2022年「物価高倒産」が前年の2.3倍に急増!2023年はどうなる?帝国データバンク動向調査をひも解く

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公開日:2023年1月31日
更新日:2024年3月14日
2022年「物価高倒産」が前年の2.3倍に急増!2023年はどうなる?帝国データバンク動向調査をひも解く1

(株)帝国データバンクから、2022年の「物価高倒産」動向調査の結果が発表されました。ロシアのウクライナ侵攻などで原材料や燃料の価格が高騰したことで、消費者だけでなく、企業も苦しめる物価高。物価高倒産のデータから、2022年の景気の振り返りと、2023年の展望を解説します。

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2022年の国内企業倒産件数は6,376件で3年ぶりの増加

まずは企業倒産全体を見てみましょう。(株)帝国データバンクの2022年報によると、倒産件数は6376件。前年から6.0%増加し、2019年以来3年ぶりの増加となりました。負債総額は2兆3723億8000万円で、5年ぶりに2兆円台を記録しています。

「不況型倒産」の割合が高く、特に中小零細規模で大幅増加

2022年の企業倒産を主因別にみると、「不況型倒産」が4923件(前年6.8%増)で全体の77.2%を占めています。ここでは販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」としています。

負債規模別では負債「5000万円未満」の倒産が3682件。57.7%を占めており、「1億円未満」や「5億円未満」でも大幅に増えていることから、中小零細規模での倒産が増えていることが分かります。

中小企業では後継者難で「代表者の病気・死亡」が直接的な原因に

物価高倒産以外では、後継者難倒産が476件で過去最多となっています。2022年の後継者不在率が60%を下回り、事業承継がうまくいかなかった中小企業が増加しています。

「物価高倒産」業種別では建設業が最多に

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物価高倒産に注目すると、2022年は320件で、過去最多に。前年の138件から2.3倍と急増しました。

業種別では、鉄鋼資材や木材などの高騰で打撃を受けた「建設業」が70件で最多となっています。なかでも「総合工事業」(39 件)の割合が多く、以下、「運輸・通信業」(64 件)、「製造業」(61 件)が続いています。

日本銀行の発表によると、2022年12月の国内企業物価指数(企業間で売買される商品の価格変動)は前年比プラス10.2%。2022年全体では、2020年を100%とした場合114.7%となり、前年からも9.7%増加しています。これは、過去30年で最も高い数値となっています。

建築業倒産の例~(株)タイセイ(東京都)~

10月の「物価高倒産」動向調査から建築関連企業の倒産の事例を抜粋します。

10月12日に東京地裁より破産手続き開始決定。負債は約7500万円。

1983 年(昭和 58 年)8月設立。鋼材や金網、ステンレスなどの建築資材や鉄鋼二次・三次製品の卸、下請けを中心に防音壁や各種柵の取り付けなどの工事も手がける。

しかし、2020 年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、工事の延期や中止の影響を受け、業績は悪化。金融機関に対するリスケジュールを行うなど事業継続を模索していたものの、代表が高齢で事業承継問題を抱えていたうえ、資材価格の高騰などで先行きの見通しが立たなくなった。

100円コスト増も、値上げは36円だけ?!困難な価格転嫁

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原材料やエネルギー価格の高騰に加え、人件費の上昇、円安による輸入コストの上昇など厳しい状況が続くなか、企業が利益を確保し、存続していくためには、コスト上昇分を取引先に価格転嫁する必要があります。

(株)帝国データバンクでは2022年9月に、価格転嫁に関するアンケートを行っています。その結果、自社の主な商品・サービスにおいてコストの上昇分を販売価格やサービス料金に「多少なりとも価格転嫁できている」と答えた企業は70.6%でした。

2割近くの企業が「全く価格転嫁できていない」現状

しかし、内訳を見てみると、コストの上昇分に対し「すべて価格転嫁できている」企業はたったの2.3%。「8 割以上できている」企業が11.7%、「5割以上 8 割未満できている」企業は 16.7%でした。

「全く価格転嫁できていない」企業も18.1%と、全体の2割近くありました。

コストを価格転嫁できないことが企業を苦しめる

コストの上昇分に対する販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は 36.6%。これは、コストが 100 円上昇した場合にも、36.6 円しか販売価格に反映できておらず、63.4円分は企業が負担していることを示しています。

なかでも、価格転嫁率が比較的低い業種として「不動産」が1位に。フリーコメントでは「工事量全体が増えておらず、受注競争が激しく、材料費や外注費(加工費、労賃)などの上昇分を転嫁できていない。現状は粗利益を極限まで削って耐えている」という声が挙がっていました。

2023年も物価高は続く?物価高倒産はどうなる?

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それでは、今後はどうなっていくのでしょうか。1月に日本銀行が発表した「経済・物価情勢の展望」では、以下のような見解となっています。概要を抜粋してご紹介します。

・日本経済は、見通し期間の中盤にかけては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
・物価については、2022 年度と2023 年度は、経済対策がエネルギー価格を押し下げる一方、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響などもあって、概ね不変、2024 年度は、経済対策による押し下げの反動から幾分上振れ。
・リスク要因は引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。

 

物価高については、政府もエネルギー料金の負担緩和など様々な施策を検討しています。しかし、先行きが不透明ななか、今後も物価高は続いていく見通しです。

調査では、コロナ関連融資の返済が本格化することにも触れ「価格転嫁が十分にできない中小事業者を中心に、物価高倒産は引き続き増加傾向で推移するものとみられる」とまとめています。今後の動向も注意しておきましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年1月31日時点のものです。

文/丸石 綾野

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