どうなったら「事故物件」?告知義務はいつまで?策定されたガイドラインからポイントを解説

管理/空室対策
法律
公開日:2022年3月3日
更新日:2022年4月18日
どうなったら「事故物件」?告知義務はいつまで?策定されたガイドラインからポイントを解説1

過去に人の死があった物件、いわゆる「事故物件」の不動産取引における告知義務のガイドラインが策定されました。貸主であるオーナーは、どのような点に留意すればいいのでしょうか?告知義務ガイドラインのあらましを解説します。

お話を聞いた方

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 相談員
鈴木 一男さん、青柳 人志さん、河村 裕志さん

ガイドライン策定の背景に事故物件をめぐるトラブルの頻発

2021年10 月、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」が、国交省により発表されました。

ガイドラインは、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)が過去に人の死があった居住用不動産の取引において、その事実を買主・借主に伝えるべきか否かの判断基準を示したものです。

宅建業者向けの内容ですが、告知書への記載など、オーナーが関わるシーンもありますので、しっかり把握しておきましょう。

ガイドラインが策定されたのは、過去に人の死があった物件の告知をめぐり様々なトラブルが起きていたことが背景です。

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人が亡くなった不動産は、死亡理由やその後の状態によっては心理的瑕疵(物件内で過去に人が亡くなったことで良好な住み心地が損なわれること)が生じます。

心理的瑕疵について宅建業者は買主・借主に告知する必要がありますが、告知すべきかの要否やいつまで告知するかは、宅建業者によって対応が分かれていました。

そのため、後に事件の事実を知った買主が売主に損害賠償を請求したり、貸主が孤独死を恐れて高齢者を拒んだりする事態が発生。不動産の円滑な流通や安心できる取引の妨げになっていたのです。

そこで、業界一律の基準を示そうと検討・策定されたのが、このガイドラインです。これにより、賃貸市場の健全化や不動産のスムーズな流通が期待されています。

告知義務ガイドラインの概要を解説。「調査義務」とは?

ガイドラインには不動産取引で宅建業者が負う調査や告知の義務が示されており、過去の裁判例や取引実務に照らして現時点で一般的に妥当と考えられる基準がまとめられています。また、対象の不動産は居住用で、オフィスなどの事業用は含まれていません。

まず調査については、売主・貸主に告知書等への記載を求めることで「調査義務を果たした」とされます。

物件近所への聞き込みやインターネットの情報収集までは求められておらず、オーナーが告知書に記載した情報が事実確認のよりどころになります。

オーナーが故意に事実を隠ぺいすれば、損害賠償を求められる可能性もあるため、告知書には適切な記載が必要です。

宅建業者は貸主・売主へ告知内容の有無を確認し、入居者・買主へ告知
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告知基準についても見てみましょう。死亡理由が「自然死」や「日常生活での不慮の事故」の場合は、原則として告知は不要です。一方、「自殺・他殺・火災」による死亡があった場合は、告知義務があります。

集合住宅の場合は、該当住戸の住人が日常生活で使う廊下やエントランスなどの共用部で起こったことも告知義務の対象です。

なお、賃貸物件の告知義務はおおむね3年とされていますが、借主から聞かれた場合や、社会的影響が特に大きい事件などは、経過年数にかかわらず告知義務があります。

告知が必要になるのはどんな状況?「告知義務」判断のポイント

告知義務なし 告知義務あり
❶老衰、病死
(自然死)❷日常生活での不慮の事故死
(自宅の階段からの転落死、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた事故)❸隣接住戸や通常使用しない集合住宅の共用部での死亡
(自殺・他殺を含む)
❶自殺、他殺、火災による死亡

❷特殊清掃や大規模リフォームなどが行われた場合
※賃貸借取引の場合、上記❶❷の死が発生もしくは発覚してからおおむね3年間告知し、以降は原則として告知の義務はない
※売買取引については告知義務が継続する

❸借主・買主から問われた場合

❹社会的な影響の大きさなどから、借主・買主が把握しておくべき特段の事情があると宅建業者が判断した場合

 

集合住宅では同一物件内でも住人ごとに告知義務が異なる
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室内で告知すべき事故が発生した場合、告知義務があるのは該当住戸に入居する人のみ。202号室の入居申し込み者には告知しなくてはならないが、隣室を含むほかの住人には、原則として告知不要。

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共用部で告知すべき事故が発生した場合は、該当の箇所を日常的に使う人に対して告知義務がある。202・203号室の住人は普段通るため告知義務があるが、ほかの住人には原則として告知不要。

告知要否は慎重な判断を。事故物件になるリスク軽減の備えも要検討

賃貸物件の告知がおおむね3年との基準が示されたことは、いざという時のトラブル防止の参考になるでしょう。

「しかしながら、社会的な影響が特に大きかったか、相手方の判断に重要な影響を及ぼすか、といった個別判断は難しい面があります。契約後のリスクを考えると、3年経過後も告知した方がよいケースもあるでしょう」(青柳さん)

それでは事故物件はいつまでも通常経営に戻れないのかと不安になりますが、そうとは限らないようです。

「事故物件でも、家賃の安さを魅力に感じて入居を決める人もいます。家賃も当初は3割~半額程度下がる傾向がありますが、年数が経つにつれ、徐々に相場に戻ることが多いようです」(河村さん)

そして大切なのは、万が一への備えだとのアドバイスも。

「見守りサービスは孤独死などによって告知事案になることを未然に防いだり、孤独死保険は事案が発生した時の改修費・家賃減額分などの補填に役立ちます。いざという時のために、これらのサービスの利用を検討するのも一考です」(鈴木さん)

告知義務ガイドラインのポイント

●告知義務の事案がある場合は、隠さず告知。告知書類への記載も行う。
●賃貸借取引の場合、告知義務は原則3年だが、売買取引は告知義務が継続する。
●社会的影響が大きかったり入居者から問われたら、告知が必要。
●入居者とのトラブルが起きた場合は、ガイドラインの内容が考慮される。

告知義務ガイドラインの詳細は国交省のサイトで確認できます

※この記事内のデータ、数値などに関しては2022年3月3日時点の情報です。
取材・文/アトリエあふろ(富成 深雪)

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