エンドユーザーの8割超が住宅選びで省エネ性能を重視。特に「光熱費の目安」に高い関心あり

2025年4月から改正建築物省エネ法が施行され、これ以降に新築するすべての建物について省エネ基準への適合が義務付けられました。それに先立ち、省エネ性能表示制度の導入なども進められており、住まいの省エネ性能に対する世間の関心も高まっています。エンドユーザーは省エネ性能に何を求めているのでしょうか。
省エネ性能は約3割が「重視」、半数が「ある程度重視」
(株)いえらぶGROUPがエンドユーザーと不動産会社を対象に「改正建築物省エネ法に関するアンケート調査」を実施しました。まず、住宅選びの際に省エネ性能(断熱性・省エネ設備など)を重視するか尋ねたところ、エンドユーザーの30.8%が「重視している」、51.4%が「ある程度重視している」 と回答しました。
「重視していない」「あまり重視していない」を合わせても12%程度。光熱費の高騰や酷暑の影響もあり、大多数の人が省エネ性能を重視していることがわかります。
【おさらい】建築物省エネ法とは?

正式名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」。2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野のエネルギー消費性能の向上をはかるために制定・改正されました。
今回の改正により、2025年4月以降に工事に着手するすべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されます。具体的な断熱性能は「断熱等性能等級4以上」、エネルギー消費量は「一次エネルギー消費量等級4」で、これまで対象外であった延床面積300㎡未満のアパートなども含まれます。
今後、2030年までに新築の省エネ基準はZEH水準(断熱等級5)まで引き上げられる予定です。
光熱費が安い一方で「価格が高そう」というイメージも

最近は住宅メーカーのCMなどでも省エネ性能をうたうものが増えていますが、世間での省エネ性能に対するイメージはどのようなものでしょうか。エンドユーザーに「省エネ性能が高い住宅」と聞いてどのようなイメージを持つかという質問では、「光熱費が安くなりそう」が77.9%で最多でした。
次いで「快適な住まいに感じる」55.8%、「建物価格が高そう」46.2%、「地球環境にやさしい」42.4%が続きます。光熱費の節約と快適な暮らしへの期待、地球環境への貢献といったプラス面への期待の他、初期費用が高いというイメージもあるようです。
知りたい省エネ情報は「光熱費の目安」が約7割で最多
「住宅の省エネ性能について、どのような情報があると安心して判断できますか?」という質問については、「光熱費の目安」が最も多く73.2%でした。前項の結果が示す「省エネ住宅は光熱費が安くなりそう」というイメージの通りです。
2位以下は「設備仕様の説明」50.2%、「省エネ性能ラベル(BELSなど)の表示」47.9%、「実際に住んだ人の口コミ・体験談」42.6%が続きます。
「省エネ性能が高い住宅に住むことで、具体的にどういうメリットがあるのかを知りたい」というエンドユーザーのニーズを示した結果となっています。
省エネ性能の高さは住宅の購入・契約意欲にも直結
さらに具体的に「住宅の省エネ性能が高いことによって購入・契約の意欲が高まると思いますか?」という質問に対してはエンドユーザーの38.8%が「高まると思う」、45.9%が「ややそう思う」 と回答。
合わせて84.7%が「省エネ性能は購入や契約の意欲向上につながる」と考えていることがわかります。
住宅に関する情報収集の際に、省エネ性能についての情報をどこから得ているについても質問。「不動産ポータルサイト (SUUMOなど)」が42.9%で最も多く、「ハウスメーカーや工務店のホームページ」38.1%、「SNS (Instagram、YouTubeなど)」29.7%が続きました。
不動産会社の対応は?約6割が省エネ法の対応に未着手

エンドユーザーの省エネ住宅への関心・ニーズが高まる一方で、不動産会社の対応はどうでしょうか。「改正省エネ法への対応準備はどの段階ですか?」ときいたところ、60.3%の不動産会社が「未着手」と回答。「情報収集中」29.1%が続くものの、「対応済み」はわずか5.0%という結果に。
さらに、省エネ法改正に伴う社内での取り組みについては「特に取り組んでいない」と回答した不動産会社が44.7%で最多でした。具体的な準備を進めている会社は「建築会社・施工業者との連携強化」が14.2%、「営業担当への研修・説明強化」10.6%、「社内マニュアルの整備」9.2%などがありました。
実際に「省エネ適合住宅の取り扱い物件数に変化はありましたか?」という質問には「変化はない」が39.7%で最も多く、「変化している」は22.0%という結果でした。「わからない」も38.3%と高く、多くの不動産会社が市場の変化を正確に把握できていないようです。
まとめ
エンドユーザーは省エネ住宅に対して光熱費の軽減や快適性を期待しており、住宅の省エネ性能が購入や契約の決め手となりつつあることが分かりました。その一方で、多くの不動産会社では、対応がまだまだ進んでいない現状も明らかになりました。
しかし、一部では省エネ法改正に伴う様々な取り組みや準備をしている不動産会社もあります。省エネという観点で物件の差別化を考えている賃貸オーナーにとっては、省エネ住宅のメリットや住み心地をエンドユーザーに効果的にアピールできる不動産会社が心強い味方になってくれるでしょう。
さらに、新築については省エネ基準適合が標準となるなか、更なる性能向上の検討や省エネ以外の差別化がカギになってきそうです。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年8月6日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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