令和7年度税制改正大綱が発表!住宅ローン減税の延長など住宅関連の項目まとめ
2024年12月20日に政府与党が「令和7年度税制改正大綱」を決定しました。防衛増税や「年収103万円の壁」の見直しが話題になっていますが、住宅関連でも動きがあります。どのようなものがあるのか、詳しく紹介します。
【所得税・個人住民税】住宅ローン減税は子育て世帯を手厚く
住宅ローン減税については、子育て世帯等の借入限度額の上乗せ及び床面積要件の緩和措置を令和7年度も引き続き実施することになりました。
住宅ローン減税はすでに2024年の入居分から減税の対象となる借入額の上限が引き下げられていますが、子育て世帯等は住宅の性能によって限度額に上乗せされます。子育て世帯等とは「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」を指しています。
具体的には以下の通りで、赤枠内が今回改正された内容です。1年間の控除率は借入金額の0.7%です。
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【所得税】既存住宅の子育て対応リフォーム特例措置も延長
既存住宅については、子育て対応リフォームにかかる所得税の特例措置が引き続き実施されます。
「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」が以下のリフォームを行う場合に、工事費用相当額の10%を所得税から控除する措置が1年間延長されることになります。
① 住宅内における子どもの事故を防止するための工事
② 対面式キッチンへの交換工事
③ 開口部の防犯性を高める工事
④ 収納設備を増設する工事
⑤ 開口部・界壁・界床の防音性を高める工事
⑥ 間取り変更工事(一定のものに限る)
対象工事の限度額は250万円(最大控除額は25万円)ですが、限度額を超えた分とその他の増改築等工事についても一定の範囲まで5%の税額控除があります。
【不動産取得税】事業者によるリフォーム工事を促進
事業者が既存住宅をいったん取得し、リフォームした上でエンドユーザーに販売する買取再販において、不動産取得税の軽減措置の適用期限を2年間延長することも決まりました。
背景にあるのは「2030年までに既存住宅流通およびリフォームの市場規模を14兆円とする」という目標。ノウハウのある事業者が住宅の質の向上を行うことが消費者に安心感を与え、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化に大きく寄与すること、さらに空き家の有効活用にも有力な手段としています。
住宅部分は築年数に応じて一定額を減額。敷地部分は対象住宅が安心R住宅である場合または既存住宅売買瑕疵保険に加入する場合に、住宅の床面積の2倍にあたる土地面積相当分の価格等が減額されます。
【不動産取得税・固定資産税】サ高住建築への優遇を延長
サービス付き高齢者向け住宅の供給促進を目的とした税制優遇も盛り込まれています。新築のサービス付き高齢者向け住宅にかかる以下の特例措置が2年間延長されます。
固定資産税は2/3を参酌基準として1/2~5/6の範囲内で、条例で定める割合を5年間減額。参酌基準とは、条例などを制定するにあたって十分参照しなければならない基準のことです。
不動産取得税は住宅の課税標準から1,200万円を控除する措置が延長されます。サービス付き高齢者向け住宅の登録基準には「床面積は原則25㎡以上」「バリアフリー構造」「状況把握サービスがあること」「生活相談サービスがあること」「入居者から敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと」といったものがあります。
【法人税・消費税等】老朽化マンション再生のための特例を創設
高経年マンションの増加が懸念される日本。2013年時点では41.5万戸であった築40年以上のマンションは、2023年末には137万戸に達し、20年後(2043年)には463.9万戸にもなると予測されています。これらのマンションは修繕積立金が不足し、必要な大規模修繕工事がなされないまま放置される危険性をはらんでいます。
老朽化マンションの再生については、区分所有者の費用負担の問題が合意をみられないことが大きな障害となっています。それらを解消するために、区分所有関係の解消・再生のための仕組みづくりと、事業の施行者(組合)に対する特例措置を創設することになりました。
事業の施行者(組合)には、収益事業以外の所得にかかる法人税・法人住民税・事業税・事業所税が非課税となり、消費税についても特例が適用されます。
【固定資産税】マンションの大規模修繕や防災施設の優遇を延長
マンション老朽化の問題についてはもう一点あり、固定資産税の優遇措置が延長されます。
一定の要件を満たすマンションにおいて、長寿命化に資する大規模修繕工事が実施された場合に、建物部分の固定資産税額を減額するというもの。大規模修繕工事とは「外壁塗装等工事」「床防水工事」「屋根防水工事」で、適用には3つすべてを実施する必要があります。
減額率は参酌基準を1/3として、1/6~1/2の範囲内で市町村の条例で定められます。
上記の他、「防災街区整備事業の施行に伴う新築の施設建築物に係る税額の減額措置」「被災住宅用地等に係る特例措置及び被災代替家屋に係る税額の特例措置」の延長が決定。固定資産税や都市計画税が減額されます。
まとめ
住宅関連以外にも、賃貸経営に関連しそうな税制改正としては、青色確定申告制度の見直しや国民健康保険の負担上限引き上げなどがあります。
税制は毎年見直されているため、優遇が受けられる制度などがあれば積極的に利用していきたいものです。同様に、もし改正によって負担が増えることになっても、対応できるよう備えておくことも大切です。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年1月7日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。