コロナ禍を経て見られた「賃貸仲介・管理」の変化
- 仲介・入居者募集
- 管理会社(入居者管理)
新型コロナウイルスによる脅威は賃貸経営にも確実に影響を及ぼしています。今回はそのなかで「賃貸仲介・管理」について、コロナ禍に現場で起こっていたことや今後の業界の動向予測など、気になるポイントを専門家の松井さんに解説いただきました。
賃貸管理会社のコンサルタント業務の傍ら、賃貸物件オーナー向けに、収益・利益アップのアドバイス業務を行う。勝ち組オーナーの成功事例セミナーでは数多くの実績を残し、好評を得ている。
取り引き停滞でも反響増加。コロナ後もデジタル化を目指す
賃貸仲介と管理で明暗。入居率の悪化は秋ごろから?
コロナ禍で一時的に取引が減少し、徐々に新規契約の数は回復してきたものの、以前の数字に戻っていないのが賃貸仲介業の現状です。一方、管理会社の売上はステイホーム期間中も下がっていません。ネット環境の改善や宅配ボックスの新増設などの工事が増え、収益が上がった部分もあります。オーナーは再募集の難しいこの時期に入居者に退去されると困るため、管理会社の提案を受け入れるケースが多かったようです。
賃貸の入居率が目に見えて悪化するのは、秋頃からと思われます。低家賃の物件は経費抑制の住み替えニーズがあり、テレワーク対応可能な新しく広めの物件は郊外でも、やや高い家賃でも需要があるため、決まりやすくなるでしょう。
コロナ禍で賃貸仲介・管理に起こっていたこと
3月下旬〜5月中旬
・地域問わず賃貸仲介の新規契約が激減
大型連休までは仲介の集客と新規契約が前年比50~80%の水準。退去も減り管理戸数は横ばい。
・外国人、法人の需要減少
訪日規制で外国人が減り、単身赴任や長期出張の停止で法人需要も減少。入居率低下が強まる。
・反響は微増、動画閲覧は急増
仲介会社の自社ホームページやSNS への反響が微増。また、動画配信サイトでの物件紹介動画の閲覧数が急増した。
5月下旬〜7月
・賃貸仲介の来店と新規契約が少しずつ回復
連休明けから来店が徐々に回復、6月は新規契約が前年比70~90%。100%までは戻らず。
・退去が徐々に増え、入居率が低下傾向に
退去が少しずつ増加。目的は、通常の住み替えと経費抑制が半々。入居率も落ち始める。
・リモートワーク対応のニーズ増加
在宅勤務に向いた戸建て賃貸、広いマンションの反響が、特急で通勤1時間圏内の郊外で増加。
賃貸仲介の現場で非対面が浸透
賃貸仲介の現場の非対面・オンライン化は一気に進みました。その場で質問に答えたり、相手の表情を見て物件を紹介できるなど、リアル接客に近い営業が可能な「IT接客」は今後増えるでしょう。
内見は、営業スタッフが物件に行き、スマートフォンなどで映像をリアルタイムで配信して対話することもあります。不動産テックの例として名前の挙がる「VR内見」は、事前の確認として活用されています。「セルフ案内」は鍵の設備面や防犯面に課題があり、急速な普及には至っていません。
賃貸仲介・管理はどう変わる?キーワードは「非対面」と「デジタル化」
仲介・管理会社とともにオーナーも賃貸経営のスマート化を
しかし今後は、アナログ対応に留まる仲介・管理会社は入居者やオーナーから選ばれなくなるおそれがあります。特に管理会社のデジタル化が遅れているのが現状です。
コロナ禍を機に、業務の効率化や経費削減によって生まれた余力で専門性を高め、オーナーへの提案力や入居者へのサービスをより高めていくことになるでしょう。オーナー自身もアプリを活用して賃貸経営のスマート化を進めると同時に、専門知識や危機管理能力の高い管理会社をパートナーとして見直すことも検討してみてください。
賃貸経営アプリでオーナーもスマート化
すでに、送金明細や収支報告、物件状況、経営分析などをオンライン化できるオーナー向けアプリが登場。主にトラブル対応可能な入居者用アプリも登場しており、賃貸経営のスマート化が可能になっている。
※この記事内のデータ、数値などは2020年9月2日時点の情報です。
取材・文/木村元紀