「駅10分以内・新築じゃないと埋まらない」は思い込み?データで見る“いま選ばれる物件”の条件とは
部屋探しにおいて「駅徒歩10分以内」「新築・築浅」は、いわば“優良物件”の代名詞として広く浸透しています。しかし、(株)CHINTAIが実施した調査では、駅からの距離を重視する人は約7割にのぼる一方で、「徒歩10分以内は譲れない」とする人は1割にとどまりました。築年数についても「新築はゆずれない」は6%にとどまるなど、条件次第で柔軟に検討する姿勢がうかがえます。今回は、このデータから見える“住まい選びの実像”に迫ります。
駅からの距離は“重視するが厳守ではない” ― 本当に10分以内が必須?

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
部屋探しをする際、駅からの距離をどれほど重視しているかを尋ねたところ、「最も重視している」「他の条件と同じくらい重視している」と回答した人は合計で68.8%と、約7割にのぼりました。この数字からも、多くの人が「駅からの距離」を重要な条件と考えていることは確かです。
しかし一方で、「徒歩10分以内はゆずれない」と明確に回答した人は10.0%にとどまりました。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
また、徒歩10分から15分と条件が広がる場合、どのようなメリットがあれば検討できるかを尋ねたところ、「家賃が安くなる」が74.0%で最多に。さらに「部屋が広くなる(43.8%)」「周辺施設が充実している(37.5%)」といった回答が続きます。
これらの結果から、駅からの距離そのものが絶対的な価値なのではなく、コストや暮らしやすさとのバランスが重視されている実態が見えてきます。徒歩分数は重要な指標である一方、柔軟な判断も広がりつつあります。
駅近が好まれる理由は「時間」だけではない―生活利便・安心感が大きい
駅近物件を選ぶ理由で最も多かったのは「通勤・通学が楽だから」(73.3%)でした。毎日の移動時間を短縮できることは、生活全体の負担軽減につながるため、依然として大きな魅力となっているようです。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
一方、「駅近=生活施設が充実しているイメージがある(42.0%)」「天気が悪い日に遠いとストレス(38.3%)」「帰宅が遅いと不安(31.3%)」といった回答も上位に挙がりました。
単なる時間の短縮だけでなく、生活面の利便性や安心感といった心理的な要素が、駅近志向を後押ししていることがうかがえます。駅からの距離は、物理的な近さ以上「暮らしやすさの象徴」として捉えられている側面があると言えます。
「駅遠」でも入居者が前向きになれる条件とは?
駅から近くなくても妥協できる条件として最も多かったのは、「スーパーやコンビニなど生活施設がそろっている」(63.3%)でした。駅の周辺よりも、身近に日常生活に必要な機能があることが重視されている実態がうかがえます。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
さらに、「バス便や自転車置き場が整っている(44.3%)」「屋根付き通路や近いバス停がある(31.5%)」「夜道が明るい(29.3%)」「静かな住環境(27.0%)」といった回答も挙がりました。
これらは徒歩分数を直接短縮するものではありませんが、毎日の暮らしやすさを高める要素です。駅からの距離が多少あっても、移動手段に関するインフラ、安全性、ストレスのない周辺環境が整っていれば、前向きに検討したいという人が多くなってきているのです。
数値で判断できる条件だけでなく、生活の質に直結する具体的な環境条件が重要な判断材料となりつつあります。
駅距離を緩めると満足度は上がる?入居者のリアルな声
部屋を決める際、駅からの距離という条件を少し緩めた人に良かった点を尋ねたところ、「家賃が安くなった」(62.3%)が最多でした。次いで「落ち着いた住環境で快適だった(38.6%)」「周辺施設が充実していて便利だった(36.0%)」「広さに満足できた(34.2%)」と続いています。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
通勤時間が多少余計に掛かったとしても、それ以上に家賃の安さや住環境の良さといったメリットが大きいと感じているようです。
一方で、「特に良いと思うことはなかった」と回答した人は3.5%にとどまり、条件を緩めたことによる後悔を感じた人は少数派でした。結果として、住まい全体のバランスを見直すことで満足感や納得感が高まっている実態が見えてきます。
新築・築浅にこだわる理由は“イメージ”より“機能と安心感”
築年数へのこだわり関しては、「きれいな部屋で暮らしたい」(65.3%)が最も多い理由でした。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
