終活をしている人ってどれくらいいるの?「相続・終活に関する全国調査2025」から具体的になにをしているのかなどをピックアップ

高齢化社会を迎えたいま、身近なものとなった「終活」という言葉。実際にどれくらいの人が終活をしているのか、具体的な終活の内容や、終活としてどのようなことが望まれているのかは気になるところです。相続や終活に関連する事業を手がける(株)ルリアンが実施した『相続・終活に関する全国調査2025』の内容を抜粋してご紹介します。
遺産分割協議で時間がかかったもの、かかりそうなものは?
調査の対象は全国の40~69歳の男女1万6,342人。最初に聞いているのが、相続手続きを実際に経験した人と未経験者、それぞれの遺産分割協議に対する意識です。
経験者に「遺産分割協議の中で時間がかかったもの」、未経験者に「遺産分割協議の中で時間がかかると思うもの」を複数回答で聞いたところ、以下のような結果となりました。
【経験者】相続手続きで時間がかかった協議項目 | ||
順位 | 協議項目 | 回答割合 |
1位 | 現金や預貯金 | 43.9% |
2位 | 親が居住していた土地・建築物 | 41.0% |
3位 | 時間がかかると思うものはない | 18.6% |
【未経験者】相続手続きで時間がかかると思う協議項目 | ||
順位 | 協議項目 | 回答割合 |
1位 | 時間がかかると思うものはない | 36.8% |
2位 | 現金や預貯金 | 28.4% |
3位 | 親が居住していた土地・建築物 | 24.3% |
上位3位に入っている項目は同じですが、順位と割合に大きな差がありました。4位以下も多くの項目で経験者の方の割合が大きく、未経験者はやや楽観的にとらえている傾向が見られます。
大家さん向けワンポイントアドバイス

アパートや土地など収益不動産が相続財産に含まれる場合、遺産分割が長引くことも多いため、あらかじめ所有物件の情報や分割の方向性をまとめておくことが、家族間のトラブル防止につながります。
終活を行っている人の割合は21.2%
実際に終活を行っている人の割合は全体で21.2%でした。「終活は行っていない」と回答した約8割の方に対し、「終活の必要性を感じているか」を聞いたところ、「必要性を感じている」43.8%、「必要性を感じていない」6.3%、「わからない」49.8%となりました。
全体では、40~69歳で終活をしている人が約2割、3割強が必要性を感じつつしていない、約4割がまだイメージできていないということになります。
大家さん向けワンポイントアドバイス

物件オーナーにとっての終活は、建物の状態や契約関係、今後の運用方針を整理しておくことから始められます。まずは「今あるものを把握する」だけでも、大きな一歩です。
終活実施割合のトップ3は東北地方が独占。年代別/地域別では、50代以下と60代以上で傾向が異なる

