【めざせ!満室大家さんへの道②】継続的なアピールで紹介してもらえる物件にしよう~仲介会社へ向けた物件の認知~
新型コロナ禍で迎える繁忙期。オーナーも借り手も今までと違う環境の中、手探りで動いているのでは?こんな時こそ、目先の空室対策にすがりつかず、足もとを見直そう!どんなアクシデントがあっても揺らがない骨太経営をするために必要なことを解説する。
リーウェイズ株式会社 代表取締役社長CEO。2014年IT 不動産を事業の柱とするリーウェイズ株式会社を設立。2017年次世代の人工知能不動産プラットフォーム「Gate.」をリリース。
リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社 代表取締役社長。賃貸不動産市場におけるコンサルティングカンパニーとして、マーケティングサービスの提供を積極的に展開。著書に『本気で満室稼働を考える人だけが読む本』がある。
なぜ空室が埋まらない?原因は物件より営業対策
新型コロナ禍の影響のため、接触を避けてオンライン上だけで完結するお部屋探しが増えている。一方で仲介会社への客足は戻りつつあり、店舗でのカウンター営業の重要性はまだまだ高い。
「インターネット経由で問い合わせた部屋をそのまま借りる人は、半分くらい。残りの半分は営業担当者のカウンター営業で案内した物件に契約する傾向は、以前と変わっていません」(齊藤氏)
つまり、いくらターゲットを想定して差別化した物件を準備しても、仲介会社の営業担当者に認知されて、入居検討者にすすめてもらわなければ成約の確率は低い。
では、仲介会社は、紹介物件をどう選んでいるのか。不動産会社間の情報流通サイトをユーザー目線で検索し、店舗で取り扱うかを判断するのが一般的。
「家賃が高め」「駅から遠い」「築古」など不利な条件の物件は、元付け管理会社が情報流通サイトに登録しても仲介会社の検索に引っかからず、「認知率ゼロの物件」になり、空室リスクが高まる。
「こうした物件は、同じエリアの駅に近い物件、家賃の低い物件に問い合わせが入って内見を申し込んだ見込み客に、カウンター営業ですすめてもらうしか、興味を持って内見まで導き、成約につなげる道はありません」(齊藤氏)
訪問など営業活動のススメ!営業担当者に物件を印象づける
「駅近・築浅・割安家賃」など、好条件なら、ネットに掲載するだけで反響がある。逆に、ネットでの反響に弱い物件は、仲介会社へ訪問して物件資料を渡すなどの営業活動を行って印象づけ、認知度を高めるのが有効だ。
「古くから賃貸経営しているから、地元の仲介会社なら物件を知っているはず」という考えは甘い。
「管理会社やオーナーが想像している以上に物件の存在が認知されていません」(齊藤氏)
自分の物件をすすめてくれる仲介会社を発掘することが重要だ。営業先の仲介会社は、物件の最寄り駅周辺にとどまらない。内見申し込みや契約してくれた仲介会社と担当者を調べ、離れた場所にあってもすべてカバーする。
「店舗責任者だけでなく、個人単位で関係を築くことが大切。仲介会社の営業担当者は20~30代の若手が多く、勤続年数3年未満の社員が約5割を占める。年に1回は全員に物件資料を渡し、営業をしたほうがいいでしょう」(齊藤氏)
仲介担当者に気持ち良く動いてもらうコツは?
仲介会社に気持ちよく動いてもらうポイントでは、特に「問い合わせ~申し込み段階のレスポンスの速さ」が重視されている。理由は、コロナ禍の影響で、管理会社の在宅勤務、時短営業が増加し、仲介会社が電話問い合わせをしても連絡が取りづらくなり、見込み客を逃してしまう恐れがあると不満が出ているため。
募集中は、オーナー自身が問い合わせに出られる状態にするなどの対策が必要だ。案内の簡易化と不要な接触を避ける傾向から、「鍵の現地設置」の要望も高い。こうした声に応えるオーナーの物件は積極的に紹介されやすいだろう。
①連絡の取りやすさを意識してほしい
②鍵を現地設置にしてほしい
③空室情報の正確性を高めてほしい
④衛生管理を徹底してほしい
⑤豊富な物件写真の提供をしてほしい
他に、契約条件に融通をきかせること、営業担当者にある程度の裁量を与えることも望まれている。
◆代理内見:営業担当者がスマホなどを使い、室内の様子を映像や音声で内見希望者に伝えるスタイル
→管理会社に鍵を取りに行かなくても済むように、
現地にキーボックスを設置しておく。
◆セルフ内見:内見希望者が1人で現地見学するスタイル。スマートロックのワンタイムキーなどで対応
→入居検討者との接点が持てず直接営業できないため、実は営業担当者は歓迎していない。仲介会社がほかの物件も案内できるスタイルを推奨。
「真の競合物件」を知り、対抗する戦略を練る
内見の申し込みは入っても、成約できない場合、競合物件に負けた可能性が高い。そのライバルを知ることも重要だ。通常は「物件の基本条件(立地・築年・間取り)」と「賃料・初期費用」が近いものが競合すると考えるだろう。
「実は、管理会社やオーナーの考えと、仲介会社の現場の見方は必ずしもイコールではありません。物件自体の条件より、営業担当者は、広告料など、会社または個人にとって収益の高い物件を優先して案内することがあります。つまり入居検討者が“抱き合わせ”で内見する物件が“真の競合物件”なのです」(齊藤氏)
・オーナーが考える競合の定義
賃料、設備、築年数、駅距離、初期費用など物件スペックが近い物件
・仲介会社から見た競合の定義
広告料、担当者向けのオファー・キャンペーン等による収益が近い物件
仲介会社は入居検討者の希望に合わせつつ、会社や個人の収益条件が高くなる物件を優先して案内することも起こり得る。
成約につなげる「負けない設定」を作るためにヒアリングは不可欠
仲介会社から自分の物件の内見依頼があったときに、営業担当者に一緒に案内する物件を率直にヒアリングすると、意外に正直に答えてくれるという。その競合物件の募集条件をつかみ、負けない設定を検討する必要があるだろう。自分の物件が成約した場合も、「入居者が妥協した要素」を営業担当者にヒアリングしておくことも大切だと齊藤氏は指摘する。
「何が潜在的なウィークポイントかを把握しておけば、それを打ち消す戦略を立てたり、営業担当者にもっと別のセールスポイントを伝えておくことができたり、自分の物件の販促活動を後押しするのに役立てられます」(齊藤氏)
地域で訴求効果が高いリノベ・プランなど、統計に表れない“肌感覚”のニーズを知るにも仲介会社の声は参考になる。彼らの力を借りて認知度アップに努めよう。
※この記事内のデータ、数値などは2020年12月9日時点の情報です。
文責/木村 元紀 イラスト/まえじま ふみえ