賃貸物件で省エネ性能を気にしている人は増えている?加速する住宅の省エネ化と住まい選びについての意識調査
2025年4月にスタートする新築住宅の省エネ基準適合義務化に先がけて、LIFULL HOME'Sが「物件の省エネ性能に関する意識調査」を実施しました。購入・賃貸ともに3年以内に引越しを検討している1,000人を対象に、住まい選びの際の省エネ意識を調べています。この調査結果から、賃貸に関する内容を中心にご紹介します。
物件の省エネ性能。賃貸では約半数が「意識する」
まず、次の引越し先を探す際に物件の省エネ性能を意識するかを聞いたところ、全体で70.2%が「とても意識する」「やや意識する」と回答しました。
省エネ性能を意識する人の割合が特に高い層が、引越し先として新築マンション・新築戸建てを検討している層で、どちらも9割を超えています。特に新築戸建てでは「とても意識する」という人が47.5%となっています。
引越し先として賃貸物件を検討している層では「とても意識する」21.4%、「やや意識する」36.5%と他の層に比べると少なめ。それでも合計57.9%と、過半数は省エネ性能を意識していることになります。
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意識する理由は購入と賃貸でユーザー属性に差
省エネ性能を「とても意識する」「やや意識する」と回答した人にその理由を聞いたところ、購入検討層・賃貸検討層ともに「電気・光熱費を安くしたい」が最多となっています。内訳を見てみると、新築購入検討層が54.1%、中古購入検討層が61.1%で、賃貸検討層は74.7%とかなり割合が高くなります。
2位以下は、購入層では「劣化を抑制し、永く住みたい」が続き、中古購入検討層は同率で「環境への負荷を軽減したい」が入っている一方、新築購入検討層は「住宅ローン減税を受けたい」が上位に。
賃貸物件への引越し検討者の「電気・光熱費を安くしたい」という割合が購入検討層より10%以上高い結果となったのは、比較的若年層の割合が多く、より支出を減らしたいというニーズが表れたのでは、と推察されています。
賃貸層では、2位以下に「環境への負荷を軽減したい」41.9%、「ヒートショックなどの健康リスクを軽減させたい」26.6%が続いています。
省エネ性能を意識しない理由は?約半数が「気にしたことがない」
賃貸物件への引越し検討者で、省エネ性能を「全く意識しない」「あまり意識しない」と回答した人に理由を聞いたところ、約半数である45.5%が「気にしたことがない」と回答。
同調査では、「賃貸物件の場合、住まい探し初心者が多く含まれることと購入物件と異なり控除がないため意識をする機会が少ないことなどが考えられる」と分析しています。
2位以下には「省エネ性能の高い物件は賃料が高くなる」24.2%、「情報を見ても性能の良し悪しが分からない」17.4%、「情報の収集方法が分からない」8.3%という回答が続きます。「特に理由はない」という人も22.0%いました。
賃料が優先で省エネ性能までは意識していられない、知識がない、情報収集ができない、そもそもあまり興味がない…などといった実情が表れています。
省エネ性能ラベル・省エネ部位ラベルは検討材料になる?
2024年4月に「省エネ性能ラベル」、11月には「省エネ部位ラベル」の表示がスタートしました。これらは住宅の販売・賃貸事業者が物件の省エネ性能を広告などに表示することで、消費者が比較検討しやすくするための制度です。
「省エネ性能ラベル」では、新築住宅を中心にエネルギー消費性能や断熱性能を星マークなどで表示。「省エネ部位ラベル」では既存住宅の窓や給湯器などが省エネ仕様であるかをチェックマークで表示し、ひと目で省エネ性能がわかるようにしています。
「省エネ性能ラベル」「省エネ部位ラベル」が住み替えの検討情報として活用できるかどうかを聞いたところ、「省エネ性能ラベル」「省エネ部位ラベル」どちらも約7割の人が「活用できる」と回答。こちらは賃貸検討者のみの集計はありませんでしたが、消費者からのニーズはあるといえそうです。
省エネ適合義務化は賃貸も対象!今後さらに厳しく
「建築物省エネ法」の改正により、2024年4月からはすべての新築住宅について省エネ基準であることが義務付けられます。これは賃貸住宅も例外ではなく、これからアパートを新築する場合は、省エネ基準である断熱等級4に適合していなければ建築確認申請が通らず、着工できません。
さらに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、政府は2030年までに省エネ基準をZEH水準(断熱等級5相当)まで引き上げることを目標としています。現行の省エネ基準で新築しても、5年でその水準を満たさなくなってしまう可能性があるのです。
今回の調査で、住まい探しで省エネ性能を意識している引越し検討者は賃貸住宅では約半分であること、その大部分が電気・光熱費を気にしていることが明らかになりました。昨今の光熱費高騰や酷暑もあって、住まいのランニングコストを意識する人は今後も増えるとみられます。
「省エネ部位ラベル」の導入によって、新築だけでなく省エネ改修についても消費者にアピールしやすくなりました。これから新築や改修を控えている賃貸オーナーはエリアやターゲット、予算などに応じて、どの程度までの省エネ性能を目指すかをよく検討する必要があります。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年12月9日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。