入居者と仲良くなり、物件内にコミュニティを作る方法は?
空室対策の一つとして、入居者同士、入居者とオーナーの良好なコミュニティをつくることが挙げられます。物件に緩やかなコミュニティをつくり出すには、入居者同士が仲良くなるきっかけをたくさん作りだすことが必要です。具体的に何を行えばいいのでしょうか?
まずは挨拶から。コミュニティは小さく生み、健やかに育てる
空室対策の一つの方法として、物件内に入居者同士、入居者とオーナーの良好なコミュニティをつくることが挙げられます。
自立した入居者同士による緩やかなコミュニティがある物件の多くは、入居者がなかなか退去したがらない「我が家のような物件」「住み続けたい物件」となって、オーナーに利益をもたらします。また、セキュリティ対策としても有効です。
物件に緩やかなコミュニティをつくり出すには、入居者とオーナーが仲良くなるきっかけをたくさん作りだすことが必要です。具体的には、どんなことを行えばいいのでしょうか?
最初に始めたいのは、まず「挨拶」です。
オーナーの中には、入居者が通学・通勤する時間帯や、ゴミ収集日の朝を敢えて選んで、物件の掃除をしに行く人がいます。オーナーから入居者へ明るく挨拶を重ねるうちに、入居者同士にも同様の関係が広がっていくことを狙っています。
事前に管理会社から入居者の顔写真をもらうなどして、名前と顔が一致するようにしておけば、挨拶をする時に迷いなく声をかけることができます。
また、管理会社ならではの取り組みによって、効果を上げているケースもあります。物件のエントランスに入居者同士の挨拶を促す看板を掲げておくのです。
ただし、これを掲げるだけでなく、最初のうちは管理人や清掃担当も動員し、彼らが積極的に入居者に挨拶をすることで、下地を整えていきます。管理会社側は、この運動が自社の高い入居率の維持に大きく貢献していることを実感しているそうです。
管理会社が管理物件のエントランスに掲げている看板。この効果で退去が減り、周囲の物件よりも大幅に高い入居率を実現できるようになった
協力:札幌オーナーズ株式会社
入居者同士の会話のきっかけ作りとして、最もおすすめなのは敷地に花や樹木を植えることです。
例えば、エントランス前の植栽スペースには手間のかからない常緑樹が植えられているのが一般的ですが、そこに敢えて、季節感の豊かな草花や、実のなる樹を植えておきます。
肥料や防虫などの手間はかかりますが、花が咲いたり、実が生ったりするごとに、入居者同士の会話のきっかけが生まれます。花や緑は、特定の趣味や好みに縛られないため、共通の話題とするにはもってこいです。
同じく、エントランスホールに誰もが和めるような絵や写真を飾ったり、季節の飾り付けをしたりするのも効果的です。
さらに、共用部の一部を開放し、入居者同士でシェアできる空間を設けることも一案です。
エントランス付近などにスペースがある場合、そこに椅子とテーブルを置いて、入居者が自由に利用できるコミュニティスペースにします。子育て中の家族が多く入居している物件では、母親たちが子どもを見守りながら遊ばせる場所としても重宝されます。
思い切って、建物内の一室をシェアリビングなどに改装するという手もあります。
物件内にコミュニティが徐々に醸成されてきたら、クリスマスパーティーやBBQパーティーなどのイベントを企画してみてもいいでしょう。近年は、そうしたイベントをサポートする管理会社も登場しています。
また、SNS上で入居者とオーナー限定の非公開グループを作れば、イベントなどの告知を行いやすくなります。
オーナーが入居者の信頼を得るには、24時間電話・メールOKとして、自身の連絡先を告知しておくことも大切です。入居者とは程よい距離感を保って付き合いつつも、何かあればすぐに駆け付ける、すぐに連絡しても大丈夫な存在として、入居者の心のハードルを低くしておきましょう。
文/木村 元紀