無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説

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公開日:2026年6月1日
更新日:2026年6月8日
無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説1

今回のテーマは、「入居者トラブル」です。立入調査の拒否や用法遵守義務違反、入居者の暴言や賃料減額の要望など、様々な疑問について、実績豊富な久保原弁護士がQ&A形式でわかりやすく解説します。

この記事の監修者
無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

文/九帆堂法律事務所弁護士 久保原 和也(写真)、伊藤 和貴

<久保原弁護士プロフィール>
2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。2008年、九帆堂法律事務所設立。最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。
<伊藤弁護士プロフィール>
東京大学法科大学院修了。2018年、九帆堂法律事務所入所。大家さんの代理人として多数の賃貸借案件を扱う。

Q1.マンションで漏水が発生しましたが、真上のゴミ屋敷の住人が立入調査を拒みます。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A1:立入調査は賃貸人の権利であり義務でもあるため、慎重かつ毅然と対応するべきです。

マンションで漏水が生じ、原因解明のために専有部内を調べる必要がある場合、賃貸人は室内に立ち入って調査することが可能です。ときどき入居者が拒んで調査が進まないケースがあります。部屋がゴミ屋敷で、それを見られたくないという場合や、漏水原因に心当たりがある場合もあるようです。

調査を実施して原因を解消しないと漏水被害は続きます。漏水が改善しない場合、被害者から請求を受けるおそれもあり、賃貸人は立入調査の権利を有すると同時に、対応をすべき義務も負っています。借主には丁寧に説明して立入調査に協力してもらうべきです。それでも頑なに拒否された場合、公的機関や弁護士等に相談して、緊急性に応じ様々な方法を検討すべきです。

Q2:住居目的でマンションを賃借した人がサロンを営業し配管にコットンが詰まりました。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A2:修繕費用の請求のほかに、契約解除も検討可能です。

入居者は、部屋の目的外使用と、水道管の詰まりの原因となるコットンを流したという両面において、賃貸借契約上の用法遵守義務に違反しています。賃貸人は配管の修繕費用を賃借人に請求できます。しかし、水道管の不具合の原因特定は必ずしも簡単ではなく、理由を特定して証拠化する作業が重要となります。

さらに、契約義務違反を理由として契約を解除するためには、信頼関係を破壊する程度に悪質である必要がありますが、不特定多数の顧客が出入りするサロンを営んでいたことは、義務違反の悪質性を裏付ける事情となり得ます。配管にどの程度の損害が発生したのか、共用部や他の入居者にも影響がおよんだかという事情も契約解除の可否に影響します。

 

Q3:賃借人が、無断で大勢の友人を部屋に住まわせています。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A3:友人の居住を直ちに中止させ、 二度と同居しないよう約束していただく必要があります。

入居者が誰であるかは、賃貸経営上極めて重要です。賃借人に直ちに友人の退去を求め、応じなければ即時に契約を解除する旨を通知することが最初の対応となります。何の手も打たず放置すると、同居を黙示に承諾したと主張されるおそれもあります。

大人数で使用していれば部屋の損耗もそれだけ激しくなります。賃貸人が負担すべき範囲を超えた特別な損耗については賃借人が原状回復費用を支払うように、「今後は無断で部外者を同居させない。無断同居により生じた損耗は負担する」という宣誓書を作成させることも一つの方法です。

なお、賃借人が他の人に部屋を使わせ賃料を受領していた場合、無断転貸に当たり原則としてそれだけで契約解除が可能となります。

Q4:賃借人が暴言の多い人で、大家の私に対して暴力的な言葉で不満を伝えてきます。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A4:不快な言動は大きなストレス ですが、冷静に適切な対応法を検討する必要があります。

大声で強い表現を使うことで、優位に物事を進めたり希望を通そうとしたりする入居者に困っているとご相談いただくことがあります。所謂カスタマーハラスメントであり、彼らの主張に一定の正当性があったとしても不快な言葉は使うべきではありません。損害賠償、場合によっては名誉棄損等の刑事事件化も選択肢です。

ただ、賃貸経営では賃借人との関係性が継続します。大家の苦痛はそれだけ大きくなる一方、借主にとって住居は生活の基盤のため、軽はずみな対応は逆恨みされるおそれもあります。トラブルを悪化させないため、弁護士への早期相談をお勧めします。言葉遣いのみで賃貸借契約を解除するのは難しいですが、他の問題行動と合わせ解除可能なケースは存在します。

Q5:入居者から、近所の家賃相場より高すぎると賃料減額を要望されています。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A5:継続賃料は近隣の新規募集賃料や賃料相場により決定されるものではありません。

法律上、税金等の負担減少・経済事情の変動・近傍同種家賃との比較で不相当なとき、賃料減額が認められます。そこで、近場の同種物件の募集賃料より高ければ、減額が直ちに認められるようにも見えます。

しかし、新規賃料(新しく締結する契約の賃料)と、従前の契約関係を前提に決まる継続賃料とは異なる概念です。混同する方が少なくないですが、賃料減額では継続賃料が問題となり、新規募集賃料はあくまで参考にすぎません。継続賃料の適正金額を算定する際、不動産鑑定では差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法の各手法を組み合わせて算定するのが通常です。その点からも、相場価格は考慮される様々な事情の一つに過ぎません。

Q6:半年後に解体するアパートの入居者から、定借の切り替え合意を取り消すと言われました。

無断同居、暴言、賃料減額の要望… 賃貸住宅で起こりうる入居者トラブルの対処法を弁護士がQ&Aで解説2

A6:定借への切り替えは、借主の十分な理解の上で合意することが重要です。

貸主が普通賃貸借契約を解約するには正当事由が必要なため、建て替え時に入居者に対して立退料を支払うことが多いです。定期建物賃貸借契約(定借)では正当事由が不要なため、建て替えを見越して普通借を定借に切り替える合意をすることがよく行われています。退去期限や退去に伴う条件の話し合いを早期に始められるため、多くの場合貸主と借主双方にメリットがあります。

しかし、入居者が不利益な面を理解せず合意書に捺印していた場合、法的有効性が否定され得るという点に注意が必要です。話し合いの際に内容を十分説明し、賃料の減額や退去前一定期間の賃料免除等の公平な条件を定め、書面を整えるなど、後のトラブルを防ぐ措置を講じることが重要です。

 

※この記事内のデータ、数値などに関しては2026年6月1日時点の情報です。

イラスト/黒崎 玄

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