2019年度「税制改正」と、知っておきたい「インボイス方式」

  • 相続/節税/保険

税制改正のうち、相続税・贈与税に関する主な改正点を税理士・森先生に解説してもらいます。また、2023年から導入予定である「インボイス方式」についても、影響が及ぶ大家さんが多いと思われるのでポイントをお聞きしました。

税理士 森 広忠氏

シンプルタックス森会計 森広忠税理士事務所 所長

大家さん専門税理士

ネットワーク「Knees」メンバー


名古屋市出身、名古屋経済大学大学院卒業後、2008年シンプルタックス森会計【森広忠税理士事務所】設立。税理士として、個人事業主・中小企業の顧問を担当。実家が古くからの地主で、アパート、貸倉庫、貸地、貸家、月極駐車場の賃貸経営経験あり。顧問先に不動産賃貸業者が多く、不動産・不動産管理会社を利用した所得税・法人税・相続税の節税相談の経験が豊富。


今回の改正は、大家さんへの影響は少ない

今回の税制改正は例年に比べて目玉が少なく、大きな変更はありません。その中でも大家さんが気になる資産税・相続税に関わる項目について取り上げてみました。各項目の要点をまとめているので合わせて確認してください。

①個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の創設

これは従来あった、中小企業のスムーズな事業承継を促すための納税猶予制度の個人事業者版です。ただし、この制度を使うと現行の小規模宅地等特例の適用を受けることができなくなることと、事業用資産に不動産貸付事業(大家業)で使用している資産は除かれたので、大家さんでこの制度を使う方は少ないと思われます。

②特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し

相続の発生前に駆け込みで不動産を購入したりして、この制度を無理に利用する人が多かったため、相続開始3年以内に事業の用に供された宅地は除外されることになりました。また、2019年3月31日以前から事業の用に供されている宅地等についても適用されません。

③教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の特例の縮減・延長

受け取る側の所得制限(前年の合計所得が1000万円以下)が導入され、適用期間が2年間延長されました。ただし、実際にこの制度を活用している方は多くないため、あまり大きな影響はないと言えるでしょう。

登録しないと消費税分が減収になる大家さんも!?

一方で、大家さんのうち、課税対象の店舗・倉庫・月極駐車場などの賃料収入、太陽光発電の売電収入のある方に大きく影響を及ぼすのが、2023年から導入が予定されている「インボイス方式(適格請求書等保存方式)」です(※適格請求書:売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるための書類)。

この制度は、2019年10月の消費増税と合わせて導入される予定の「軽減税率制度」に対応するために導入されます。また、免税事業者が消費税を受け取っても国に納付する必要がなく、益税となってしまっていた問題を解決する効果も期待されています。

従来売上が1000万円未満の場合は、課税売上があっても免税事業者の扱いでした。しかしこの方式の下では、大家さんが課税事業者として税務署に登録し「適格請求書発行事業者」にならないと、今まで受け取ってきた消費税分の金額を受け取ることができなくなる可能性が高いのです。

なお、住宅貸付の賃料収入のみの大家さんは今後も免税事業者であることに変わりはありません。新方式が導入されても、影響はありませんのでご安心ください。

しかし、課税対象の賃料収入、例えば倉庫を月77万円、年924万円(税込)で貸している場合、大家さんが免税事業者のままだと適格請求書を発行できず、倉庫の借主である事業者から家賃の消費税額を受け取ることができなくなります。同じように、太陽光発電の売電収入についても、現在は電力会社から消費税分も込みで支払われていますが、発電先(大家さん)が適格請求書発行事業者でなければ消費税分は受け取れず、減収となってしまいます。

適格請求書発行事業者になるには登録申請書を所轄税務署に提出する必要があります。対象となる大家さんは税理士等と相談して、今後の対応を検討してください。

2019年度税制改正 相続税・資産税に関わる主な改正内容

個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

適用時期 2019年1月1日~2028年12月31日の相続・贈与等

個人事業者の「特定事業用資産(宅地、建物、その他一定の減価償却資産)」について、相続等または贈与によりその「特定事業用資産」を取得し、事業を継続していく場合には、適用対象部分の課税価格の100%に対応する相続税・贈与税額を納税猶予する制度です。ただし、現行の事業用の小規模宅地特例との選択適用となるほか、貸付事業(アパート、駐車場等)は、対象外となります。

特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し

適用時期2019年4月1日以後の相続等

相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等は、小規模宅地等の特例の対象から除外することになりました。駆け込みで土地を購入したり、事業で使うようにし、制度を無理に利用しようとする方が多かったためです。ただし、当該宅地等の上で事業の用に使用されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除きます。

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税の措置の見直し

適用時期2021年3月31日まで

いずれの資金についても受け取る側の所得税制限(前年の合計所得が1000万円以下)が導入され、適用期間が2年間、2021年3月31日までに延長されました。そのほか、教育資金については23歳以上の受贈者については趣味の習い事等の費用を非課税対象から除外するなど、使途の見直し等を行っています。一方で30歳以上の就学継続には一定の配慮を行うことになりました。

2023年10月~「インボイス方式」が導入予定

2019年10月の消費増税に伴って導入される「軽減税率制度」に対応するため、2023年10月1日以降は、一部の例外を除き、適格請求書発行事業者が発行した適格請求書(インボイス)を受け取らないと、経費にかかった消費税を売上で受け取った消費税から差し引くことができなくなる制度です。なお、適格請求書発行事業者登録は2021年10月1日から可能になります。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2019年6月4日時点のものです。

イラスト/福々ちえ

スムスム君

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