加えて「最新設備があると便利(47.3%)」「耐震性への安心感がある(45.0%)」「セキュリティが整っていそう(43.8%)」といった回答も上位に挙げられており、先進の機能面や安全面への期待が背景にあります。
一方で、「誰かが使った部屋に抵抗がある(26.8%)」「外観が古いと気分が下がる(24.0%)」といった理由は、上位の回答に比べると少数派という結果になりました。
築浅志向は思ったほどの「イメージ重視」ではなく、設備や安心感といった実利的な側面が大きいことがわかります。新しさそのものよりも、快適で安心できる暮らしを求める意識が根底にあると言えるでしょう。
新築主義は6.0%。築年数は条件次第で柔軟に変わる
築年数の条件を緩める場合に「あったらうれしいもの」として最多だったのが、「家賃が安くなる」(73.3%)でした。次いで「希望条件がかなう(54.0%)」「リノベ済みで内装が新品同様(51.5%)」といった回答が続きます。
一方、「新築はゆずれない」と回答した人は、わずか6.0%にとどまりました。

画像データ引用元:「お部屋探しにおける「駅からの距離」「築年数」に関するアンケート調査」|(株)CHINTAI
実際に築年数を緩めて住んだ人からは、「思っていたよりきれいだった」「設備は最新でなくても不便はなかった」「セキュリティ面も問題なかった」といった声が多く聞かれています。
築年数という数値よりも、家賃や室内の状態とのバランスを見て判断していることは明らかです。先入観を少し緩めることで選択肢はより広がる、という可能性が示唆されています。
まとめ
今回の調査から、「駅徒歩10分以内」「新築・築浅」といった条件は多くの人に意識されているものの、必ずしも絶対条件ではないことが明らかになりました。
駅からの距離を重視する人は約7割にのぼりますが、徒歩10分以内を「厳守」する人は1割にとどまります。築年数についても、「新築はゆずれない」とする人は、わずか6.0%に過ぎませんでした。
つまり “駅近・新築じゃない=不利” ではなく、入居者が求めている別の価値を提供できれば、十分に選ばれる可能性があるということです。
賃貸オーナーが“今日から”できるアクション
調査データから、入居者が妥協しやすいポイント・満足したポイントが明確になったため、次の施策が特に効果的です。
妥協ポイントの1位は「生活施設がそろっている」63.3%。
→物件ページ・案内時に、「徒歩○分以内の施設」を具体的に可視化する
例:スーパー、コンビニ/ドラッグストア/病院/公園/バス停 など
特に“駅より近い生活動線”は、大きな武器になります。
駅距離が長くても「バス便や自転車置き場が整っている」(44.3%)が妥協要因に。
→設備改善のROIが高いポイント
例:屋根付き駐輪場をつける/バス停までの案内表示/雨の日に濡れずに移動できる動線の説明
低コストで「駅距離のネガ」を帳消しにできる施策です。
築年数を緩めて良かった点では「思ったよりきれいだった」という声が多数(40.2%等)。
→ 築浅っぽさが出るポイントだけ抑える
例:水まわり(洗面化粧台・キッチン)の部分交換/室内の白基調クロス貼り替え/LED照明で明るさUP
「新築じゃなくても快適ならOK」という入居者の本音に刺さります。
駅距離や築年数より、「家賃」「広さ」「住環境」が満足度に直結している(家賃安くなった62.3%など)。
→ 内見前から“メリット一覧”を用意する
例:駅距離の代わりに得られるメリット/他の同条件物件より優れている点/ライフスタイル訴求(静か・広い・日当たりなど)
これだけで、入居者の候補リストに残りやすくなります。
多くの入居者は検索で「徒歩10分以内」「築浅」を入力しがちですが、実際は 条件を広げると満足度が上がる ケースが多数。
オーナーが伝えるべきこと:その条件フィルターで見落とされる価値/生活のしやすさは数値では測れないこと/実際の居住者の声(広い・静か・便利 など)
“駅徒歩”や“築年数”に縛られない選び方を後押しできます。
駅距離や築年数は、入居者が部屋を選ぶ“条件のひとつ”にすぎません。むしろ、生活利便・安全性・広さ・家賃といった“暮らしの質”が、選ばれる決め手になっています。
オーナーができることは、「駅近・新築ではない弱点」を補うことではなく、それ以上に大きな“暮らしやすさの魅力”を見える形で伝えること。その一歩を踏み出すだけで、物件は今より確実に選ばれやすくなります。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2026年1月時点のものです。
取材・文/御坂 真琴
ライタープロフィール
御坂 真琴(みさか・まこと)
情報誌制作会社に25年勤務。新築、土地活用、リフォームなど、住宅分野に関わるプリプレス工程の制作進行から誌面制作のディレクター・ライターを経てフリーランスに。ハウスメーカーから地場の工務店、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、販売促進ツールなどの制作を手がける。

















