重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる

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公開日:2020年9月2日
更新日:2020年9月7日
重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる1

テレワークの浸透や在宅時間の増加など、新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の生活は大きく変わりました。それに伴い、賃貸住宅の入居者が住まいに求める条件にも異変が生じています。変化した入居者ニーズについて、SUUMO編集長の池本さんに解説いただきました。

お話しを伺った方
重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMO 編集長 池本 洋一さん

1995 年株式会社リクルートに入社。住宅情報誌の編集、広告に携わり、2007 年「都心に住む」編集長などを経て、2011 年よりSUUMO編集長に。メディアを通じて、住まい領域のトレンド発信を行う。

「立地・利便性」重視から「住まいの基本性能」重視へ

在宅時間の増加で、快適性を高める住まい探しが促進

テレワーク率は調査機関によりばらつきがありますが、私どもの今年5月の調査では在宅勤務をしている人が半年前の3倍となる47%でした。半年前までは、在宅時間が勤務時間全体の10%未満という「通勤中心、たまに在宅勤務」の人が半数でしたが、現在はフル在宅の人が9割です。在宅時間が長くなり、住まいに高い快適性を求めるニーズが強まってきました。

4~5月にはステイホームで取引が激減し、不動産業界が打撃を受けた一方で、ポータルサイトの物件検索数は昨年より増えています。住まい探しへのコロナ禍の影響を聞いた調査でも、「抑制」と「促進」が3割ずつで同率でした。住み替えニーズは衰えていません。

コロナ禍で入居者の行動様式に生じた変化

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

在宅勤務が浸透

● オフィス回帰は限定的、在宅増は恒常化
● フル在宅が増加、在宅が標準の会社も

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

「自分の時間」が増加

● 在宅時間の増加で、居住性能への不満増
● ネット活用の拡大で通信速度への不満増

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

住み替え意欲アップ

● コロナ禍でも住まい探し意欲は促進が3 割
● 住み替え目的は負担軽減と環境改善が半々

入居者が求めるポイントに変化。基本性能と機能が問題に

これまで入居者が住まいに求める条件では、交通や生活関連施設の充実度が重視されていました。コロナ禍による変化を調べると、「遮音性に優れた住宅に住みたくなった」がトップになりました(下図参照)。次に、宅配・置き配ボックスの設置、部屋数と続き、日当たりや通風も上位に入っています。

◎新型コロナウイルス感染症の拡大による住宅に求める条件の変化

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍住宅検討者調査 賃貸検討者版(全国)」2020年5月調査

また、設備の有無だけでなく、その性能に目が向いており、代表的なのがネット環境とエアコンです。単に「インターネット無料」では満足せず、通信の速度を気にする人が増えています。エアコンも、光熱費の高さ、冷房能力が問題です。高効率エアコンかどうか、建物自体の断熱性が高いかどうかも問われるようになってきました。

コロナ禍で生活様式が変化。入居者が今、住まいに求めるモノ

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎遮音性

オンライン会議・学習など室内で声を発する活動が増え、長時間の在宅中に住戸内外の音に敏感に。
【空室対策に生かすコツ】
本質的には床や壁の遮音性強化が必要だが、簡易には内窓とりつけも有効。

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎高速インターネット

テレワークのほか、動画・音楽配信サービス、ゲームなどネット活用が増加。通信スピード重視の傾向に。
【空室対策に生かすコツ】
掛けられるコストに応じて配線方式や通信方法の変更、設備刷新などを要検討。

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎日当たり・風通し

日当たりは冬場の暖房費や照明代に影響し、通風や換気の良しあしは仕事中の空気環境の質に影響。
【空室対策に生かすコツ】
日当たり改善は難しいが、換気・空調設備の向上はリフォームで対応できる。

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎エアコン

古いエアコンに対して「電気代の高さ、冷房能力の弱さ」という二大不満がある。新型エアコンへの希望が多い。
【空室対策に生かすコツ】
省エネ性能の高い高効率エアコンに換え、光熱費削減効果をPRしよう。

