大規模修繕は空室対策に効果がある?必要な理由と行うメリット
築古アパートの外壁を補修もせずに「なぜ空室が埋まらない?」と悩んでいませんか。見栄えの悪化だけでなく、空室増加の恐れも…。なぜ、外壁や屋根などの大規模修繕が必要なのでしょうか。その効果やメリットについて考えてみましょう。
劣化によって損害を被るおそれも。大規模修繕の「大切さ」とは
賃貸オーナーに対する国土交通省の意識調査によると、「計画的・定期的に修繕を実施している割合」は、わずか2割程度に過ぎません。実施しない理由は、「資金的余裕がない」がトップ。次いで「必要性が理解できない」となっています。
「自分の考えで実施しない」というオーナーも多く、「必要なときに修繕すれば充分」、「実施しなくても入居率は変わらない」、「実施しても家賃水準を維持できるわけではない」といった声が少なくありません。
しかし、「必要なとき」=「何か不具合が起きたとき」に直せばいいいという発想は、さまざまな弊害を生みます。たとえば、外階段のスチール製の手すりに赤錆びが出ても「住むのに支障はない」とオーナーは思うかもしれません。その間に、内見に来たお客さんの第一印象を損ねて、何人の入居者を逃していることでしょう。
単に見栄えが悪いだけならまだしも、実害が出るおそれもあります。雨漏りが起きてから慌ててリフォーム会社を探す場合、複数の会社から実績や信頼性をチェックして選ぶ余裕はありません。スピード重視で、割高な工事をせざるをえなくなるでしょう。対応が遅れれば、入居者の気分を害して退去を招きかねません。あるいは、外壁タイルが落下して通行人に当ってケガを負わせ、損害賠償を請求される……そんな事例も散見されます。
大規模修繕は長期にわたって計画的に、必ず実施を
そもそも大規模修繕というのは、単に「規模の大きな修繕工事」ではありません。20~30年に渡る長期的なスパンで計画的に行う修繕の一つで、建物全体や複数の部位に渡る工事をまとめて行うものです。対象は、屋根や外壁、廊下や階段・ベランダなど、建物の外回りなどの「共用部分」が中心となります。
「専用部分」の室内については、入居者が退去した時に当たり前のように原状回復工事を実施しているでしょう。外装も同様です。紫外線や風雨にさらされて、塗装やタイル、防水層、サッシ回りのシーリングなどは経年劣化します。そのまま放置しておくと劣化が進行し、雨水が進入したり、骨組みの木部が腐ったり、構造躯体への悪影響も与えかねません。それを防ぐには、外装に対しても“原状回復”のための工事が必要なのです。
人間の身体も病状が悪化してから治療するより、早期発見・早期治療が望ましいと言われます。建物も、問題が深刻になる前に早めに対処することが重要です。まして、築20年を超える建物で空室率が悪化しているなら、早急に検討したほうが良いでしょう。
計画的に修繕を実施しているオーナーは§5-1-2のような効果を感じています。1位は「家賃水準を維持できる」、2位が「高い入居率を維持できる」。前述の実施しないオーナーの予想とは正反対の結果です。管理会社の場合は「住宅の性能が長期間に渡り維持できる」「周辺物件に対して競争力が高まる」の割合が高く、長期的なスパンで地域全体を見渡す広い視野から判断しています。多くの物件を受託している管理会社としての実感でしょう。
文/木村 元紀
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