「複数の生活拠点」を持つ人の割合は全体の5.1%。コロナを経て7年ぶりに実施された人口移動調査を読む

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公開日:2024年8月21日
更新日:2024年8月22日
「複数の生活拠点」を持つ人の割合は全体の5.1%。コロナを経て7年ぶりに実施された人口移動調査を読む1

厚生労働省のシンクタンクである国立社会保障・人口問題研究所が、2023年に実施した『第9回人口移動調査』の結果を取りまとめ、公表しました。1990年以降、5年ごとに行われてきたものの、新型コロナウイルス流行により7年ぶりの実施となりました。この間に人口はどのように移動したのでしょうか。

人口移動調査とは

「複数の生活拠点」を持つ人の割合は全体の5.1%。コロナを経て7年ぶりに実施された人口移動調査を読む2

人口移動調査は、日本の人口移動の実態とその背景を明らかにし、将来の移動の傾向を予測するための基礎データをとることを目的とした調査です。第1回は1976年実施の「地域人口移動に関する調査」で、1990年の第3回調査以降から「人口移動調査」として2016年の第8回調査まで5年ごとに実施されてきました。

第9回調査の実施は2020(令和2)年の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大によってスケジュールが見直され、前回調査から7年後の2023年7月1日に実施されました。

この調査では、他の公的統計では把握することのできないライフイベント(出生・学校の卒業・就職・結婚等)ごとの居住地、現住地への移動理由や将来の移動可能性などを把握することができます。今回の第9回調査では、新型コロナウイルス感染症の拡大による引っ越しへの影響や、複数の生活拠点に関する調査項目が新たに設けられました。

調査対象は、都道府県別無作為抽出により選定された全国1,000調査地区内のすべての世帯。紙に印刷された調査票への記入やオンライン回答を選ぶことができます。

対象世帯数は 4万5,844世帯で、このうち62.1%にあたる2万8,461世帯が有効回収世帯となっています。

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5年前から居住地が移動した人は23.3%

まず、単純な人の動きを見てみると、5年前の居住地が現在の居住地と異なる人の割合(5歳以上)は23.3%で、第8回調査(2016年)の22.4%と比べると、0.9ポイント上昇しました。属性ごとの割合は次の通りとなっています。

【男女別】

男性が23.6%、女性が23.1%と男性の方が若干高く、男性は都道府県間、女性は区市町村内での移動が比較的高くなっています。

【年齢別】

もともと移動割合が高い 20 歳代後半〜30歳代前半に加えて、40 歳代でも前回調査より上昇幅が大きくなりました。

また、前回調査までは70歳以降の移動割合が年齢とともに低下していましたが、今回の調査では70-74歳(11.8%)→ 75-79歳(13.1%)→ 80-84歳(14.7%)と、高齢期で移動割合が増えていく傾向が見られました。

【都道府県別】

5年前の居住地が現住地と異なる人の割合は沖縄県(34.4%)が最も高く、東京都、茨城県、神奈川県、埼玉県が続きます。東京都とその近隣県では、国外を含む県外から移動した人の割合も高くなっています。

一方で、移動した人の割合が低いのは鳥取県、島根県、山形県。これらの県は県外からの流入も少なくなっています。

現在地への移動理由は?年代別でも違いあり

「複数の生活拠点」を持つ人の割合は全体の5.1%。コロナを経て7年ぶりに実施された人口移動調査を読む2

次に、移動理由を見てみましょう。今回の調査では16の選択肢からの選択方式をとっています。最も割合が高いのは「住宅を主とする理由」で38.9%、続いて「その他」14.8%、「職業上の理由」13.9%、「家族の移動に伴って」10.1%となりました。

前回調査と比較すると、「住宅を主とする理由」と「職業上の理由」が上昇する一方で、「親や子との同居・近居」「入学・進学」、「結婚・離婚」が減少。今回から新たに加わった選択肢の「同棲」は3.2%でした。

移動はライフステージの変化にともなうことが多いため、年代別でも違いが出ています。15-29歳、30-39歳、40-49歳、50-64歳、65歳以上の区分でみると、15-29歳を除くすべての区分で「住宅を主とする理由」が最も高く、30-39歳で約4割、40-49歳と50-64歳で約45%、そして65歳以上では半数弱となっています。