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎ワークスペース

リビングダイニングで在宅勤務を始めた人も多いが、長時間の作業に向かないため専用スペースを求める声が強い。
【空室対策に生かすコツ】
個室か専用スペースが人気。移動式ユニットなど多様な商品もある。

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

◎宅配ボックス

在宅中のデリバリー利用が増えているうえに、非接触で受け渡しをする「置き配」を望む人が多くなっている。
【空室対策に生かすコツ】
未設置ならすぐに導入を。工事不要の簡易型の置き配ボックスも有効。

高性能賃貸の需要増。テレワークへの対応も重要

今後の賃貸入居の主流となる10~20代の若者は、高性能住宅の実家で生まれ育った「住宅性能体感キッズ」が少なくありません。今後、高性能賃貸の競争力が圧倒的に強くなるでしょう。間取りプラン面では、在宅ワークへの対応が重要です。

現状では、仕方なくダイニングテーブルで仕事をしている人が多いのですが、集中できないと不満が高まっています。ニーズが高いのは、書斎やパネルで仕切った専用スペースです。広さに余裕がない場合は、窓際や壁際に一列のロングテーブルを設置するだけでも改善します。

意識したいのは、リビングのソファなどとは別に独立したスペースを作ること。納戸や広いクローゼットにワーキング・ユニットを納めるタイプも提案されています。入居者自身のワークスペースづくりが可能なDIY賃貸に切り替えるのも、入居対策につながります。

自宅内に留まらず、共用部分にコワーキングスペースやシェアオフィスを併設したタイプも注目されています。長期空室の部屋、テナントの抜けた1階店舗などをワークスペース兼シェアリビングに改装するのも一つのアイデアです。有料で地域住民も利用可能にすれば収益性も高まるでしょう。

選ばれる郊外は2パターン。かつてのハンデも状況に変化

住む地域としては、会社まで1時間半程度で行ける「通える郊外」にある戸建てに注目が集まっています。ただし、同じ距離圏の郊外ならどこでも評価が高まるわけではありません。「便利な都市派」か「リゾート自然派」というキーワードが当てはまるエリアに限られるでしょう。

同じエリア内では、駅から遠いハンデが広さと相殺される傾向も見られます。「広さと駅からの距離のどちらを重視するか」という調査では、現在は駅距離を完全に逆転して広さの方が強くなっていることからも読み取れます。

人気の街に異変?住まいのエリア選びの基準も変化

◎「自宅のオフィス化」の必要性からプラスアルファの広さが必要に
キーワードは「通える郊外」。「選ばれし郊外」は以下の2パターン

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

便利な都市派

商業集積の多い郊外の中核駅
・千葉 ・吉川 ・戸田 ・清瀬など

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

リゾート自然派

豊かな自然がある都心1時間半圏
・湘南 ・房総 ・軽井沢 ・那須など

重視するポイントに異変。「withコロナ時代」の入居者ニーズはこう変わる2

出典:リクルート住まいカンパニー「SUUMO 住民に愛されている街ランキング2020 関東版」

◎人気駅の隣駅にも注目

「住みたい街」では「吉祥寺・恵比寿・横浜」などの全国的に知られる駅が上位に入るが、「住民に愛されている街」の上位は、人気駅の1 ~ 2 つ隣にある一見マイナーな駅。実際に暮らしている人々の目線から、街の魅力がにじみ出る。

今こそ挑戦のチャンス!PRの仕方を見直そう

賃貸の新規供給が大幅に減ってライバルが少ない現状からいえば、新しいことに挑戦するチャンスでもあります。賃貸ニーズが中期的に期待できるエリアなら、思い切って高性能賃貸に建て替えるのもいいでしょう。

室内にテレワーク対応の設備やスペースを作ったり、共用部分にシェアリング空間を設けたりといった、今の時代に合ったリノベーションも有効です。

エリアの魅力を発掘してうまく伝える方法もあります。コロナ禍で変わった価値観、新たなニーズをとらえ、アピールの仕方を見直すことを考えてみましょう。

※この記事内のデータ、数値などは2020年9月2日時点の情報です。
取材・文/木村 元紀

「withコロナ時代」の賃貸経営とは?解説している記事はこちら

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