「賃貸住宅管理業法」が成立し、サブリース事業の適正化へ|日管協会長インタビュー

サブリース事業の適正化のため、2020年6月に成立した「賃貸住宅管理業法」は、賃貸管理やオーナーにどのような影響を与えることになるのだろうか。日本の管理業界の適正化とプロフェッショナル化を目指す日本賃貸住宅管理協会の新会長に就任した塩見 紀昭氏にお話しいただいた。

2020年9月、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会会長に就任。米国不動産経営管理士(CPM)ほか、多くの資格を取得。株式会社明和住販流通センター代表取締役
公益財団法人日本賃貸管理協会(日管協)とは

全国の賃貸住宅管理会社および関連会社で組織された業界団体。国土交通省と連携して、賃貸住宅の市場整備・発展、賃貸住宅管理業界の適正化を目的に活動している。
日本賃貸住宅管理協会の目的・役割
1.専門的な賃貸管理業務の確立
2.公正・公平な賃貸市場のルールづくり
3.不動産管理業から資産管理業への領域拡大
4.専門性を必要とする賃貸住宅の管理業務の確立
5.プロが管理する質の高い管理物件の増大
「賃貸住宅管理業法」法制化。市場の発展と管理業の地位向上へ
「賃貸住宅管理業法」(正式名称:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)が今年6月に成立し、「サブリース業者の適正化に係る措置」は本年12月15日に施行されます。法制化は私たちが設立当初から目指していたことなので、まさに悲願達成。これからいっそう管理業界の健全な発展が期待できると、嬉しく思っています。
私たち公益財団法人日本賃貸住宅管理協会は賃貸住宅管理業を通じて、安心の住生活の整備・提供を担っている業界団体です。前身の団体は1991年に誕生しました。以来毎年会員数は増加し、現在は全国で1660社以上が活動する組織となっています。シェアで言いますと、オーナーから受託管理している賃貸住宅管理戸数の約7割は会員が管理しています。
誇大広告禁止、登録必須…不良業者は淘汰され業界全体の健全化につながる
「賃貸住宅管理業法」とは
不動産管理受託契約及びサブリース契約について新しい規制を定めた。サブリース契約に関しては2020年12 月15日に、管理受託契約に関しては2021年6月に施行される見通し。義務違反をした業者には罰則規定もあるので、オーナー保護の側面も強い。
- 著しく事実に相違する表示等の誇大広告を禁止
- 家賃減額リスクなどの不実告知等を禁止
- 契約の締結前・締結時に書面交付を義務付け
- 営業所・事務所ごとに業務管理者を設置
- 契約の締結前・締結時に書面交付を義務付け
- 金銭の分別管理、管理業務の定期報告
「賃貸住宅管理業法」法制化で変わる5つのポイント
管理戸数200戸以上の管理業者は例外なく国土交通大臣の登録を受け、業務規定を守る必要があります。
オーナーと管理受託契約を結ぶ際に、管理業者は法律で定められた重要事項を説明しなければなりません。これまでの「言った、言わない」といったトラブルの防止につながります。
管理の有資格者を事務所ごとに設置しなければなりません。この有資格者は当協会が資格取得を奨励してきた賃貸不動産経営管理士が対象となっています。法制化と並んで悲願だったのが、賃貸不動産経営管理士の国家資格化でしたが、法制化で政省令に明記され、国家資格となる見込みです。
サブリース会社や管理業者等は、誇大広告や虚偽広告をしてはならないとされます。
登録業者はオーナーに対して、定期的に物件の管理状況等の報告をしなくてはなりません。
これらの項目に関しては、義務違反した業者には業務停止命令等の行政処分のほか、悪質な場合には罰金なども定められているので、適切な管理を行わない不良業者が淘汰され、オーナー保護にもつながると期待しています。
私自身の感想としては、業法が定まったことで、管理業界というものが認められた点を大変嬉しく思います。
「管理業の定義」も明確になった点も大きい。今までは仲介と管理の境目が曖昧で、包括的にサービス管理が行われていた実態がありましたが、業務範囲を明確にする必要もあるでしょう。
まだまだ変えて行かなければならない点も多々あるかと思いますが、「はじめの一歩」は踏み出すことができたと実感しています。
協会主導で知識を底上げし、真に信頼できるパートナーに
私は設立当初から当協会に参加しており、本年9月に会長に就いたのですが、長年会員に感じていたことがあります。それは建物や設備の維持管理に必要な知識をもっと高めてほしいということです。
そのため、今後は入居者・建物をはじめとした資産全体の管理を一気通貫で提供できるように、学ぶことができる場を設け、学び合う姿勢を加速したいと思っています。オーナーから資産管理も任せてもらえるようなパートナーとなっていきたいですね。
その点で心強いのが、条件が厳しい地方で非常に頑張っている会員の存在です。近年は地方との情報格差がなくなってきているので、優れた知見、アイデアを迅速に共有し、一気通貫化の早期実現を図って行くつもりです。管理業は広範囲にわたる大変な業務です。でも、だから楽しいんだ、という業界にぜひ変えていきたいと思っています。
※この記事内のデータ、数値などは2020年12月9日時点の情報です。
取材・文/木村 元紀