サウナ付き物件にすると2万円以上の家賃アップが可能に?自宅用サウナ×賃貸の可能性を探る
10年ほど前まではまだ珍しかった自宅用サウナ。しかし、ここ5年ほどのサウナブームを受けて自宅にもサウナを導入したいというニーズが急上昇。国内外から様々なメーカーが参入し、市場を拡大し続けています。賃貸住宅での現状はどうなのでしょうか。北欧産サウナ製品の輸入・販売を展開するtotonou Japan(株)が発表した市場調査を見てみましょう。
サウナはブームで終わる?それとも文化として定着する?
まず、サウナブームが一過性のものなのか、それとも今後も定着する可能性があるのかは気になるところではないでしょうか。それについて同調査では、同時期にトレンドとなったタピオカと比較しています。
過去20年のGoogleTrendにおける日本でのキーワード検索数をそれぞれグラフで比較したところ、タピオカは2019年に一気に上昇したのち、2020年にはブーム前の水準に戻っています。
その一方で、サウナは5年かけて右肩上がりで増加。ドラマ「サ道」や「サウナシュラン」などメディアの影響を受けてじわじわと定着していることがわかりました。
急激な山を描いてすぐに収束したタピオカに対して、サウナはゆっくりと成長していることから、「文化として定着しつつあり、急落するリスクは少ない」としています。
「自宅にサウナ」を魅力と感じる人はどれくらい?
同調査は年収800万円以上の人が対象となっていますが、そのうちサウナに行く人は45.6%。半年に1度以上の頻度でサウナを利用する人は28.9%となりました。
頻度を問わず全体に「サウナが自宅にあったら魅力的に感じますか」と聞いたところ、約37%が「とても魅力に感じる」「魅力に感じる」と回答。この割合はサウナに行く頻度が高いほど上がり、年2~3回サウナに行くライト層で過半数を、週1〜4回サウナに行くヘビー層では8割を超えます。
サウナ利用者の中から無作為に抽出した412人に「最近、サウナ付きの住宅が増えてきていることを知っていますか」と質問したところ、73.3%が「知っている」と回答。導入事例が増えていることに加えて、YouTubeやテレビなどでもサウナ付き住宅が取り上げられていることが背景にあるのではとしています。
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電気代やメンテナンスは?自宅用サウナのメリットと懸念点
自宅にサウナがあるメリットとしては「好きな時間に入れる」「よりリラックスできる」「外部施設へ行く手間がなくなる」がトップ3でした。複数回答でいずれも過半数を超えています。
「外部施設に通う費用が浮く」「外部施設より安心」「ロウリュを好きなタイミングでできる」という回答も一定数ありました。
一方で、懸念事項として回答が多かった内容が「電気代が高くなりそう」「掃除やメンテナンスが面倒」「火事になるおそれ」。
電気代については東京電力の場合の試算が示されており、1時間の利用で120円程度が一般的であることから1日に2時間・週4回と想定しても、月間の電気代は約3,840円程度であるとしています。
メンテナンスについては使用後の空焚きと数年の一度の塗装が必要なものの、乾拭きであるため一般的なお風呂掃除に比べて負担は小さいようです。
家賃アップ許容度は?専有部へのサウナ導入が大きな魅力に
さらに9割以上の回答者が専有部・共用部にサウナが導入された際、「家賃アップを許容できる」と回答。特に専有部にサウナがある場合、3割以上が2万円以上の家賃アップを許容できると答えました。
次に、自宅内に設置される「専有部サウナ」と居住者の共用ジムなどに併設される「共用部サウナ」を比較。
両方に魅力を感じる人が71.7%、専有部サウナのみに魅力を感じる人が21.8%、共用部サウナのみに魅力を感じる人が5.3%という結果になりました。自宅内に専用のサウナがあることに、より大きな魅力を感じる人が多いようです。
サウナ導入による家賃の上昇幅は1割から2割程度が目安
専有部へのサウナ設置における家賃アップ許容度についてもう少し詳しく見てみると、地域別では関東圏の回答者が特に高い家賃アップを許容する傾向が出ています。
また、現在住んでいる家の家賃別に家賃アップの許容金額を聞いたところ、高家賃物件ほど許容度も高い傾向に。15万〜30万円未満の家賃帯では「1.5万〜2万円未満」まで許容(26.0%)が最多、30万円以上の家賃の物件に住んでいる人は「3万〜4万円未満」まで許容が最多(28.0%)となっています。
以上の結果から、サウナの導入による家賃の上昇幅は「家賃の1割から2割程度」がひとつの目安ではないかとしています。
サウナの耐用年数や設置費用は?導入による利回りなど気になるポイント
サウナ導入によって家賃アップがのぞめることはわかったものの、収益に見合う投資となるのかどうかは最も気になるところではないでしょうか。
調査を行ったtotonou Japanでは、自宅用サウナの導入コストは既製品の場合で200万〜300万円程度としています。ランニングコストは、適切にメンテナンスを行った場合の耐用年数が約20〜30年間、サウナストーンや電気ストーブのヒートエレメント、ベンチの交換などのメンテナンス費用が年間約2.35万〜4.15万円。
それぞれの間をとり、ランニングコスト250万円で25年使用、メンテナンス費用を年間3万円として年間13万円の投資となります。物件家賃や将来の家賃値下げ幅などにもよりますが、1.08万円以上の家賃アップでプラスとなる計算です。
まとめ
自宅用サウナ、特に専有部への導入ニーズが高まっていること、空室対策や家賃アップにつながる可能性も大いにありそうなことがわかりました。
年々市場規模が拡大しているサウナ業界。様々な製品が開発される一方で、メンテナンスやコスト、安全性についてはまだ知られていない部分も多くあり、サウナの定着にはこれらの情報が広く浸透することが不可欠であると思われます。
自宅用サウナについては、ショールームを設けたり住宅イベントなどに積極的に出展していたりする会社も多いため、それらの場で体験し、話を聞いてみるのも良いかもしれません。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年10月30日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。