オーナーの配慮が性能と付加価値の向上につながる!入居者と資産を守る賃貸住宅の「防犯対策」
- セキュリティ
20年以上も減少してきた刑法犯の認知件数が、この数年上昇に転じました。闇バイトで集められた“トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)という荒っぽい手口の犯罪も横行。部屋探しに当たって安全を求める声は以前にも増して強まっています。そこで、入居者が防犯対策をどのように受け止めているのか、それを踏まえた有効な対策は何かを、専門家のアドバイスをもとに紹介します!
株式会社LIFULL LIFULL HOME’S 総研
副所長 兼 チーフアナリスト 中山 登志朗 氏
NPO 法人東京都セキュリティ促進協力会 理事
防犯優良認定委員会 委員長
防犯アドバイザー 矢嶋 大助 氏
Part1|部屋の探し方を理解し、選ばれる「一手」を講じる
入居者の部屋探しでは、家賃(Price)・立地(Place)・間取り(Plan)の“3P”がもっとも重視されるのは言うまでもありません。しかし、プラスαの特徴を出すならば防犯性アップの効果は高くなります。
全国的に防犯性への関心が向上
減少傾向にあった住宅への侵入強盗の認知件数がここ数年、増勢に転じています。さらに凶悪犯罪がニュースやメディアで頻繁に取り上げられています。こうした情勢を
受け「LIFULL HOME‘S 2025年トレンド発表会」(2024年12月)の中でも、関連する動向が取り上げられました。「住まいの防犯投資」です。トクリュウが戸建てに暮らす高齢者を狙って侵入強盗を行う事件が多発したことから、防犯リフォームの需要が急拡大したことが反映されました。
「防犯面でも住宅の性能を見直す契機となったことから、今後も住宅の安全に対する意識はますます高まるでしょう」(中山さん)
実際、LIFULL HOME‘Sの調査でも、セキュリティ関連の設備は「絶対条件」としてニーズが高いことがわかります(図1)。
オートロックは、もともと都市部での上位ランクが目立っていました。最近は地方でも順位が上昇し、31都道府県でトップ10以内に。TVモニタ付きインターホンも15位以内に入っているエリアが多く、前回調査と比べた「ポイント上昇率」では全体の3位に入っています。
「部屋探しでは、交通利便性や間取り、生活環境の条件が上位に来ますので、セキュリティは最優先課題ではありません。ただ、全国の広いエリアで『住まいの防犯投資』が行われた物件が探されているのは確かでしょう」(中山さん)
インターホンや内窓リフォーム、防犯性向上は将来への投資
オートロックのニーズが高くても、築古マンションでは改修コストが高く、そもそもエントランスのないアパートには導入が難しいところ。「2024 年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」(リクルート調べ)の「次に引っ越す際に絶対に欲しい設備」を見ると、1位がエアコンですが、2位の独立洗面台に次いで、TVモニタ付きインターホンが3位に入っています。
特に「訪問者をモニタで確認できて録画もできる機能も備えたタイプへの関心が高まっています。機器の導入費用は1戸当たり数万円で済みますから、費用対効果も高いです」と中山さんは続けます。
玄関回り以外でも、実は窓から侵入される被害も少なくありません。
「賃貸物件の場合、玄関ドアには対策が施されていても、窓は防犯仕様になっていないケースが多いです。逆に言えば、窓の対策が差別化につながります。リフォームの予算が限られているなら、国からの補助がある省エネ改修とあわせて内窓リフォームなどを実施すれば、補助金を活用して断熱性能を高めつつ、防犯面の強化もできます」(中山さん)
では、こうした防犯設備の導入で収益アップは期待できるのでしょうか。
「一昔前は、TVモニタ付きインターホンが付いているだけで賃料を5000 円高くできるとも言われました。しかし現状では、築浅ではごく当たり前の設備になりつつあり、そこまでのアップは難しいでしょう。家賃への転嫁を期待するよりも、競争力を高め空室期間を短縮することや、資産価値の維持にメリットがあります。セキュリティ対策はコストではなく、入居者にとっては安全な生活を守るための保険、オーナーにとっては大切な資産である物件の将来への投資と考えると良いのではないでしょうか」(中山さん)
Part 2|守りを固めて入居者にも安心感を
