都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説

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公開日:2025年2月5日
更新日:2025年2月5日
都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説1

都市圏への人口集中が進み、単身者の賃貸住宅に対するニーズも変化しています。ANAファシリティーズ(株)の調査によると、オフィス出社が増えたことで「通勤利便性」が重視され、また「広さ」「設備の充実」「セキュリティ」などが重要視されていることが明らかになりました。この調査結果をもとに、賃貸オーナーがどのように空室対策に活かすべきかについて具体的なアドバイスを交えながら解説します。

オフィス出社回帰による都市圏居住の高まり

都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

都市圏に住む20~50代の単身者1,000名を対象に行われたこちらの調査。ここで都市圏と定義しているのは東京都、神奈川県、大阪府、千葉県、埼玉県、京都府、兵庫県、福岡県、愛知県、宮城県です。

調査では、約70%の単身者が「完全出社」と回答しており、リモートワーク実施率は3割以下に低下しています。この結果は、コロナ禍のピーク時(リモートワーク実施率56.4%)と比較すると、明確なオフィス回帰の傾向を示しています。

総務省「令和3年版 情報通信白書」(2021年度)によると、企業のリモートワーク実施率はピーク時で56.4%※。今回の結果と比較してみると、リモートワーク実施率の低下とオフィスへの出社回帰の傾向が強まっていることが明らかになりました。出社が増えたことも関連するのか、休日は6割以上が「家で過ごすことが多い」と回答しています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に移行した2023年5月以降に、引越しの実施または検討の状況を質問。「引っ越していない」「未検討」、つまり都市圏に住み続ける人を含めて、96.9%が都市圏に住む意向を示しています。都市圏外への移住を検討している人はわずか約3%で、都市圏への居住意向が大多数であることが分かりました。

オーナーが取るべき空室対策は?

Point|「駅近物件」の価値が再評価される
都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

通勤の利便性を重視する人が多いため、駅徒歩10分以内の物件は大きなアピールポイントになります。もし物件が駅から遠い場合は、最寄り駅までのバス便の充実度や、自転車駐輪場の有無を強調して利便性を補強しましょう。

Point|「都市圏内のエリア特性」を見極める

出社率が高い業種のオフィスが多い地域(例:都心のオフィス街周辺)は、単身者の需要が高いため、競争力のある家賃設定や設備の充実を検討しましょう。

逆にリモートワーク層が多いエリア(例:ベッドタウン)では、在宅時間を快適に過ごせる設備(防音性、インターネット環境など)のアピールが重要になります。

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都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

引越しのきっかけは「通勤利便性」と「部屋の快適さ」

引越しの実施・検討のきっかけを質問したところ(3つまで回答可)、単身者が引越しを検討する理由のトップ3は以下の通りです。

1位 通勤・出張のアクセス改善(仕事へのアクセス向上)
2位 住居の広さや快適さの改善(より広く快適な空間へ)
3位 転職・異動(勤務地変更による引越し)

 

多くの人が、交通の便と自室の快適さを求めて引越しを検討しているようです。4位以降は「周辺環境の改善」、「収入の変動」、「趣味の充実」、「リモートワーク対応」が続きました。

なお、「ワークライフバランスや生活の質の向上において、住環境の整備が重要だとお考えですか?」という質問には、42.2%が「とてもそう思う」、38.7%が「ややそう思う」と答えています。

現在住んでいる賃貸物件の設備やサービスについて改善してほしい点があるか尋ねたところ、「部屋設備をグレードアップしてほしい」と回答した人が最も多く35.0%でした。

オーナーが取るべき空室対策は?

