生前贈与に大きな変更あり!2023年度税制改正のポイントを大家さん税理士が解説
2023年度の税制正法案が3月28日に成立しました。今回の大きな改正は生前贈与です。大家さんに関わりのある改正や注意点を中心に、自身も大家さんである税理士の渡邊浩滋先生に解説していただきましたので、参考にしてみてください。
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実家の賃貸経営が危機的状況であることが発覚し、経営を引き継いで黒字化に成功した経験を持つ。2011年に渡邊浩滋総合事務所を設立。税理士と大家の両方の視点から賃貸経営に困っている大家さんのサポートに取り組んでいる。2018年に大家さん専門税理士の全国ネットワーク「Knees bee(ニーズビー)」を設立。2022年に税理士法人化した。
暦年課税制度の加算期間が7年に延長
生前贈与には暦年課税と相続時精算課税の2つの制度がありますが、2023年度の税制改正においてそれぞれ改正されます。
年間110万円以内なら非課税で贈与できる暦年課税において、相続直前の生前贈与を相続財産に持ち戻す生前贈与加算は、現行3年以内ですが、今回の改正で7年以内まで対象になりました。富裕層に有利に働いてしまう不公平感を無くそうという狙いが背景にあります。
延長された4年間で贈与された財産は、合計額から100万円を控除した残額が課税対象となります。2024年1月1日以降に受けた贈与から適用され、7年間遡るのは2031年1月1日以降です。
相続はいつ発生するか分からないので、できる限り2023年中に贈与することが賢明であると言えるでしょう。
また、生前贈与加算の対象は「相続または遺贈により財産を取得した人」のため、法定相続人ではない孫などへの生前贈与への影響はなく、引き続き相続対策には有効です。
相続時精算課税制度に申告不要の控除を新設
相続時精算課税は、累積2500万円以内の非課税枠までは贈与税がかからず贈与できますが、贈与した財産すべてが相続税の課税対象となる制度で、不動産など高額資産の贈与に適しています。
しかし、一度この制度を選択すると暦年課税に戻れず、少額の贈与も申告が必要で手間がかかることもあり、利用者は多くありませんでした。
現行は、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ、相続開始までの贈与の累計額のうち、2,500万円までが非課税となっていました。今回の改正では、相続開始までの贈与累計額のうち、2500万円の特別控除枠とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。
相続時は、基礎控除分を除き、贈与した財産全てを、相続財産に含めて相続税が計算されます。2024年以降は、年間110万円以内の贈与であれば、申告も不要で贈与税や相続税がかからないので、相続時精算課税制度を利用しやすくなるでしょう。
他に2023年度税制改正で大家さんに影響があるポイントは?
本年10月1日からスタートするインボイス制度。インボイス登録の申請期限が9月末までに実質延長されました。
登録の判断が悩ましいのは課税売上がある免税事業者ですが、慌てて結論づけることは禁物です。制度開始から6年間の経過措置もあります。課税業者になった場合と、免税事業者のまま値引き対応で借主と折り合いをつける場合のシミュレーションを行うなどして、慎重に検討・判断することをおすすめします。
相続人が、相続により取得した古い空き家を譲渡した場合、譲渡所得から3000万円を特別控除できる特例が4年間延長されました。
ただし、満たさなければならない要件がありますので、対象となる方はご確認ください。
●国民健康保険税の後期高齢者支援金分の上限を2万円増額。トータル104万円に
●教育資金の贈与税非課税枠(1,500万円)の延長(2026 年12 月末まで)と適用要件の厳格化※
●結婚・子育て資金の贈与税非課税枠(1,000万円)の延長(2025年12月末まで)と適用要件の厳格化※
※受贈者が対象の年齢になった時点の使い残し残額に、一般税率で贈与税を課税。他、詳細は国税庁のホームページなどを要確認
マンション相続税評価の見直しにも注目
最後に、マンション相続税評価の見直しについて触れておきましょう。
これは市場価格と路線価の乖離の大きい、都心のマンションを対象にしたものです。2022年に路線価を否認した最高裁の判決が出た影響で、来年度以降に改正が入るのではないかと予想されています。今後の動向に注目してみてください。
これは市場価格と路線価の乖離の大きい、都心のマンションを対象にしたものです。2022年に路線価を否認した最高裁の判決が出た影響で、来年度以降に改正が入るのではないかと予想されています。今後の動向に注目してみてください。
※この記事内の情報は2023年5月18日時点のものです。
取材・文/本多 智裕
ライタープロフィール
本多 智裕(ほんだ・としひろ)
京都大学文学部史学科卒。(株)リクルート勤務を経て、フリーランスのコピーライター、ディレクターとして独立。建築・不動産情報誌、土地有効活用雑誌等の広告・記事の執筆のほか、ハウスメーカーや賃貸管理会社、生命保険会社等の会社案内、分譲住宅・マンションのパンフレット制作にも多数携わる。
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