防犯性能を高めるには、単にセキュリティ関連のアイテムを揃えれば良いわけではありません。「侵入できない」と思わせることが重要です。ポイントを防犯対策のプロが指南します。
建物種別に応じた対策が重要。共同住宅は連続被害に注意
住宅の防犯と言っても、建物の種類によって窃盗被害の状況は異なります。そこで、一戸建て住宅とマンションやアパートなどの共同住宅の違いを押さえておきましょう。
空き巣の発生場所は、一戸建ての場合、玄関(表出入口)が2割、窓が6割弱と、圧倒的に窓からの侵入が多くなっています。
「一戸建てでは、前面道路から6m以上奥にある窓の被害が圧倒的に多い傾向があります。塀や植栽で通行人の視線(自然監視性)が遮られ、死角ができるために窃盗の作業がしやすいからです。特に、庭側の掃き出し窓の対策が重要になります」(矢嶋さん)
一方、マンション(4階建て以上の共同住宅)は玄関が6割、窓が3割と逆の傾向があります。アパート(3階建て以下の共同住宅)は玄関が5割弱、窓が4割です。つまり玄関の被害が少なくありません。
「共同住宅は共用廊下が一直線で見通しが良く、死角ができにくいメリットはあります。ただ、ドアの構造や部品の仕様がすべて同じなため、玄関ドアの不正開錠をするピッキングやサムターン回しのような小道具を使って次々に部屋に侵入され、連続して被害に遭いやすいのがデメリット。ダブルロックや防犯サムターンを付け、開錠に時間をかけて諦めさせるのが基本です」(矢嶋さん)
オートロックも安心できない。個別の防犯診断が有効
オートロックを過信するのも禁物です。エントランスに立派なオートロックがあっても、建物の側面に回ると共用廊下が容易に乗り越えられる腰壁になっていたり、管理員や点検事業者の都合で通用口が開放状態だったりするケースもあります。住人の後を追って入ってしまう“共連れ”も問題になっています。
「手口を教えることになるため詳細は言えませんが、オートロックは不正開扉による侵入が可能なので対策が必要です」(矢嶋さん)
窓ガラスの防犯も重要だ。防犯合わせガラスにするのが望ましいがコストが高くなっています。防犯フィルムも有効です。ただし「サッシのクレセント錠の周囲だけ強化する“部分貼り”は、貼った部分だけ抜けて音もしにくいため逆効果。全面に貼るのが基本です」(矢嶋さん)
2階以上の住居は安心と考えがちだがそうとも言えません。
「竪樋(たてどい)を伝って登る方法や、屋上からロープで降りる“下がり蜘蛛”の手口もあります。忍び返しや屋上への侵入防止の対策が重要です」(矢嶋さん)
セキュリティ関連の設備は、場所や高さなど、機器の設置の仕方を間違えると、せっかくの効果が発揮されません。建物形状や現場の状況に合わせて適切なセキュリティ対策をしたいなら、防犯診断をするのも有効です。全国にネットワークをもつ日本防犯設備協会の各地域協会で対応してくれます(有料)。
なお、対策を実施して終了ではなく、その後のメンテナンスも重要です。防犯カメラなどのホコリや蜘蛛の巣を放置していると、下見に来た犯人に「防犯に関心が低い」と思われ、かえって呼び込むおそれもあるので注意しましょう。
きちんと対策して侵入犯罪を防ぐ!狙われやすいポイント
屋上からロープで降りて侵入されないように、屋上への出入り口は必ず施錠すること。カンヌキ錠を使う場合は、軟らかい真鍮製ではなく、硬質で壊しにくいステンレス製が望ましいです。
2階以上でも、ベランダ伝いに横に移動して侵入されます。パネルタイプの手すりは、外から見えづらく死角になりやすいです。センサーライト、窓への防犯アラームや補助錠で対抗しましょう。
上階への侵入ルートは、壁面を縦に伸びた雨どいや配管を伝って登る、駐輪場や物置などの屋根を足場に登るなど。つかんだり足場にできないように忍び返しを設置するようにしましょう。
エアコンの室外機や給湯器も、窓やベランダから侵入する足掛かりになります。足場になりそうな場所には置かないようにしましょう。設置済みの場合は忍び返しを据える。脚立なども外に放置しないことが大切です。
建物の裏側や塀で囲まれていると侵入者が身を隠す場になりえます。照明で明るくしましょう(5ルクス以上)。閉鎖空間の場合、内部に非常ボタンを設置し、外に異常を知らせる仕組みを作りましょう。
建物への侵入動線に、不審者の顔を正面から撮影できるよう設置するのが基本。メインの入り口、集合ポスト、駐輪場、ゴミ置き場にも欲しいところです。ダミー・カメラは見破られる可能性が大。メンテナンスも忘れずに行いましょう。
Part 3|後付けもできる!防犯アイテムの選び方
