悪気なく転貸? 孤独死?外国人・高齢入居者トラブル
- 弁護士・司法書士
Q4:入居者が高齢だという理由で、更新拒絶をすることはできますか?
A4:更新を拒絶する正当事由には該当しません。更新拒絶はできません。
賃貸人は、正当事由がなければ更新を拒絶することができません。正当事由は、賃貸人と賃借人それぞれが建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料などを総合衡量して判断されます。
入居者が高齢という場合、その後の引越しや環境変化への対応が難しいことが多く、むしろ正当事由を否定する(更新拒絶を認めない)方向で考慮されることが多いと思います。
なお、全く別の話にはなりますが、入居者募集の際に、「障害者はお断り」などと門前払いすることは不当な差別的取扱いであり、平成28年4月1日に施行された障害者差別解消法により禁止されています。
Q5:高齢入居者が孤独死したのですが、親戚関係がわからない場合はどうしたらよいですか?
A5:賃借権は相続されますから、相続人の調査は必須です。
賃借人が死亡した場合、賃借権も財産権ですので相続人に承継されることになります。そこで、相続人を探し出して、賃貸借契約を継続するのか解約するのかを決めてもらい、残置物を引き取ってもらうことが必要となります。
孤独死のような場合には、警察が相続人を探して連絡をすることが多いと思いますが、弁護士に依頼して戸籍調査をすることでも相続人を探し出すことができます。
もっとも、入居者が高齢の場合、更新時などに相続人関係を聞き出し、相続人と賃貸人が普段から協力して入居者を見守る関係を作っておくことが本来は望ましいです。入居者ごとに事情は異なりますが、それぞれに配慮しつつも、後々賃貸人だけに大きな負担とならないようにすることが重要です。
Q6:高齢入居者に対して賃料滞納を理由とする明け渡し判決が出ました。強制執行する場合に注意することは?
A6:強制執行の場合は、移転先確保への人道的配慮が必要だと思います。
明け渡しの判決が出た場合、入居者が高齢だからといって強制執行ができないということにはなりません。しかし、寝たきりであるとか、認知症の疑いがあるなどのケースはもちろんですが、一般的に高齢者の引越しには手助けが必要なことが多いと思います。賃借人としては賃料を滞納して腹立たしいのですが、だからといって、何の配慮もしないというわけにはいきません。
強制執行の場合、明渡催告という手続きで一度入居者を訪問することになりますので、少なくともそうした機会を利用して、どのような手助けが必要なのかを把握します。そして、社会福祉事務所などの行政窓口とも相談をして、強制執行を担当する執行官に報告しながら移転の段取りを進めます。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2017年9月5日時点の情報です。
イラスト/黒崎 玄