約9割の大家さんが大規模災害時に空室を被災者に貸し出す意向を持っていることが明らかに。『大家さん白書2025』が示す災害時の対応意識

地震や台風などの自然災害が頻繁に発生する日本。大規模災害発生時における賃貸住宅の役割はますます重要性を増しています。このような背景の中、賃貸オーナーは災害に対してどのような意識を持ち、いかに社会貢献を考えているのでしょうか。『大家さん白書2025』で行われた「災害時に空室を貸す意向」についての意識調査の結果から読み解きます。
約9割が「貸す可能性あり」。背景にある大家の使命感

大規模災害が発生し、もし所有する物件に被害を受けていない空室があった場合、自宅に住めなくなった被災者の仮住まいとして一時的に貸し出す意向があるかを尋ねたところ、大家さんの6割近くが「貸し出す」と回答しました。
さらに、「わからない・条件や状況しだい」と回答した34.9%を含めると、9割以上の大家さんが被災者への住まい提供に前向きな姿勢を示していることになります。これは、タイトルにある「約9割」という数字の根拠となるもので、大家さんの持つ高い社会貢献意欲を明確に示しています。
具体的な貸し出しの条件を見ると、「相場の家賃なら貸す」と回答した人が34.2%で最も多く、「相場より安くても貸す」が14.5%、「無料でも貸す」という人も2.6%いました。「貸さない」と明確に答えた人は4.8%と少数にとどまっており、このデータは、単に経営上の判断だけでなく、災害時には柔軟な対応を検討する大家さんが少なくないことを示唆しています。
「貸す」と回答した大家さんの多くは、「困っている人を助けたい」「地域社会に貢献したい」といった社会貢献の意識を理由に挙げており、空室を“地域の資源”として捉えている姿勢がうかがえます。
実際には「貸したくても貸せない」現実も
一方、「条件付きで貸す」と答えた大家さんには、「貸すこと自体には前向きだが、不安要素も多い」といったスタンスが見られます。
例えば、「入居者が短期間で退去した場合の原状回復費用が心配」「家賃滞納時の保証がない」「契約内容が曖昧になるとトラブルに発展しやすい」「単身の高齢者には見守りサービスがないと不安」といった経営リスクへの懸念が見られました。
また、「入居者の属性が明確であれば」「行政が責任を持って入居者とつなぐなら」といった条件が整えば貸したい、という声も多く、制度的な整備の必要性も浮き彫りになりました。
「東日本大震災で空室を開放した経験がある」といった声も

東日本大震災後の山田町のアパート
自由回答の中には、「2011年の東日本大震災をきっかけに、被災者を短期間受け入れた」という経験談もありました。
その際には「感謝されたことが忘れられない」「空室活用の新たな視点を得られた」と前向きに捉える大家さんがいる一方、「設備の損耗があった」「次の入居者に説明が必要になった」といった声もあり、善意とリスクの両面が存在することがわかります。
警戒区域内の物件所有状況と賃貸市場への影響
災害に対する意識のもう一つの側面として、所有物件がハザードマップにおける洪水・土砂災害・津波などの警戒区域内に建っているかについても調査が行いました。その結果、大家さんの19.1%が警戒区域内に物件を所有していることが明らかになりました。
しかし、警戒区域内に物件があることによる家賃や入居率への影響については、64.1%の大家さんが「影響なし」と回答しており、実際の賃貸市場への影響は限定的であると認識されています。


「大家さん白書2025」で行った他の調査では、今後の3年間で不動産価格が「上がる」と予測する大家さんが半数以上いることが分かっています。このような市場状況も相まって、ハザードマップ上のリスクが直ちに賃貸経営に大きな打撃を与えているとは感じられていないのかもしれません。
オーナーズ・スタイル統括編集長・上田英貴のコメント
今回の『大家さん白書2025』のデータが示す大家さんの大規模災害時の被災者受け入れ意向について、株式会社オーナーズ・スタイル代表取締役統括編集長の上田英貴は、以下のように述べています。

(株)オーナーズ・スタイル 代表取締役 統括編集長 上田英貴
「大規模災害時に空室を貸し出す意向の大家さんが多いという結果は、単なる経営判断を超え、困っている人を助けたいという、日本の大家さんならではの温かい心と、地域社会への深い責任感の表れだと感じています。とはいえ、大家さんだけの善意に頼るのではなく、制度面での後押しがさらに必要です。賃貸住宅の空室が地域のセーフティネットとして機能する仕組みを、オーナーのリアルな声も聞いて一緒に考えていくべき時代に入ったと感じます」
まとめ
『大家さん白書2025』が示すデータは、賃貸住宅オーナーが災害時に見せる高い社会貢献意欲と、それに伴う具体的な行動意向を明らかにしました。約9割の大家さんが空室を被災者に提供することに前向きな姿勢を見せており、これは日本の大家さんが持つ深い隣人愛と社会的責任感を象徴しています。
また、警戒区域内の物件所有が賃貸経営に与える影響は限定的と認識されている一方で、いざという時のための備えとリスク管理の重要性は変わりません。
今後、気候変動による災害の激甚化が懸念される中、大家さんの防災意識と社会貢献への意欲は、賃貸市場だけでなく社会全体のレジリエンス(回復力)を高める上で不可欠な要素となるでしょう。大家さんが経営上の課題と社会貢献を両立させながら、安心して賃貸経営を継続できるような環境整備が一層求められています。
【調査概要】
●調査手法 :郵送及びインターネット
●調査時期 :2024年12月
●対象者条件 :賃貸経営情報誌「オーナーズ・スタイル」読者の大家さん(関東、関西、東海エリア)、アパート、マンションを1棟以上所有している人
●有効回答数 :793人
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修繕内容や費用感、設備更新の意識など、物件維持に関する実情を解明します。
Part 5:管理・仲介・家賃
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Part 6:相続・税務
相続対策の実施状況や関心度、税務に関する悩みが明らかになります。
Part 7:空室対策・トラブル
空室への対応や入居者トラブルの実例、ならびにその対策に関する傾向が示されています。
Part 8:高齢者・外国人・LGBTの受け入れ
多様な入居者対応の現状と課題に対する意識が把握できます。
Part 9:災害・コミュニティ・情報収集・資格取得
防災意識、地域連携、学びへの取り組みなど、社会との関わりを探っています。
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