120年ぶりの民法改正!賃貸経営に与える影響とは?
- 弁護士・司法書士
❸使用できない部分の家賃減額
●「請求できる」から「当然減額」へ改正。実質上の対応の変更はないが、遡り請求を防ぐために使用不能になった際はすぐに届ける義務の特約を定めるなどの工夫を。
→「風呂が使えない(減額割合10%/月額、免責日数3 日)」等、日本賃貸住宅管理協会による賃料減額のガイドラインとなる資料もあるので参考に
改正民法について最も多い質問が「賃借物件にトラブルがあると賃料は当然に減額となるのか?」というものです。
現在の民法では賃借物の一部滅失の処理について、賃借人はその滅失した部分の割合に応じて「賃料の減額を請求できる」と定められているのに対し、改正民法では「減額される」(当然減額)となることから不安が広がっているのだと思います。
しかし「請求できる」から「当然減額」に改正されても、減額の割合など結局は話し合いが必要となることに変わりはありません。そのため、実質上の対応は変わらないのでは、と思われます。
ただし、少し気になるのが一部使用できなくなった時にすぐに申し出ず、例えば退去時に、遡って減額分を返せ、などと請求されると実務は混乱します。
そこで、一部使用できなくなった場合は、すぐに届け出る義務を特約で定めるなどの工夫が必要かと思います。
❹賃借人の修繕権
●賃貸人が必要な修繕をしない場合、賃借人自ら修繕し、後で費用を請求できる。
→修繕の必要性、範囲、方法などで意見の食い違いが出るおそれ。特約等で事前の取り決めが重要
賃借物の修繕が必要である場合、その旨を賃貸人に通知しても修繕してくれない場合や急迫の事情がある場合、賃借人が修繕できる旨の改正です。
しかしオーナーにとっては大事な物件を勝手に修繕されるというのは抵抗があると思います。修繕の必要性の有無で賃貸人と賃借人の意見が異なるというトラブルも起こるかもしれません。
現在でも修繕については特約で定めることが多いと思いますが、賃借人による修繕が可能な範囲は特約でより厳格に定めるなどの対応が必要になるかもしれません。
まずは実務内容の確認を
前述のほかには、時効期間の変更や法定利息の利率の変更などの改正がありますが、大きく見ると、連帯保証人に関する事項以外は従来の実務を明文化したものですので、民法改正について必要以上に怯える必要はありません。
繰り返しになりますが、判例等で確立してきた実務を、この機会に再度確認いただきたいと思います。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2018年3月6日時点の情報です。
イラスト/黒崎 玄