土地・建物の等価交換とは?実施するメリットや注意点、仕組みを解説
土地の活用方法のひとつである「等価交換」をご存じでしょうか?等価交換は、土地の所有者と建物の建築会社が協力して行う事業方式です。不動産の等価交換にはメリットもデメリットもあるため、それらを把握して行うことが重要となります。等価交換の仕組みと注意点を解説します。
等価交換とは
不動産における等価交換
不動産における等価交換は、土地の所有者と建築会社によって行われます。建築会社は開発業者、ディベロッパーなどとも言います。土地の所有者は建築会社に土地を提供し、建築会社は建築費を支出して建物を建築します。
建物の竣工後、土地の一部と建物の一部を所有者と建築会社が等価で交換し、お互いが土地と建物の所有者になります。所有権の割合は土地価格と建築費などによって変わります。等価交換には、「全部譲渡方式」と「部分譲渡方式」の2つがあります。
全部譲渡方式では、土地の所有者は等価交換事業を行う土地をいったんすべて建築会社に売却します。建物が完成した後に、土地のオーナーは改めて「売却した土地価格と見合う分の土地と建物」を購入。土地の所有権を持つ人が複数存在したり、その他の理由で事業が滞るリスクが懸念されたりする場合に採用されることがある方法です。
部分譲渡は、土地の所有者が「取得する建物代金に相当する土地」を建築会社に売却する方法です。例えば、6億円の土地に4億円の建物を建てる場合、「土地+建物」の合計は10億円。所有割合は6:4であるため、土地のオーナーは2億円分の土地を建築会社に売却し、2億円分の建物の権利を得ます。
等価交換後の所有割合も、土地オーナーが「土地4億円分+建物2億円分」で全体の60%、建築会社が「土地2億円分+建物2億円分」で40%となります。通常の等価交換では、この方式が採用されるケースが多いです。
日常生活における等価交換
「等価交換」とは、もともと等しい価値のもの同士を交換することを意味します。例えば、1万円分の買い物をすることも「1万円の品物と1万円の価値がある紙幣を等価交換する」と言いかえることができます。私たちは日常生活でも等価交換を行っているのです。
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等価交換のメリットとデメリット
等価交換のメリット
等価交換には多くのメリットがあります。うまくメリットを生かすことができれば、土地の活用方法としてとても有効です。等価交換の主なメリットは次の通りです。
所有している土地が元手になるため、土地の所有者は自己資金がなくても建物を建築し、事業が始められます。つまり、借入金や自己負担なしで土地活用ができるのが最大のメリットです。もし将来、事業による収益が減少した場合も借入金の返済の心配がなく、リスクを抑えることができます。
土地を売却したとき、通常は譲渡所得税がかかりますが、等価交換では一定の要件を満たした場合に譲渡所得税を将来に繰り延べることができる特例があります。通称「立体買換特例」と言われるもので、将来建物を売却するときまで譲渡所得税の課税を先送りにできます。
ただし、等価交換に加えて現金を受け取った場合、その分には譲渡所得税が課税されます。また、等価交換で手に入れた建物は定められた期間内に自宅もしくは事業用に利用しなければなりません。
所有している土地が更地で、財産がその土地のみの場合、誰が相続するかでもめたり、共有にすることでトラブルになったりするリスクがあります。また、公平にするために複数の相続人で分筆すると、土地の利用価値が下がってしまう可能性も。
等価交換によって建物を建てることで、部屋数や収益によって遺産分割がしやすくなるというメリットがあります。また、要件を満たせば相続税の節税にもつながります。
等価交換のデメリットと注意点
等価交換にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。メリット・デメリットの両方をしっかり把握し、自分の場合にはどちらが大きいかを検討することで収益を最大化できるでしょう。等価交換のデメリットには次のようなことが考えられます。
土地の権利を一部手放し、建物を手に入れるのが等価交換です。手放した土地を取り戻すには買い戻す必要がありますが、その可能性はかなり低くなります。他に有効な活用方法が見出せそうな土地や先祖伝来の土地などの場合は、より慎重に検討する必要があります。
所有している土地に賃貸物件を建築した場合、通常は建築費を減価償却費として計上することで所得税を圧縮し、賃貸経営における利回りを大きくすることができます。
しかし、等価交換で取得した建物は交換元の土地の取得価額を引き継ぐことになっており、自己資金で建築したときより減価償却費が小さくなります。そのため節税のメリットが少なく、結果的に利回りも低くなるのです。
土地を所有してさえいれば、必ず等価交換が利用できるわけではありません。ある程度収益が見込める土地でないと、共同事業者となって建築費を出資してくれる建築会社は現れません。所有している土地の立地や、ときには広さによって等価交換の実現そのものに影響がある点はデメリットと言えるでしょう。
