスの普及もありそうです。
広さ・新しさ・SNS活用──2025年の部屋選びはこう変わる
今回の調査では、家賃やアクセスを重要視する人の割合が減り、広さや間取り、築年数(新しさ)に価値観が移りつつある傾向が見られました。
また、部屋探しについても、これまで一強であった不動産ポータルサイトやウェブサイトがポイントを減らし、SNSで部屋探しする人が増加。この傾向は今後も続くでしょう。
引っ越し先の満足度は100点満点で平均72.8点。前年度より3.4点プラスで、満足していることとしては「部屋の広さや間取り(部屋数の多さ)」や「部屋のキレイさ」についてのコメントが多かったようです。ぜひ今後の物件づくりの参考として活用してみてください。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年7月23日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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