15-29歳の若い層では「職業上の理由」が最も高く、約4分の1。「親や子との同居・近居」は、15-29歳では3.1%と最も低いものの、30歳代で4.0%、40歳代で4.8%と年齢とともに上昇し、65歳以上で12.4%と最も高くなりました。

5年後は?移動可能性が活発な年代に変化

未来のことに目を向けてみると、5 年後に居住地が異なる可能性が「大いにある」、「ある程度ある」と回答した人は17.2%で、前回調査(2016年)の17.3%から大きな変化はありませんでした。前回と同様に、移動可能性のある人の割合は東京都が最も高くなっています。

年齢別では、移動の可能性は10代後半から急激に高くなり20歳代でピークとなり、30代以降は低下します。65歳以上は若年層ほど移動可能性が高くなく、前回も同様の傾向となっています。

前回と今回を比較すると、移動が活発な20歳代のなかでの移動可能性が最も高くなる年齢に違いが見られます。移動可能性が最も高くなる年齢は、前回は20-24 歳の48.7%でしたが、今回は25-29歳の47.2%が最も高くなりました。また、30歳代から40歳代前半にかけても今回の方が移動可能性は若干高まっています。

コロナによる影響は? 99%が「影響なし」

今回の調査で新しく加わった調査項目として、コロナ禍による影響があります。具体的には、「新型コロナウイルス感染症拡大による引っ越しへの影響として最も当てはまるものをお答えください」という質問項目に対して、6項目から回答を選択。結果は以下のようになりました。

新型コロナウイルス感染症拡大による引っ越しへの影響(%)
1 引っ越さなかった(もともと予定なし) 84.9%
2 予定の場所に引っ越した 5%
3 引っ越し先を変えた 0.1%
4 引っ越しの予定を取りやめた 0.1%
5 予定はなかったが引っ越した 0.4%
6 その他(引っ越し時期を変えた等) 0.3%
不詳 9.2%

このうち1と2を「コロナの影響なし」、3〜6を「影響あり」とすると、引っ越しにコロナの影響があったのは約1%。

ほとんど影響がなかったように思われますが、引っ越しの予定があった人(2~4)のなかで予定の場所に引っ越さなかった人、または引っ越さなかった人(3または4)の割合は4.1%であることから、「移動を予定していた人のなかでは一定の影響があったことがうかがえる」とまとめています。

今回初めて調査された「複数の生活拠点」の結果は?

「複数の生活拠点」を持つ人の割合は全体の5.1%。コロナを経て7年ぶりに実施された人口移動調査を読む2

こちらも今回からの調査項目「複数の生活拠点」ですが、全体の5.1%が「持っている」と回答。男女別では男性5.8%、女性4.4%と男性の方が高くなっています。年齢別では80代で割合が最も高く、次いで55-59歳・20-24歳で同じ程度のピークが来ています。拠点の数は居住を含め2拠点が8割を占めました。

別の生活拠点を持つ目的は「家族と暮らす」が21.4%、「仕事・学業」が21.0%で大きく、次いで「その他」11.5%、「家族・親族の介護・支援」6.9%、「生活の質」4.8%、「病院・施設等への入所」2.4%となりました。

アメニティを求めた、いわゆる「生活の質」を目的とした多地域居住が注目されがちですが、そのようなケースは少数。多くは仕事・学業や家族と別居住、介護といった非自発的な理由によるものであることがわかりました。

まとめ

今回の調査では、東京をはじめとした大都市圏で人口の移動が活発なこと、この5年で75歳以上の高齢者の移動が増えたことなどが明らかになりました。

また、複数拠点をもつことが必ずしもポジティブなものではなく、仕事や介護などといった理由で移動している人も多いことがわかりました。

人の大きな流れは、賃貸経営に直接関連するものではありません。しかし長い目での人口増減や我が国の今後の政策を予測するためには有効といえます。定期的に目を通しておくと良いでしょう。

※この記事は2024年8月20日時点の情報をもとに作成しています

記事・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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