実際にやって効果があった、お金をかけない入居者サービス
退去を予防し、入居者にできるだけ長く物件に住み続けてもらうにはどうすればよいのでしょうか。人気設備の導入や更新料の廃止といった、コストがかかったり、収入の減少を伴う対策以外にも、多くのオーナーが知恵と工夫のソフトパワーでこの課題に挑んでいます。
特技を活かす、私物を貸し出す。少しの工夫で付加価値が生まれる
入居者にできるだけ長く物件に住み続けてもらうには、どんな入居者サービスを行えばよいのでしょうか?
人気設備の導入や更新料の廃止といった、コストがかかったり、収入の減少を伴う対策でなくても、オリジナルの付加価値サービスで、退去予防に成功しているオーナーは数多くいます。
オーナーが実際にやって効果があった、コストゼロの入居者サービスの例を紹介します。
あるオーナーは、空いていた自宅のガレージを入居者の駐輪場として開放しました。屋内ガレージのため屋根付きです。
さらに、手動のタイヤ空気入れも備え付けました。近くの自転車屋に行けば自動空気入れを無料で使わせてもらえますが、いつも無料で利用というのはプレッシャーです。そう感じていた多くの入居者が、喜んでこれを使うようになりました。
ただし、女性の入居者にとっては、手動の空気入れを扱うのも一苦労です。困っているのを見かけたオーナーが声をかけ、「もし嫌でなかったら、時々私がタイヤを見て空気を入れておいてあげますよ」と提案。とても喜ばれたそうです。
あるオーナーは、入居者に貸し出すための掃除機を用意しています。
掃除機は誰でも持っていますが、この掃除機は室内用ではなく、入居者が部屋のベランダや玄関を掃除する際に使ってもらうもの。元々は、オーナーの自宅で使っていた中古品です。
部屋の中で使う掃除機を、外とは区別したいという入居者に喜ばれました。
あるオーナーは、シュレッダーを入居者に貸し出しています。オーナーが以前仕事で使っ ていたものなので、費用はゼロ。
個人情報の漏洩が気になる今の時代、シュレッダーは誰もが一台欲しくとも購入までは踏み切れないことが多く、あると嬉しいグッズでしょう。
あるペット可物件のオーナーはペットシッターの経験を活かし、入居者が留守宅にペットをおいて旅行する際、常識的な日数であれば無料で世話をしてあげています。
ペットシッターに頼めばそれなりの費用がかかるため、入居者は大喜びです。お互いの信頼関係の上で行うべき、多少リスクを伴うサービスですが、退去防止効果はかなり高いと思われます。
コストゼロでできる入居者サービスは、他にもたくさんあります。
主な例を表にまとめました。このような、かゆいところに手が届く、あったらいいなと思わせる付加価値サービスがあると、入居者は安易な理由で退去を望まなくなります。
退去理由には、結婚や転勤などの避けられないものも多くありますが、「そろそろ飽きたから」「気分で」といった具体的でないものについては、工夫次第でリスクを減らすことができるのです。
文/木村 元紀