賃貸アパート・マンションの入居者コミュニティは退去予防に効果的?
物件内のコミュニティを賃貸経営の力強い味方にするため、積極的に入居者とコミュニケーションをはかるオーナーが増えています。さらに、人の輪がご近所にも広がれば、入居者がいつまでもそこに住んでいたくなるような、温かで安心できる住環境が生まれます。
入居者コミュニティの形成は退去予防、セキュリティ面で効果あり
物件内に入居者同士の良好なコミュニティが生まれることは、賃貸経営上の大きなメリットです。
その理由は、何と言っても退去の予防になることです。
賃貸でも居心地のよい人間関係が生まれれば、物件に愛着が生まれ、特段の理由がない場合は退去しようという気持ちが起こりにくくなります。
また、セキュリティ面の効果が期待できることも大きなメリットです。建物内で見かけた人物が不審者か住人か判断がつかないといった不安な状況を減らすことができ、悪質な事件が起こりにくくなります。孤独死など、物件内で何か異常事態が発生した場合も、入居者同士のコミュニケーションが日頃からとられていれば、より気づきやすくなるでしょう。
とは言え、隣人との交流に消極的な入居者が今は増えています。
そこで、オーナーの中には、新しい入居者が来た時はその方を伴い、他の入居者への挨拶回りを行う人もいます。入居者同士に仲良くなってもらうことで、物件をより居心地のよい場所に感じてもらうための配慮です。
また、物件の敷地内でバーベキューなどのイベントを定期的に企画し、入居者コミュニティを積極的に創出しようとしているオーナーもいます。
さらに、コミュニティの輪を地域に広げようとする試みも増えています。
あるオーナーは、新しい入居者と一緒に近所へ挨拶回りに行き、近隣の人と入居者をつなぐ役割をしています。
また、あるオーナーは据置型の黒板を購入し、物件のエントランスに置いて、チョークによる手書きで町内の話題を書き記しています。すると、「お宅のマンションに住む若い人が、最近挨拶をしてくれるようになった」と、ご近所の方から嬉しい報告があったそうです。
また、入居者コミュニティを、地域をも超えた人と人との繋がりに結びつけようとしている会社もあります。
音楽演奏家向け賃貸住宅「ミュージション」を展開する株式会社リブランです。コミュニティが生まれやすい賃貸住宅としては、趣味などをテーマとしたコンセプト賃貸が知られています。ミュージションでは、音楽を趣味や仕事とする人々が、物件内だけでなく外のネットワークと繋がりを持てるよう、手厚いサポートを整えているそうです。
ただそう聞くと、それは企業だからできることなのではと考える人もいると思いますが、同じことはオーナー個人でも可能だといいます。
同社でコミュニティ事業を担当する三ツ口拓也さんは、「オーナー様ご自身が持っている世界や経験を洗い出し、コミュニティ創出のきっかけとなることを探してみてください。それが入居者さん同士や地域、さらにもっと広い人の繋がりを生み出す中心となる可能性は、きっとあるはずです」と語っています。
例えば、植木の世話の上手なオーナーが物件に美しい庭をこしらえ、テーブルセットを置いたところ、子育て中の入居者やご近所のお母さんも集まる交流の場に育ったという話があります。
これも、オーナーの世界観を広げて成功した例の一つと言えるでしょう。
文/木村 元紀