部屋の快適性を高める工夫
都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

競争力のある物件にするためには、部屋の広さや間取りの改善を検討することが重要です。例えば、1K→1LDKへのリノベーションは、より快適な空間を求める単身者にとって魅力的になります。

「快適な在宅環境」を整える

休日を自宅で過ごす人が増えているため、防音性やWi-Fi環境の整備も大きなアピールポイントになります。例えば、壁紙を防音仕様にする、無料Wi-Fiを提供する、照明やコンセント位置を見直すなどの改善が求められます。

家賃の目安と年収の関係

引越しを検討する際に目安とする家賃を調査したところ、単身者が考える家賃の目安は以下の通りです。

・5万円以上~10万円未満(46.1%)
・10万円以上~15万円未満(25.3%)
・15万円以上(年収700万円以上の層で増加)

ただし、年収別で見てみると目安家賃の割合が変わります。「年収300万〜400万円未満」では家賃帯「5万円以上〜10万円未満」が6割以上。年収700万円未満までは過半数を超えていますが、それ以上の年収で逆転します。

「10万円以上〜15万円未満」と回答した人が最も多くなり、「年収700万〜800万円未満」で36.7%、「年収900万〜1,000万円未満」では40.6%となります。「15万円以上〜20万円未満」もそれぞれ16.7%と18.8%。

年収が上がるにつれて目安とする家賃帯も上昇する傾向が表れています。年収、家賃の上昇に合わせて、住まいに求めるゆとりや快適性もより重要視されていると考えられます。

オーナーが取るべき空室対策は?

ターゲット層に応じた家賃設定
都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

年収300万~500万円層向け:5万~10万円の範囲で設定。コスパの良さをアピール
年収700万円以上層向け:10万円以上の高品質物件を提供し、「広さ」「収納」「デザイン性」を強化

単身者が求める「必須条件」と「設備」

賃貸住宅に求める条件としては以下の通りです。

必須条件(優先度トップ3)
1位 間取りの広さ
2位 駅徒歩分の短さ
3位 バス・トイレ別

 

家賃が高くても欲しい条件
1位 広い居室と家具が配置しやすい間取り
2位 ウォークインクローゼット
3位 オートロック・宅配ボックス

 

自室には「利便性」を、共用部には「セキュリティ・衛生面」を求める傾向が大きいようです。

また、スマートホームに対するイメージについても、49.1%が「生活の利便性向上」に、33.8%が「防犯、セキュリティの向上」につながると回答。効率的な家電操作によってもたらされる快適な環境に期待を寄せる声が挙がっています。

オーナーが取るべき空室対策は?

バス・トイレ別は必須条件
都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

ユニットバスの物件は人気が低いため、分離工事を検討する価値があります。簡単なリノベーションで、トイレと浴室を仕切るだけでも大きな差になります。

収納スペースの拡充

ウォークインクローゼットがある物件は競争力が高いため、可能なら収納スペースを増やしましょう。既存物件でリノベーションが難しい場合は、可動式収納を設置し、部屋のレイアウトを自由に変えられるようにするのも一案です。

オートロック・宅配ボックスの導入

防犯意識の高まりから、オートロックや宅配ボックスのニーズはますます高まっています。既存物件でも、スマートロックの導入や防犯カメラの設置などでセキュリティを向上できます。

まとめ|空室対策に活かすポイント

今回の調査から、都市圏の単身者は「通勤利便性」と「住環境の快適さ」を重視していることがわかりました。賃貸オーナーが空室対策を行う際のポイントは以下の通りです。

①立地を活かしたPR
・駅徒歩10分以内の物件は積極的にアピール
・駅遠物件は、自転車駐輪場の完備やバスアクセスの良さを強調
②住みやすさの向上
・1K→1DK/1LDKへのリノベーション
・防音性の向上、Wi-Fi環境の整備
・ウォークインクローゼットの設置や収納力アップ
③セキュリティと設備の充実
・オートロック・宅配ボックスの導入
・バス・トイレ別の間取りに改修

 

こうした工夫を施すことで、競争力のある賃貸経営を実現し、安定した入居率を維持することができます。ぜひ、物件の魅力を最大限に引き出す工夫を取り入れてみてください。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年2月4日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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都市圏の単身者が賃貸住宅に求めるものとは?空室対策に活かせるポイントを解説2

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