等価交換には、土地の価格査定と建物の価格査定の両方が必要で、土地オーナーと建築会社の双方が納得しなければ成立しません。不動産鑑定士などプロの力を借りながら慎重に話し合いを進めていく必要があり、その結果、成立までに時間がかかるのがデメリットです。
等価交換方式の仕組み
前項で、等価交換の成立までに時間がかかることをお伝えしましたが、土地と建物の査定が終わったあと、土地のオーナーと建築会社がそれぞれどのように所有持ち分を決めるのかをもう少し詳しく解説します。
建築会社と土地のオーナーがそれぞれ最終的に所有する床面積を「還元床(かんげんしょう)」といいます。還元床面積を決める方法には「出資比率による方法」と「売価還元による方法」があります。
出資比率による方法
出資比率による方法とは、土地の所有者が提供する土地価格と、建築会社の出資した建築費の比率で建物の専有面積を案分する方法です。建物の専有面積とは階段や廊下などの共有部分を除く、賃貸や売却の対象となる部分を指しています。
例えば、6億円の土地に等価交換で4億円の建物(専有面積2,000㎡)を建てる場合、出資比率は6:4であるため、土地オーナーが手にする還元床は1,200㎡となります。「部分譲渡」の項でも同じ例が出てきましたが、等価交換の基本的な考え方となります。
売価還元による方法
出資比率による方法は、等価交換によって分譲マンションを建てる際に用いられることがあります。建築会社が出資した建築費から適正利益の回収に必要な売上高を算出し、それを確保できる専有面積を取得します。
この方法では、所有している土地の価格は関係なく、計算のもとになるのは建築会社の出資額とその回収に必要な適正利益率、建てた建物の平均分譲単価です。
仮に建築費が4億円(専有面積2,000㎡)、適正利潤が20%、完成した建物の平均分譲単価が50万円/㎡とすると建築会社の必要売上高は4億円÷(100%-20%)=5億円。そのために必要な床面積は5億円÷50万円=1,000㎡です。建築会社が1,000㎡を所有し、残り1,000㎡がオーナーの還元床となります。
等価交換を実施する流れと成功のポイント
等価交換を実施する流れ
立地の良い土地であれば、建築会社から売却の提案が持ち込まれることも多くあります。売却の意思がない場合も、等価交換という形で複数の建築会社から提案を受けるかもしれません。共同事業者でもある建築会社はいわば運命共同体。会社選びはとても大切です。
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建築会社を決める・打ち合わせをする
まずは土地活用の最大のポイントである建物の建築会社を選び、打ち合わせを行います。所有している土地にマンションを建てて分譲するのか、賃貸経営を行うのか、自宅もその一部に含めるのかなど、立地や広さによってもふさわしい活用方法は異なります。
それぞれの活用方法によって、ニーズをとらえた建物を建てられる会社を選ぶことで、将来的な収益が大きく変わってくるでしょう。また、建物の活用方法に応じたキャッシュフローのシミュレーションもこの段階で検討します。 -
土地所有権の譲渡方法を決める
冒頭で解説した「全部譲渡方式」か「部分譲渡方式」かを決定します。「全部譲渡方式」では不動産取得税と登録免許税が発生してしまうことに注意しましょう。
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契約を締結する
土地の査定、建物の設計や建築費の見積もりを経て、等価交換契約を締結します。これらは建築会社からの提案をもとに決まりますが、建物の仕様はもちろん、還元床がどれくらいか、その算出方法は妥当かどうかをしっかり検討しましょう。もし可能であれば、弁護士に契約内容を確認してもらうと安心です。
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全部譲渡の場合は土地を売却する
全部譲渡方式の場合は、先に土地や建物をすべて売却する形になります。もし所有する建物にテナントや入居者が入っている場合、事前に立ち退きなども済ませておく必要があります。
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契約内容に添った設計・建築を開始
等価交換で建築される建物は賃貸マンションやオフィスビルなど、それなりに大きな規模であることが多いもの。そのため工事期間もある程度長くなります。マンションの建築期間(工期)は「階数+3~5カ月」が目安とされているため、例えば10階建ての建物であれば竣工まで1年を超える可能性もあるということです。
そのため、工事期間中は設計・施工の進捗状況を把握しつつ、不動産マーケットの動向にも目を配り、必要であれば経営計画の修正を行います。 -
土地・建物の所有権を譲受する
