家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化

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公開日:2026年1月21日
更新日:2026年1月21日
家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化1

十条銀座商店街

家賃の高騰が続く一方で、実質賃金は伸び悩み、入居者の住まい探しはよりシビアになっています。株式会社LIFULLの最新調査(2025年1〜11月)によると、主要ターミナル駅の家賃相場は過去最高水準にあり、問い合わせは周辺の「ずらし駅」へシフトしています。1〜3駅離れるだけで数万円安くなるケースも多く、立地の選ばれ方が大きく変わり始めています。今回は、この“ずらし駅”の最新傾向をもとに、賃貸オーナーが把握しておきたい入居ニーズの変化を解説します。

掲載賃料は過去最高、問い合わせは“割安エリア”へシフト

今回の「ずらし駅」の調査元である(株)LIFULLが毎月発表している「LIFULL HOME’Sマーケットレポート 2025年11月(東京/賃料動向)」によると、東京23区の掲載賃料はファミリー向き、シングル向きのどちらも上昇傾向、ファミリー向きは244,579円(前年同月比114.5%)、シングル向きは119,139円(前年同月比116.1%)となり、どちらも過去最高を記録しました。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

画像引用元:賃料高騰のなか生活費を抑える手法として広がる注目のずらし駅|株式会社LIFULL

その一方、実際に問い合わせのあった物件の賃料である「反響賃料」との差は広がり続けています。このことからも物価上昇や実質賃金の停滞を背景に、住まいへの予算を増やすことが難しくなっている状況は明らかです。

そうした中、少しでも家賃を抑えるための手法として、生活利便性・交通利便性の高いターミナル駅などから1~3駅離れた駅に住まいを求める「ずらし駅」が、いま注目されています。

池袋:人気維持も問い合わせは周辺駅へ 二桁成長の駅が続々

それでは、代表的なターミナル駅と「ずらし駅」の実情を見ていきましょう。まずは「池袋」です。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

画像引用元:賃料高騰のなか生活費を抑える手法として広がる注目のずらし駅|株式会社LIFULL

JR各線をはじめ、東京メトロ各線、西武池袋線、東武東上線など、計9路線が乗り入れている「池袋」。賃貸物件への問合せ数を集計した「2025年LIFULL HOME’S みんなが探した!借りて住みたい街ランキング(首都圏版)」でも10位にランクインされた人気のターミナル駅です。

その池袋の賃貸物件問い合わせ件数は、前年比102.3%に留まる一方、東武東上線・大山で120.7%、JR埼京線・十条で118.4%、西武池袋線・東長崎で115.1%、東京メトロ有楽町線&副都心線・千川で112.4%など、4つの「ずらし駅」では、前年比で110%を超えた問い合わせ件数を記録しています。どの駅も急行等の停車駅ではないですが、ターミナルである「池袋」まで約5分程度でアクセスが可能と、利便性にも優れています。

1LDKの家賃相場を見てみると、池袋の「21.1万円」に対して、十条が「15.8万円(差額5.3万円)」、大山が「14.9万円(差額6.2万円)」、千川が「14.8万円(差額6.3万円)」、東長崎が「14.3万円(マイナス6.8万円)」と、2~3駅ずらすだけで、5~6万円ほど家賃を低く抑えることができます。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

東上線「大山」駅南口駅前の風景

さらに、十条と大山には東京でも有数のアーケード商店街があるなど、暮らしやすさの面でも魅力的。周辺エリアには大学のキャンパスも多く、賃貸住宅の需要の面でも強みがあるといえます。

赤羽:本駅は前年比割れ、北赤羽・川口が大きく伸長

次は、埼玉から都内への玄関口とも言える「赤羽」です。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

画像引用元:賃料高騰のなか生活費を抑える手法として広がる注目のずらし駅|株式会社LIFULL

私鉄や東京メトロ、都営地下鉄などの乗り入れはないものの、京浜東北線、埼京線、湘南新宿ラインなど、JRの各線が乗り入れ、「池袋・新宿」方面、「東京・上野」方面のどちらにも乗り換えなしでアクセスできる、北のターミナル駅とも言えるのが「赤羽」です。

赤羽自体の賃貸物件問い合わせ件数は89.1%と前年割れしているものの、「ずらし駅」である埼京線・北赤羽で121.4%、京浜東北線・川口で110.7%と大きく問い合わせ件数を伸ばしています。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

川口駅前 キュポ・ラ広場

1LDKの家賃相場では、赤羽の「14.1万円」に対して、北赤羽が「11.1万円(差額3万円)」、川口が「11.8万円(差額2.3万円)」となるなど、1駅ずらすだけでも、2~3万円ほど家賃の削減が可能となります。

町田:郊外でも顕著なずらし需要 古淵・成瀬が急伸

郊外にも目を向けていきます。次は神奈川との県境にある「町田」です。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