セキュリティ関連製品は数百円のグッズから数百万円のシステムまで種類も価格も千差万別。保有する物件に合わせて選択し、費用対効果を見ながら投資しましょう。
新築や建て替え、大がかりなリフォームをせずに、比較的簡単に後付けできるアイテムも増えています。下記に具体例を紹介します。
防犯カメラ
エントランスやエレベータホールなどには、威圧感を与えないドーム型(破壊に強いバンドル型)、屋外には記録装置と一体型の防水カメラがおすすめ。Wi-Fi接続のネットワークカメラならスマホとの連携もできます。
玄関ドアの錠
補助錠を使った1ドア2ロックが基本。遠隔操作のできるスマートロックも増えています。ドア内側のサムターンは、スイッチを押しながら回して解錠するタイプなど防犯性の高いものを選びましょう。安価な対策ならサムターン・カバーという手もあります。
窓まわり
防犯フィルムの全面貼りは専門業者へ依頼しよう。防犯合わせ複層ガラスや内窓は、省エネにもつながります。ガラス破壊時の周波数を検知するセンサーと連動して光るフラッシュライトなど、組み合わせると効果的です。
この他にも新しく進化し続けているセキュリティ設備は少なくありません。例えば、無線式のTVモニタ付きインターホンなら、アパートでも配線不要で手軽に取り付けられます。
録画機能を備えた製品はもはや珍しくありません。来訪者を映すカメラは広角タイプがおすすめです。宅配便の配達人を装って、横に潜んでいる仲間と侵入しようとする不審者も見破ることができます。
さらに集合玄関のオートロックにも、ワイヤレスで後付けができるタイプが登場。スマートフォンのアプリで施開錠でき、通話も可能です。
一度に揃えるとコストもかさむので、予算や優先順位を考慮しながら、できるところから始めてみましょう。
防犯は「5分耐える」がキーワード
防犯(Crime Prevention)の頭文字をとったもので、防犯建物部品の共通標章
(財)都市防犯研究センターの調査では、泥棒が侵入に手間取ってあきらめる時間は「5分以内」と判明。この5分間に耐える試験に合格した商品を「防犯性の高い建物部品」(CP部品)として認定、公表されています。選択の基準にしましょう。
今すぐ対策したいオーナー必見!防犯設備を相談できるおすすめ企業
防犯対策へ関心を持った方は、オーナーズ・スタイルが厳選した企業へ相談してみるのがおすすめ!
モニタ付きインターホン|アイホン

住空間に違和感なく設置できるデザイン
不審者も捉えられる広角カメラ
集合住宅インターホンシステム「PパトモATOMO αアルフア」は、留守中の訪問者をあとから確認できる自動録画機能が標準搭載。カメラ付き集合玄関機なら左右画角約170°のワイド映像で、エントランスから離れた場所の不審者も映し出せます。
オートロック|パナソニック エレクトリックワークス

ロビーインターホン(左)と室内インターホン(右)の配線を無線化
ワイヤレスインターホンシステム「Air EZ(エア イーズ)」は、ロビーインターホンと各住戸を繋ぐ幹線配線がワイヤレス化されており、既築物件でもオートロック対応にすることができます。省配線のため、施工費・施工時間も抑えられます。
スマートロック|LENZ DX(レンズ ディーエックス)
室外機側(左)と室内機側(右)。玄関ドアへの付け外しがしやすい仕様なので、原状回復も可能
高性能スマートロック「ZEUS(ゼウス) 11J」は、ピッキング対策など防犯面の強化はもちろん、ICカード、暗証番号、スマホなど入居者のライフスタイルに応じた開錠方法が選べるのも特徴です。設置も簡単で、賃貸住宅への導入に適しています。
インターホンのリニューアル相談|Fair(フェア)
集合住宅のインターホンリニューアル工事を自社施工で行う。マンションやアパートなどの所有物件に対して、セキュリティ面・価格面などを含めた適切な商品を提案してくれます。エントランスのオートロックも相談できます。
宅配ボックス|東京鋼器
1台3扉仕様、複数台連結することもできる※写真は3 台連結
宅配ボックス「& アンドDドアOOR」は、電源の確保や鍵紛失の心配がなく、設置後すぐに利用可能。優れた防水性で屋根がなくても設置できる設計です。利便性を高めるのはもちろん、対面せずに荷物を安全に受け取れるようになります。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年12月2日時点のものです。
取材・文/木村 元紀 イラスト/アサミナオ