終活実施割合を都道府県別で集計したところ、1位が宮城県(29.3%)、2位が福島県(28.2%)、3位秋田県(28.0%)と東北地方の3県が上位を占めています。これらの県では、3割近くが終活を行っていることになります。しかし同じ東北地方でも青森県は46位(15.5%)とトップ3の半分ほどの割合でした。
4大都市圏である1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)、中京(愛知)、関西(京都・大阪・兵庫)、北九州(福岡)の9都府県の中で、20位までに入ったのは京都府(15位)のみでした。東京都は26位で、21.2%と全体の終活実施割合と同じ割合が出ています。
終活の実施割合が最も少ないのが島根県(12.5%)でした。
さらに、年代別で都道府県をランキングしてみると、50代以下と60代以上で異なる傾向が見られました。
50代以下 |
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順位 | 都道府県 | 回答割合 |
1位 | 福島県 | 27.4% |
2位 | 岩手県 | 26.1% |
3位 | 宮城県 | 25.3% |
4位 | 宮崎県 | 24.4% |
5位 | 三重県 | 24.3% |
6位 | 愛媛県 | 24.1% |
7位 | 福井県 | 23.9% |
8位 | 長野県 | 23.1% |
9位 | 秋田県 | 23.0% |
10位 | 和歌山県 | 22.3% |
60代以下 |
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順位 | 都道府県 | 回答割合 |
1位 | 秋田県 | 41.9% |
2位 | 山形県 | 40.8% |
3位 | 京都府 | 37.2% |
4位 | 大分県 | 36.5% |
5位 | 宮城県 | 35.8% |
6位 | 香川県 | 35.5% |
7位 | 兵庫県 | 34.6% |
8位 | 滋賀県 | 34.4% |
9位 | 三重県 | 33.8% |
10位 | 徳島県 | 33.5% |
50代以下では、1位が福島県(27.4%)、2位岩手県(26.1%)、3位宮城県(25.3%)とトップ3が東北地方に。以下は宮崎県、三重県、愛媛県、福井県、長野県、秋田県、和歌山県とバラつきがあります。
60代以上は、1位秋田県(41.9%)、2位山形県(40.8%)までは東北地方ですが、3位に京都府(37.2%)が入り、以下大分県、宮城県、香川県、兵庫県、滋賀県、三重県、徳島県と近畿・四国地方の県が多く入っています。また、終活割合も年代に応じて高くなっていることがわかります。
具体的な終活内容で最も多いのは「物の整理・不用品の処分」
終活を行っている人は、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。複数回答で以下のような内容が挙がっていました。
行っている終活の内容 |
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順位 | 内容 | 回答割合 |
1位 | 物の整理・不用品の処分 | 10.6% |
2位 | 遺言書作成 | 4.7% |
3位 | 生前贈与など相続税対策 | 4.5% |
4位 | 保険の見直し・保険を活用した相続対策 | 4.3% |
4位 | エンディングノートの作成などを通じ、 必要な事柄をまとめている |
4.3% |
6位 | 墓じまい・永代供養・散骨など | 3.6% |
7位 | 死後の手続きの準備(葬儀予約・死後事務委任) | 2.5% |
最も多かったのが「物の整理・不用品の処分」で、終活を行っている人の約半分が実施しています。積極的な準備まではいかなくても、日ごろから身の回りの荷物を少しずつ減らしているという人も多いのかもしれません。
大家さん向けワンポイントアドバイス

相続時の混乱を避けるためには、不動産以外の資産状況や契約の有無も含め、一覧化しておくのが効果的です。管理会社や修繕履歴の情報も整理しておくと、引き継ぎがスムーズになります。
親に遺しておいてほしい情報、自身が遺しておきたい情報は?
親が亡くなるまでに遺しておいてほしい情報/ 遺してほしかった情報トップ5 |
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順位 | 40代 | 50代 | 60代 |
1位 | 土地のこと | 銀行口座情報 | 銀行口座情報 |
2位 | 銀行口座情報 | 土地のこと | 土地のこと |
3位 | 財産状況 | 財産状況 | 財産状況 |
4位 | 家の相続 | 家の相続 | 家の相続 |
5位 | 保険情報 | 保険情報 | 保険情報 |
自分が亡くなるまでに家族に遺したい情報トップ5 |
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順位 | 40代 | 50代 | 60代 |
1位 | 銀行口座情報 | 銀行口座情報 | 銀行口座情報 |
2位 | 財産状況 | 財産状況 | 財産状況 |
3位 | 契約中のサービス | 保険情報 | 保険情報 |
4位 | 土地のこと | 契約中のサービス | 土地のこと |
5位 | 保険情報 | 土地のこと | 契約中のサービス |
各年代で順位は入れ替わりますが、項目は変わりません。自分が亡くなるまでに家族に遺したい情報については、光熱費やクレジットカード・定額制サービスなど、契約中のサービスについての情報が加わります。
いずれにしても土地・家・お金に関する項目が上位を占めることがわかりました。
大家さん向けワンポイントアドバイス

「土地のこと」「家の相続」が上位にある通り、賃貸物件に関する情報も重要視されています。特に複数物件を所有している場合は、所在・価値・活用方針の明示が求められます。
まとめ
「終活」は、残された家族への思いやりであると同時に、自分の人生を整理する大切なプロセスです。今回の調査からは、「まだ終活に踏み出せていない」人が多い一方で、必要性を感じている人も多く、全国的に意識が高まりつつあることがわかりました。
特に不動産や相続に関する情報は、家族間のトラブルの原因にもなりやすい項目です。不動産を所有している大家さんにとっては、物件の現状把握・将来的な引き継ぎ方針・相談先の明確化などを早めに準備しておくことで、円満な相続と安心できる将来設計に大きくつながります。
「いつか」ではなく、「今からできること」を。終活は難しく考える必要はなく、小さな一歩から始められます。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年5月15日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。
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