画像引用元:賃料高騰のなか生活費を抑える手法として広がる注目のずらし駅|株式会社LIFULL

小田急線とJR横浜線が乗り入れ、「新宿」や「横浜」に乗り換えなしでアクセスできる都下を代表するターミナル駅が「町田」です。

池袋や赤羽と同様、町田自体の問い合わせ件数は前年比で102.5%に留まる一方、「ずらし駅」である古淵で127.4%、成瀬で121.3%と、大きく問い合わせ件数を伸ばしています。この結果は、東京都下のファミリー向け物件の掲載賃料が過去最高を更新するなか、「ずらし駅」は郊外でさらなる広がりを見せていることを示唆するものと言えるでしょう。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

JR横浜線 古淵駅 南側

1LDKの家賃相場を見ても、町田の「12.0万円」に対して、古淵が「10.6万円(差額1.4万円)」、成瀬が「9.2万円(差額2.8万円)」となっており、隣駅にずらすだけで、1~2万円ほど家賃を抑えることができます。

大宮:埼京線・京浜東北線の周辺駅で問い合わせが増加

次は埼玉最大の商業都市でもある「大宮」を見てみましょう。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

画像引用元:賃料高騰のなか生活費を抑える手法として広がる注目のずらし駅|株式会社LIFULL

埼京線(至川越)、高崎線(至熊谷・高崎)、宇都宮線(至久喜・宇都宮)などのJR各線の他、新幹線が乗り入れ、「東京」まで約30分でアクセス可能な、埼玉県内はもちろん首都圏でも有数のターミナル駅「大宮」。

こちらも人気のターミナル駅のため、大宮自体の問い合わせ件数は前年比103.8%に留まりますが、「ずらし駅」では大幅にその数を伸ばしています。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

指扇駅(南口)

JR埼京線の指扇で139.2%、西大宮で114.1%、与野本町で112.5%、南与野で117.4%、JR京浜東北のさいたま新都心で117.1%、与野で122.2%、北浦和で112.3%など、東京都に比べ賃料が比較的安い埼玉県でも、主要なターミナル駅周辺では「ずらし駅」の動きがあることは明白です。

もちろん1LDKの家賃相場においても、大宮の「14.0万円」に対して、指扇が「9.4万円(差額4.6万円)」、西大宮が「9.2万円(差額4.8万円)」、与野本町が「11.7万円(差額2.3万円)」、南与野が10.2万円「(差額3.8万円)」、さいたま新都心が「12.8万円(差額1.2万円)」、与野が「11.2万円(差額2.8万円)」、北浦和が「13.8万円(差額0.2万円)」となっており、埼玉県でも数駅ずらして家賃を低く抑える「ずらし駅」の動きは大きな広がりを見せているようです。

秋葉原・中野・渋谷でも“1〜2駅ずらすだけ”で大幅減額

すでに挙げた4つのターミナル駅のほかにも、「ずらし」のテクニックが使える駅は数多くあります。

家賃高騰で広がる「ずらし駅」需要。入居者が今求めるエリアとは?賃貸オーナーが押さえたい入居ニーズの変化2

台東区 新御徒町駅周辺の街並み(元浅草一丁目交差点)

例えば、秋葉原「14.2万円)」における新御徒町「11.1万円(差額3.1万円)」、中野「12.3万円」における東高円寺「9.3万円(差額3万円)」、北千住「10.5万円」における牛田「6.9万円(差額3.6万円)」、渋谷「16.1万円」における代々木八幡「11.9万円(差額4.2万円)」、新宿「15.8万円」における中井「11.4万円(差額4.4万円)」など、場合によっては年間で50万円以上の差額がでるケースも少なくありません。

まとめ

物価高による家賃の高騰、そして伸び悩む賃金などを背景に、住まい選びではターミナル駅から1~3駅離れる「ずらし駅」への注目が高まっています。

交通面での利便性を大きく損なうことなく家賃を数万円抑えられるケースも多く、入居者の関心は確実に周辺駅へと広がっています。実際、主要ターミナル駅では賃貸物件の問い合わせ件数が横ばいなのに対し、周辺の「ずらし駅」では二桁成長を示す駅も珍しくありません。

この動きは、賃貸住宅経営者や不動産投資家にとっても見逃せないポイントです。ターミナル駅直結エリアは取得価格、建築費ともに高止まりしている状態で、利回り確保が難しくなっています。

一方、「ずらし駅」周辺は相対的に仕入れコストを低く抑えやすく、家賃水準も「割安感」から安定した需要が見込めます。加えて、商店街や大学、再開発など生活利便性を備えた駅も少なくなく、空室リスクを低減できる点も魅力です。

今後は、入居者にとっての家賃負担軽減と、オーナーにとっての収益性・安定稼働を両立できるエリア選定がより重要になります。「ずらし駅」は、入居者・経営者の両方にとって合理的な選択肢として、賃貸市場で存在感を高めていくことに、疑いの余地はありません。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年1月7日時点のものです。

取材・文/御坂 真琴

ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

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