建物が完成したら契約内容に基づき、土地・建物の所有権を受け取り、事業のスタートです。
成功するための条件と準備
等価交換は、後から後悔しても利用前の状態に戻すことはできません。長期にわたる事業になるため、やるなら安定して収益をあげたいもの。等価交換を成功させるために、次のような準備を万全にしましょう。
等価交換は自分ひとりで行うものではなく、多くの専門家の協力が必要になります。共同事業のパートナーとなる建築会社は長く付き合っていくことになるため、まずは実績があって信頼できる会社を選ぶべきでしょう。少しでも不明点があれば質問し、納得できる土地活用法を提案してもらいます。
不動産の査定には不動産鑑定士、権利関係は弁護士、税務については税理士など各分野の専門家の力を借りることも大切なポイントです。特に不動産鑑定士は、依頼する人によって査定額が異なることも。信頼できるプロを選びたいものです。
出資比率や所有権の配分の条件はもちろん、税務について正確に把握することも重要です。等価交換は建築会社主体で進むことが多いですが、業者まかせにせず、土地のオーナーも当事者意識をもって臨みましょう。
等価交換がおすすめなケース
借り入れをせずに建物を建てたい
金融機関から借り入れをせずに土地活用ができることは等価交換の大きなメリット。相続などで土地を所有することになったものの自己資金がなく、そのままにしておくのも固定資産税がかかってしまうから活用したい、などといったケースに向いています。
建築費の返済リスクに悩まされることなく、不動産運用のノウハウを持った企業の力を借りながら土地活用ができます。
土地の権利を持っておくことにこだわりがない
等価交換は、部分的にとはいえ土地の所有権を手放す行為です。そのため、なんとしてでも権利を所有しておきたい人にはおすすめできません。
逆に、所有権にこだわりがなく、所有している土地を使って事業を行いたい人、それによって安定収入を得たい人にはメリットのある方法といえます。
広く条件の良い土地を所有している
マンションなどの収益物件を建築するにあたり、駅の近くや主要道路に面している広い土地であれば、活用によって安定した経営が期待できます。このような土地は固定資産税や相続税も高額になるため、土地の所有者にとっても収益物件を建てることが望ましいのですが、事業規模が大きくなるほど、建築費も莫大なものになります。
そのための自己資金を用意できない、もしくは用意したくないのであれば、建築会社と共同で大きな事業を行うことができる等価交換は魅力的な方法と言えるでしょう。
相続対策を考えている
土地は更地のまま相続すると高額な相続税が発生します。しかし、等価交換によって収益物件を建築すれば、相続税の負担を大きく減らすことができます。さらに、相続人が複数いる場合もそれぞれの持ち分を分けやすくなります。
等価交換するなら!おすすめ企業をピックアップ
等価交換を考えたときに重要なポイントとなるのが建築会社選びです。等価交換による土地開発の実績はもちろん、長く収益を生む提案力や、将来にわたる手厚いサポートも期待できる会社を選びましょう。
東急リバブル(株) は、売買・賃貸仲介と販売を中心に、50年以上の歴史を持つ総合不動産流通会社。これまでの分譲マンションの実績のうち3分の2以上を等価交換方式で開発してきました。つまり、それだけ多くの土地が持ち込まれ、20年近くにわたって供給実績を重ねてきたということになります。
強みのひとつは自社に販売部門を持ち、その経験値を活かした商品開発を行なっていること。オーナーの自己使用分については、一般分譲分とは異なる大型住戸や希望の間取りなど柔軟にプランニング。賃貸用にする場合も、都市型分譲マンションとして開発された「ルジェンテ」ブランドの分譲仕様で取得できるため、自宅用・収益用、両面で活用しやすくなっています。
さらに、将来売却する際には東急リバブルの仲介部門がサポート。東急不動産ホールディングスのグループ会社には、建物のメンテナンスを担うマンション管理大手の東急コミュニティや賃貸管理会社の東急住宅リースも名を連ねているため、手厚いバックアップがあります。
首都圏を中心に、土地面積60坪程度から検討が可能。「建物が老朽化し管理が難しくなってきているものの、建て替えの予算を出すのが難しい」などといった課題を抱えているオーナーはぜひ相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
自己資金や借り入れをしなくても土地活用ができ、不動産経営が始められる等価交換。土地オーナーにとっては大きな可能性を秘めた方法ですが、一度利用してしまうと後戻りはできません。
等価交換のデメリットもしっかり把握したうえで、信頼できる建築会社や各方面のプロの力を借りながら慎重に検討しましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年1月7日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。