【法律Q&A】 近隣住民や施工会社との間で発生!退去から賃貸住宅建築時までに起こりうるトラブル

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久保原弁護士による法律相談、賃貸住宅の新築・建て替え時に起こりうるトラブルのQ&Aです。退去から建築までの期間は、オーナーが予想もしなかった入居者・近隣住民・施工会社などとのトラブルが発生し、工事が滞ることがあります。
スムーズに賃貸経営が開始できるよう、あらゆる方面への根回しをしておきましょう。

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。


2008 年、九帆堂法律事務所設立。


最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。


Q1:退去後、空室になった部屋に何者かが入り込みボヤが出ました。オーナーは責任を問われますか?

A1:ボヤの原因にもよりますが、建物所有者が責任を問われる可能性もあります。

空室に第三者が勝手に入り込み、いたずら等によって火災事件を起こした場合、その第三者は近隣等に生じた損害を賠償しなければなりません。では、空室の所有者が責任を問われる可能性はないかといえば、不十分な管理が失火を招いたと評価され、責任が問われる可能性もあります。例えば、賃借人の退去後長期間にわたり施錠をせず、また建物内に燃えやすい物があり、建物内への第三者の侵入を放置したような場合が考えられます。このような場合、土地工作物の瑕疵が原因だと評価される可能性があるのです。

取り壊し前の建物の空室についても、所有者の義務として適正に管理し、火災の危険、悪臭、倒壊の危険等を回避するよう努めることは極めて重要です。

Q2:建て替えの噂を聞いた隣人が、私の建物が越境していると言い始めました。時効で対抗できますか?

A2:取得時効の厳しい要件を充足しているか、慎重な検討が必要です。

取得時効とは、永続した事実状態を尊重する等の趣旨から所有権取得を認める民法上の制度です。境界紛争で、「仮に越境だとしても時効取得だ」としばしば主張されます。取得時効の要件は、所有の意思をもって、平穏かつ公然に占有することであり、善意(知らずに占有)無過失の場合は10年、悪意の場合は20年で時効が完成します。「所有の意思」の要件から、他人の土地を借りて占有しても時効は成立しないのですが、さらに、この「所有の意思」は、占有者の内心の意思によってではなく、どのような権原や事情から占有するに至ったのか等から外形的客観的に判断するというのが判例です。越境だと知りながら占有した場合は取得時効が成立しない可能性もあり、慎重な検討が必要です。

Q3:建築工事が始まりましたが、近隣住民から騒音がひどいと頻繁に申し入れがあり、対応に困っています。

A3:受忍限度が問題となりますが、建築会社と相談して誠実に対応をすべきです。

騒音問題について、判例は、通常人が一般社会生活上受忍すべき限度を超えるような騒音を出す建築工事は、権利侵害行為としています。時間や地域性、状況、個人差など様々な要因で異なりますが、まずは客観的状況把握が重要です。

近隣住民側は、自治体に工事騒音の測定依頼をしたり測定機器を借りるなどして客観的な騒音状況を把握し、法律や条例の基準と比較して改善申し入れや行政指導を求めるなどの対策をとることが予想されます。このような改善申し入れや行政指導を無視すると、騒音被害の程度によっては裁判所に工事中止仮処分を申し立てられたり、受忍限度を超える騒音を理由に損害賠償請求をされることもあります。建築会社と相談し、十分な配慮をすることが求められます。

Q4:新築にあたり、他人所有の私道に水道管を通したいのですが、絶対拒否で交渉が進みません。

A4:水道は必要不可欠なので、承諾が得られなくても使用が認められる場合もあります。

私道であっても、他人の所有地を勝手に利用することは原則できません。まずは所有者の承諾を得る努力をすべきです。しかし、上下水道やガス、電気は、現代の生活において必要不可欠なものです。そこで、承諾がなければ絶対に利用できないことになると、事実上生活のための土地利用ができないという理不尽な結果ともなります。

これに対しては、民法の囲繞地(いにょうち)通行権などの相隣(そうりん)関係の規定を類推適用する考え方、承諾しない行為を権利の濫用と捉える考え方、共有の場合には持分に基づく使用を認めるという考え方などによって、裁判所による調整がなされています。ただし、最も損害の少ない合理的方法であることが大前提で、償金の支払いによる調整が図られることも少なくありません。

Q5:賃貸マンションの完成が大幅に遅れたので、その間の賃料収入相当額を損害賠償請求したいです。

A5:賃料収入相当額も損害賠償請求できますが、違約金の定めに注意が必要です。

請負会社の責任で工事が遅れた場合、注文者は債務不履行による損害賠償請求ができす。賃料収入が予定されていることを請負会社が知っていれば、得られるはず

であった賃料収入相当額も損害賠償請求することが可能です。

しかし、得られるはずであった賃料収入は、満室分なのか、半分程度なのかといった具体的な立証は注文者が行うことになります。すでに締結済みの賃貸借契約書などで立証することになります。

また、請負契約書の違約金規定は、事前に双方の損害額を予定する取り決めだと解釈されますので、請負会社側からは違約金規定の範囲で賠償するとの反論が予想されます。賃貸物件の場合は、賃料収入相当額を損害賠償するよう、特約を定めておくことが重要です。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2016年6月6日時点の情報です。

イラスト/すぎやまえみこ

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